リリヤーンの「電灯カバー」は、時代を照らす
皆さまこんにちは! まだまだマクラメをやっている owarimao です。下のような薄紫のバッグを製作中です。
同じ模様をえんえんと結びます。下の写真で、左半分と右半分では違いがありますね。その事情は先週書きました。↑

だいぶがんばったけど……これでやっと半分くらい。
いったんボードからはずして、筒状にして続けます。

地味だけど手がこんでいて味のある模様だと思います。「玉結び」を巻き結びの線で囲むようになっているのが珍しいです。囲んだ線の閉じ方がよくわからず、初めのうちは苦労しました。
同じ模様を何度も作るうちに、自分なりのやり方が固まってきました。

縫い合わせなくても、模様を作りながら
同時に立体化できるのが面白いところ

ピンをはずしたらゆるんできてしまった
まだまだ完成しそうにないので、今日はまた、昔の本を見ていただこうと思います。
昭和初期のマクラメブームのときに、「帯締め」「羽織紐」などの和装小物が人気だったことは、前に書きました。
それらと並んで、この時代を象徴するようなアイテムがもう一つあります。それが、リリヤーンで作った「電灯カバー」です。

「無地も使ふ場合のないことはありませんが、
シェードには、段染を用ひた方が明るくて美しいと思ひます」
ごらんのように、ほとんどどの本にも「電灯カバー」の作り方が載っています。作品数の少ない本にも載っているし、1冊に複数の作品例が載っていることもあります。こんな紹介文とともに。
美しい電燈覆ひ
机の上のスタンドに、客間のスタンドにこの電燈覆ひを飾つてみて下さいませ。淡い柔らかな光が夢のやうな風情を添へませう。ほんとうに簡単に出来ますから是非お作り下さいませ。
実物の写真を見てみると、確かに簡単にできそうです。目が粗くて結ぶところが少ないし、底を閉じたり持ち手をつけたりという細工をしなくていいし。また吊り下げて使うものなので、すらりと垂れるリリヤーンの美しさも最大限に楽しめます。「マクラメで何か作ってみたいけど、本格的な物はちょっと」という初心者の心理にぴったりはまるアイテムだと言えます。
電気を使った照明器具は明治からありましたが、一般家庭に普及したのは大正時代でした(AIがそう言っている)。電灯はまさに当時のライフスタイルの象徴であり、大正という時代の象徴かもしれません。
人間はいつの時代にも「今の時代にいちばん貴重」と思える物にカバーをつけたがるものらしい…という意味のことを、前に書きました。ミシンやテレビにカバーがついた時代もありましたし、黒電話についたこともありました。今だったらスマホですね。
大正から昭和初期にかけては、それが「電灯」だったわけです。
ところでこうした「電灯カバー」の写真を見ているうちに、ふと思い当たったことがあります。
「電灯カバー」を逆さまにして、リリヤーンのかわりに麻ひもか何かを使ったら、そのまま「プラントハンガー」になるんじゃないか?
下はいずれも最近のマクラメの本です。こういうの流行っているんですね。
「電灯カバー」「プラントハンガー」という両アイテムは、100年前と今との価値観の違いを、くっきり反映しているみたいな気がします。
今は、家の中に電気があって家電が使えるのは当たり前。むしろ「電気がなければ生きられない」状況になっています。そしてその背後には、温暖化の不安があります。
そんな時代には「自然」こそが尊い物に見えてきますね。たとえ植木鉢であっても、部屋の中に「自然」を取り込むことがオシャレで、時代の先端なのです。素材はもちろん化繊ではなく天然素材。色も「ナチュラル系」が主流で。
ああ……ずいぶん遠くまで来たもんだ……
手作りの世界もいろいろあるけど、いつの時代にも「作る楽しさ」だけは変わらないでほしいと思います。永遠に不滅だと思いたいです。
