パフォーマンスのピークを逆算する。
臨床のリアルと迷い
明日の試合に向けて、今日はどう調整すればいいですか?
直前に追い込みすぎてパフォーマンスを落とすことは避けなければなりません。
無難に休むことは重要です。
しかし、翌日のパフォーマンスを最大化するためには休むことが最善でしょうか。
疲労を恐れるあまり、神経系や筋腱に必要な刺激を与えずに本番を迎えさせてしまっているとしたら、そのアプローチは少し考え直す余地があるかもしれません。
知見の整理と道標
今回紹介するのはプライミング・エクササイズという概念です。
競技直前に行うウォーミングアップとは異なり、目標とする活動の2時間から最大48時間前に短時間かつ高強度の運動を行うことで、筋温やスティッフネスの向上、運動単位の動員を促し、スピードやパワーを引き出す戦略です。
この論文では、大きく3つの運動様式が検証されており、それぞれ効果が最大化する「タイミング」が異なります。
レジスタンスエクササイズ(スクワットなど)
バーベルなどを中等度〜高負荷(50%〜85% 1RM)で挙上する一般的な筋トレ。
セットや回数を少なく(例:4回以下×最大6セット)抑え、実施後4〜6時間で最大のパフォーマンス向上をもたらす。
バリスティックエクササイズ(ジャンプスクワットなど)
動作にブレーキをかけず、身体や器具を空中に放つように常に加速し続ける運動。
スポーツ特異的な動作に近く、実施の6時間後〜24時間後に効果が顕著になる。
ただし、無負荷(自重のみ)では力学的刺激として不十分であり、1RMの40%以下の「軽い負荷」を持たせることが推奨される。
最大スプリント
40m以下の短距離や、6秒以内の全力ペダリング。
こちらは5〜6時間後(同日)でも、24〜48時間後(翌日以降)でもポジティブな反応が得られる。
臨床への落とし込みと深掘り
この知見を元に試合前のスケジュールに落とし込んでみましょうか。
翌日の午後に大事な試合を控えた患者さんが、前日の夕方に外来へ来たとします。
その場合は「軽いメディシンボールやダンベルを持たせたジャンプスクワット」を数セット行うことで、コンディションが高まる可能性があります。
スポーツ現場に帯同しているセラピストであれば、試合当日の午前中(キックオフの4〜6時間前)に、あえてスクワットなどのレジスタンスエクササイズを低負荷で行い、ピークを合わせるという戦略も取れます。
単にマイナスをゼロに戻す回復のサポートだけではありません。
運動様式とタイミングの特性を理解し、「いつ、どんな刺激を入れれば、本番で最も身体が動くのか」を逆算してデザインすることで運動療法がパフォーマンス向上のための強力な武器になります。
締め
患者さんにとって、重要な試合が「何時間後」にあるのかを具体的に聞いてみましょう。
その時間から逆算して、
「4〜6時間前だから少し負荷をかけたスクワットをしよう」
「24時間前だから軽いダンベルを持ったジャンプスクワットにしよう」
と、プライミングの視点を取り入れてみましょう。
休ませるだけではない、攻めのコンディショニングを提案することで、患者さんの身体も、あなたへの信頼も大きく変わるはずです。
参考文献
Pereira, Lucas A., et al. Priming Exercises and Their Potential Impact on Speed and Power Performance: A Narrative Review. Journal of Human Kinetics 98 (2025): 153-168. doi: 10.5114/jhk/204371.
プライミング・エクササイズとそのスピードおよびパワー・パフォーマンスへの潜在的影響:ナラティブ・レビュー
ではでは。
#整形外科 #理学療法士 #リハビリテーション
ご覧いただきありがとうございました。
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