【連載】C-POPの歴史 第27回 '10年代の中国本土1-ポップス、アイドル、海外コラボ
中国、香港、台湾などで主に制作される中国語(広東語等含む)のポップスをC-POPと呼んでいて(要するにJ-POP、K-POPに対するC-POPです)、その歴史を、1920年代から最新の音楽まで100年を時代別に紹介する当連載。前回までは、3回にわたって、シンガポール、マレーシアのC-POPを紹介しました。
さて今回からは、C-POPのメインステージ、台湾・中国・香港に戻って、いよいよ2010年代に入っていきます。まずは中国本土の2010年代を全3回に分けて紹介します。ここまでどちらかと言えば他の地域に比べるとポップス的には少し勢いに欠けた中国本土ですが、2010年代には一気にポップスの花が開きます。中国本土だけに絞れば、100年の中で最もポップだったのは、1930年代の上海租界(第1回参考)を除けば、2010年代が最もポップだったと思います。
そんな中国本土の2010年代を今回から3回に分けて取り上げていきたいと思います。それぞれのメニューは、1、狭義のポップス、アイドルやメジャー系のシンガーソングライター。2、バンドとインディペンデント系シンガーソングライター、3、民族音楽とHip Hop、を予定してます。
今回は狭義のポップスですが、一口に10年代と言っても、2010年と2019年では雰囲気が大きく異なります。その移り変わりを感じてほしく、なるべく年代順に紹介したいと思います。どどんと、17曲紹介してます!
その前に、中国本土の00年代を復習したい方はこちらから
そもそも2010年代までの中国本土のポップスシーンに何があったのか、気になる方はこちらから復習してみてください!
では、ここから本編です。
中国大陸式ポップスの進化1 〜シンガーソングライターの増加〜
これまでどちらかと言えば台湾や香港に押され気味だった中国本土ですが、2010年代に入ってくると、にわかに盛り上がってきます。2008年に北京五輪、2010年に上海万博を終えて、中国本土が先進国を中心としたグローバル社会に本格的に参入を始めたのが2010年代ではないでしょうか。現在はどちらかと言えば米国と中国の覇権競争でデカップリング(分断)が進んでいますが、今思い返すと2010年代は、中国本土が最も日本や西側諸国が中心となっている国際社会に近づいた、幸福な時期と言えるかもしれません。
この社会的な変化は当然、音楽の世界にも反映されます。
まず2010年代初頭には中国にもメジャー志向のシンガーソングライターが急増します。これまで自作志向のポップスならインディーズ、メジャー志向のポップスなら提供された曲を歌う歌謡シンガーというなんとなくの不文律があったのが崩れ出したのは大きい変化だと思います。代表的なアーティストを2人聴いてもらいましょう。
甜蜜 Full in Love/本兮(Ben Xi) ft. K-len(2012年)
ウイグル自治区出身、回族で1994年生まれの本兮(Ben Xi/ベンシー)は、2008年、14歳から主にインターネットで自作曲を発表し、最初はインディペンデント系女性シンガーソングライターでしたが、この曲を発表した2012年あたりはかなりの人気でメジャーな存在になっていました。この曲も本人による作詞・作曲。歌い方とかサウンドはガーリーな雰囲気で、とても親しみやすい歌手です。映画に出演したりゲームのスポークスウーマンになったり、大人気でした。
人気の絶頂期とも言える2016年、わずか22歳の時に亡くなってしまいます。死因は発表されていません。今も彼女を惜しむ声は大きいです。
倍儿爽/大张伟(Wowkie Zhang)(2014年)
2000年代の項目(第15回)で紹介したThe Flowers(花兒樂隊)のヴォーカル、大张伟(Wowkie Zhang)は、2010年代に入るとソロになりました。中国本土のアーティストの中でもかなり長いキャリアで、現在も年に何曲も新曲を発表し精力的に歌を発表する反面、バラエティ番組などにも出て人気なのだとか。確かに親しみやすい雰囲気がありますよね。
ただ、この曲、とっても楽しい曲ですけど、なんかどっかで聴いたことある曲を混ぜているように感じるんですよね。パクリと言ってしまうにはかわいそうではありますが。彼の曲は他のものも含めてどうもどこかで聴いた曲だと思わなくもありません。本人はそのことについて「影響を受けた」と公言しています。が、一方で別のアーティストが自分と似た曲を発表した際は、これはパクリだ!とSNSで憤慨したりするチャーミングな一面もあります。
ベンシーも大张伟も、この時期の中国本土を代表する人気シンガーソングライターとして私は好きですが、あえて辛口に言えば、2010年代にしてはちょっと古い感じというか、既視感が強い音楽という雰囲気も否めません。中国本土はインディーズシーンが熱かったりと音楽自体は多様ですが、ことポップスに関して言えば、先を行く台湾や香港と比べると少し遅れているイメージもこのあたりはあります。
でもまあ、ここから中国本土の巻き返しのターンがやってきます。
中国大陸式ポップスの進化2 〜配信サービスとポップスの進化〜
2010年代中盤ごろから、にわかに、面白い曲がポップスの世界も増えてきました。特にポップスシーンでは女性の活躍が目覚ましかったのが2014年以降です。ここで疑問が2つ。一つ目。なぜ女性だったのか。これはおそらくですが、男性で自分の音楽を表現したいというタイプは、バンド、Hip Hopなどの選択肢を選ぶ人が多かったからだと思います。代わりにシンガーソングライターやポップスの世界は女性が目立つことになった。
二つ目。なぜ2014年あたりなのか。スマートフォンの普及が本格派し、配信で音楽を聴くことが広まったのがこの手前、2010〜2013年頃だと思われます。酷狗音乐がモバイル向けにサービスを展開したのが2008年、QQ音乐は2010年に本格的にサービス開始、网易云音乐は2013年にサービスを開始します。ご存知かもしれませんが、中国本土では、Spotify、YouTubeなど世界的にメジャーなサービスの利用はできません(実際にはVPNを介して接続しているユーザーは多いと思いますが)。Apple Musicはかろうじて中国本土でも利用可能ですが、ユーザーが少なく、リリースされてる曲数も少ないという状況です。配信サービスの普及によって、それまで他の地域(台湾、香港)に比べると海外の音楽を聴くことが難しかったり、あるいは都市部でなければそもそも音楽を聴くことすらあまりできなかった時代が終わりを告げました。ミュージシャン自身がたくさんの音楽を聴く中で切磋琢磨していったのではないかと私は推測しています。
痒/孟楠(Meng Nan)(2014年)
孟楠(Meng Nan/メン・ナン)は、黒竜江省牡丹江市というロシア国境に近い東北部生まれで、上海や北京にも滞在したのち、最終的に広州を活動拠点に選んでいます。
この曲はどうでしょう。独自の世界観があって、でもちゃんとポップスになっていると思います。現代のポップスにおいて最大の課題はエレクトロ、つまり電子音を使ってどうアレンジするかという点ですが、先ほど紹介したベンシーも大张伟も電子音を多用はしていますが、メン・ナンの電子音の使い方のほうがずっと洗練されてると思います。これ以降、素晴らしい曲はどんどん登場しますが、メン・ナンは明らかにその口火を切ったアーティストの1人だと思います。
野子/苏运莹(Sue)(2015年)
オフィシャルの動画がライブシーンしかないのでライブの動画をお見せします。苏运莹(Su Yunying/スー)は、中国南端のリゾート地、海南島出身の女性アーティスト。リー族という少数民族です。彼女の出身である三亜にはきれいなビーチがたくさんあります。
「野子」は彼女が有名になる前に作った代表曲です。この番組でも準優勝を果たし、のちに中華圏で最も権威のある金曲獎(台湾)の最優秀新人賞と最優秀北京語歌手にノミネートされるなど、国外でも評価されました。心に残る歌声ですよね。海南島が生んだ素晴らしいシンガーソングライターの1人です。ちなみに、この曲のSpotifyの配信では、台湾のガールズグループ、S.H.E.のHebe(ヒビ)とデュエットしてます。これを聴くと思うんですが、映像がないとどっちの声かわからないぐらい2人の声は似てます。
(It's not a crime)It's just what we do/Leah Dou(窦靖童)(2016年)
Leah Dou(窦靖童/リア・ドゥ)は、あの90年代香港が生んだ世界的なスーパースター、フェイ・ウォン(第13回)と、北京最初期のバンド、黒豹(第9回)の窦唯、2人の娘です。のちに夫婦は離婚してフェイ・ウォンが育てたのですが、いやー、才能あふれる娘さんに育ちましたね。彼女はこのあと2020年代にさらに大ブレイクしますが(おそらく、この時期は英語詞だったためそこまで広まらなかったと思われる)、中国本土の新たな時代を感じさせる力強いアーティストの1人です。若い彼女の焦燥感にあふれた英語詞も注目。
Do You Think About Me/Ming Gao Feat.希林娜依·高(Curley G) (2018年)
希林娜依·高(Curley G/カーリー・G)は2016年ごろから音楽キャリアをはじめ、中国本土でもかなり歌唱力の高いシンガーの1人だと私は思っています。Ming Gaoという音楽プロデューサーと組んだこの曲は、英語詞ではあるもののなかなか胸に迫る曲です。彼女も本格派シンガーソングライターの1人でしょう。
なんて思っていたら、2018年にはリアリティ番組発のガールズユニット、硬糖少女303「BonBon Girls 303」に加入し、一転アイドルになります。ちなみにポジションはセンター、キャプテン。もともと美しい女性だったので、シンガーソングライターからアイドルへの転身はまったく違和感がありません。もともと期間限定ユニットだったので解散後は再びソロに戻りますが、加入前よりもよりポピュラーな存在になりポピュラーな曲を歌うようになりました。
彼女が顕著ですが、中国本土の面白いところは、アイドルへの加入を一種のキャリアアップと考えて芸能活動する人がいることです。日本のアイドルはどちらかと言えば終身雇用か、燃え尽きるまである程度やりきる、みたいなイメージがあるので、この感覚は新鮮ですね。
中国大陸式ポップスの進化3 〜海外勢とコラボ〜
さて、どんどん進化していく中国本土のポップスシーンを感じていただいたと思いますが、ここからは、海外のアーティスト、作曲家らとのコラボによって生まれた曲をまとめて紹介します。
この時代のポップスシーンで見逃せない展開は、海外のイケてるアーティストを呼んで、コラボしたり曲を作ってもらったりするケースが爆発的に増えた点が挙げられます。中国本土人からするとセンスのある作曲家を経済力で呼べてラッキーですし、海外アーティストから見ても、10億人以上の人口、増え続ける中産階級を抱える中国人に自分の存在を知ってもらえるいい機会というわけで、この時期両者の思惑が一致し、とにかくたくさんコラボが行われました。それは特に2015年以降盛り上がったように思います。彼らとのコラボを通して、中国本土のミュージシャンも大いに刺激を与えられたことでしょう。いわば、外国人作曲家はこの時代の影の主役です。そう言えば、日本もバブル期である1980年代あたりは海外アーティストとのコラボが多かったように思います。あれは経済力だったんですね。
ここでは中華圏や日韓など東アジア以外のさまざまな地域から招聘したアーティストとのヒット曲を振り返ってみましょう。
Boring/李斯丹妮(Dany Lee)(2015年)
李斯丹妮(Dany Lee/ダニー・リー)は中国内陸の都市、成都市出身。成都は音楽的に重要な街になるのですが、それはまた別の機会に紹介します。彼女は2011年に「快乐女声」というオーディション番組に参加し注目を集め、歌に芝居に活躍中のスターです。この「Boring」は、そんなダニー・リーを、アメリカ・LA在住の音楽プロデューサー、Fingazzがプロデュース(Fingazzのプロフィール)した曲です。
かなりかっこいい曲ですけど、はっきり言ってこの時代の中国本土基準からするとかなりエキセントリックな曲だったと思われるので、リスナーがどう受け取ったのか謎ではあります。
Love Somebody/Justin Caruso, 李宇春(Chris Lee)(2016年)
李宇春(Chris Lee/クリス・リー)も中国内陸部の大都市、成都の出身。彼女のキャリアは長く、2005年に「快乐女声」で人気を集めたことからソロデビューが決定。クリス・リーはその後全国的に大人気になったのですが、彼女の名前で画像検索するとわかると思いますが、どちらかと言えば中性的な魅力のある彼女。そんな彼女を好きになる男女が全国に続出し、その影響は「李宇春現象」と呼ばれる独特な現象を巻き起こしました。中国本土でもフェミニズム運動が高まるなか、彼女は自立した女の象徴になります。
一方、コラボ相手のJustin Carusoは、米国LAを拠点とするDJ。
この曲ではどちらかと言えばJustinがメインヴォーカルで、クリスのコーラスは、ジャケットの写真のようにちょっと実態が欠ける謎めいた雰囲気なんですけど、彼女のコーラスがこの曲の魅力を高めているように思います。とてもロマンチックな曲。
Bad Habit/Far east movement feat. 艾热(Air)(2018年)
Far east movementは、アメリカ・LAのコリアンタウン出身のHip Hopユニット。彼らは元々韓国系、フィリピン系、日中ミックス系のメンバーによるユニットなので以前から東アジア全域のミュージシャンとコラボしてましたが(第18回で紹介したMC Jinとも仲良し)、こちらはウイグル系中国人ラッパーの艾热(Air)とコラボした楽曲です。こちらも私はかなり好きな曲。
艾热(Air)は2016年にラッパーとしてデビュー、2018年には「The Rap of China」という番組で優勝を果たし、メジャーな存在になりました。この曲ではわりとラフな雰囲気のラップを展開してて、Far east movementのドリーミーなトラックによくハマってます。ちなみに女性ヴォーカルはJustine Skye。素敵な歌声。
Live It Up/Kristian Kostov & 陈梓童(Tifa Chen)(2019年)
陈梓童(Tifa Chen/ティファ・チェン)は南京市出身で、初めて好きになったポップソングはジェイ・チョウの「雙截棍(ヌンチャク)」。2009年には当時の中国本土女性歌手の登竜門、「快乐女声」に出場します。その後2011年、韓国の芸能事務所にスカウトされ、ソウルに移住、2014年には韓国でデビューします。しかし、2015年は中国に戻り、「中国好声音(The Voice of China)」というオーディション番組で、ジェイ・チョウ本人の前で「雙截棍」を披露。本人に気に入られ、この番組では準優勝を果たしました。2016年には中国でもデビューを果たし、以降は中国本土の歌手として活躍しています。
一方、コラボ相手のKristian Kostovはロシア人のシンガー。彼女と同様、オーディション番組で勝ち上がってきたシンガーの1人です。露中のシンガーが英語で歌うという国際的な曲です。
Billboard/Jonas Blue & 陈梓童(Tifa Chen)(2019年)
これもいい曲〜。なぜか海外アーティストに愛されるティファ・チェンからもう1曲。曲自体がかなりかっこいいのですが、それ以上に上海を舞台にしたMVがとにかくかっこいいのでまずは映像を観てください!眠らない都市上海の怪しげな魅力と、そこで過ごす謎の女(ティファ・チェン)と、途中で登場するクラブの白人DJ(Jonas Blue/ジョナス・ブルー)。うぉー。この感じ大好きー。
コラボ相手のJonas Blueは、ロンドンの売れっ子音楽プロデューサー、DJ。
Champion/Jason Derulo featuring 袁娅维(Tia Ray)(2019年)
続いては、Jason Derulo(ジェイソン・デルーロ)。彼はアメリカのビルボードチャートで1位を獲るぐらいメジャーなアーティストですが、この曲では、袁娅维(Tia Ray/ティア・レイ)とコラボします。
ティア・レイは中国本土を代表するR&Bシンガーの1人。彼女はユニークなキャリアの持ち主で、まずは1999年に、北京のラジオ番組のモノマネ選手権的な番組に出演し好評を得ます。その後は歌唱力を買われてちょこちょこレコーディングにコーラスなどで参加するようになるのですが、2004年にはなぜか振付師として芸能界入りを果たします。メジャーアーティストの振り付けを担当したあとも、コーラスや振り付け、ボーカル専門の講師など裏方として活躍します。一方、2010年には友人らとバンドを結成し各地のフェスに登場、2012年にオーディション番組「中国好声音(The Voice of China)」に参加し、この番組での活躍がきっかけで正式に歌手デビューが決定します。中国本土は若くしてデビューするアーティストが多いなか、彼女はデビューの時点ですでに28歳でした。下積みの長いアーティストです。
デビュー後は順当にキャリアを積んで、世界的に有名なジェイソン・デルーロとコラボします。この曲が出たのは35歳。年齢を何かの言い訳にする人にも聴いてほしいアーティストです!
中国大陸式ポップスの発展-4 〜TikTokとオーディション番組〜
日本ではヒット曲がヒットする際に、テレビやマスコミが果たした役割は多かったと思いますが、中国本土では何よりもSNSでした。そう、TikTokの登場です。
学猫叫(Learn To Meow )/小潘潘、小峰峰(2018年)
中国独自のSNSにWeibo(微博)やWeChatが挙げられますが、どれも中国国内のサービスという雰囲気です。そんななか、2016年に誕生し、またたく間に世界中で大流行したショート動画SNSが「TikTok(抖音)」です。現代はInstagramのリールやYouTubeのショートなど、短尺縦動画に特化したサービスは各社行ってますが、それもこれもTikTokが爆発的に流行したから後追いで始めたように思います。いつも世界のどこかのサービスを真似していた中国が、世界に真似されるサービスを生みだしました。こんな先進的なサービスが中国本土から生まれたことに世界は驚きました。
さて、そんな中国発世界行きの「TikTok」の投稿に付け加える音楽として、「学猫叫」(Learn To Meow )という曲は大バズりしました。いまでも「TikTok 学猫叫」で検索すると、さまざまな動画が見れるはずです。たいていは中華系のお姉さんが猫のようなダンスをしている動画ですが、疲れたときなんかに観るにはちょうどいいです(笑)。発表されてから8年経った今でも愛されていることが垣間見れると思います。なぜか耳に残るかわいい曲。これぞポップス。ちなみに今回のトップ画像はAIで作った「学猫叫」を歌う小潘潘(シャオパンパン)でした。
宠坏/小潘潘、李俊佑(2019年)
「学猫叫」でバズった小潘潘(シャオパンパン)は時の人となりまして、特に男性アーティストからコラボの依頼が殺到しました。そのなかの一曲がこれ。この曲は「私を甘やかさないで、他の人を好きになれなくなっちゃうから」という甘い曲。さすがにミャオミャオ歌うのも疲れたのか、シフトチェンジして少し大人っぽい路線の曲なのですが、この曲もそこはかとなくいいです。この曲以外にも、26回で紹介したマレーシアのNameweeともコラボしていてそれもなかなかいい曲(一起做過的蠢事情)。オファーが殺到してますね。
ここでそんな、モテモテポップシンガー、小潘潘について軽く紹介しましょう。もともと彼女は幼い頃からダンスを習っていましたが挫折。その後オンラインゲーム配信を始めますが、ゲームが下手すぎたため代わりにダンスを披露することになったそうです。なにそのかわいい展開。その後は「ライバー」として有名になり、2017年には只不过でデビュー。翌年には「学猫叫」。
中国国民が夢中になった小潘潘の魅力はなんなのかを考えましたが、まずはやはりなんといってもキュートな歌声でしょう。日本だと、アニメ声優さん出身の歌手みたいですよね。CANDY TUNEとかAiScReamとかが流行ってる日本なら、小潘潘の魅力はわかるところでしょう。そして歌声もダンスも適度に真似がしやすかったのではないでしょうか。TikTokで踊るには最適なのかもしれません。中国のポップスシーンには他にも美しい女性はたくさんいると思いますが、彼女はとても自然体な魅力を持っているように思います。
卡路里(Calorie)/火箭少女101(Rocket Girls 101)(2018年)
火箭少女101(Rocket Girls 101)は、PRODUCE 101という、テンセントビデオ(NETFLIXとかAmazonプライムと同様のサービス)が提供するオーディション番組から生まれた2年間限定のアイドルユニット。中国では同様のアイドルユニットが、この時期男女ともに登場しました。この「卡路里」(カロリー、なんとなく読める)は、美味しいもの食べたいけど痩せなきゃとダイエットに取り憑かれる現代人を歌った曲。テーマも雰囲気も親しみやすいですよね。
どうも中国のアイドルは日本人と感覚が違うように思います。MVを観ていただけるとわかるかと思いますが、単純にルックスで選んでいるという気はしません。ひょっとすると、単一民族である日本や韓国のユニットよりも、美の基準が多様なのかなとも思います。なんか、庶民的な雰囲気も含めて好感が持てます。
无感/王一博(Wang Yibo)(2019年)
こちらは、韓国発でメンバーの5分の3が中国出身者だったUNIQという男性アイドルユニットのメンバーである王一博(Wang Yibo/ワン・イーボー)。UNIQは2015年にデビューし、韓国と中国を股にかけた活動を売りとします。しかし、限韓令という中国の政策によって、中韓の国境を超えた活動が難しくなってしまい、グループは自然消滅してしまいます。彼はその後中国でソロ活動に勤しみます。かっこいいでしょ、この曲も、イーボーも。
この曲は作詞は本人、作曲はRick Bridges(本名:최상혁)という韓国人作曲家によって作られた曲。限韓令とかって話ですけど、作曲家は韓国人でも問題なかったようですね。
上山采茶/朱婧汐(Akini Jing)、三筒七条(2019年)
長かった2010年代の中国本土のポップスシーンも最後の曲になりました。雲南省普洱(プーアル)市出身の朱婧汐(Akini Jing/アキニ・ジン)は現在も大活躍中の中国本土の音楽シーンのトップランナーの1人。彼女の故郷、プーアル市は、文字通りプーアル茶が名産で、「上山采茶」(山で茶摘み)は、都会でうだうだするより山で茶でも摘んでたほうがクールだ、みたいなことを歌っています。
彼女のキャリアはかなり長く、「朱婧」という芸名で2004年にデビューします。最初はよくいる真面目なシンガーの1人でしたが(デビュー曲、「香格里拉」)、その後2015年に現在の「朱婧汐」に改名したあたりから衣装を含め世界観が爆発し、中国本土の音楽シーン上でもトップランナーになりました。
まとめ
中国本土のヒット曲を(なるべく)時代順で紹介しましたが、その進化、変化は感じられましたか? 前半は素朴なポップス、後半はかなり印象が変わり洋楽っぽい曲も増えます。その裏には、海外からのクリエイターの招聘(とそれを実現できる経済力)があったように思います。また、台湾アーティストのS.H.E.のHebe(ヒビ)がデュエット相手で登場したりしましたが、この時期、香港・台湾(あと韓国も)から中国本土に出張してくるシンガーもかなり増え、そのことも中国本土音楽のクリエイティブに大きく影響したと思います。どれも、豊かになる中国本土があるからこそ起こった変化だと思います。
もう一つの変化はスマホでしょう。TikTokも配信サービスも含めて、スマホが中国本土の国民に与えた影響は計り知れないと思います。国民一人一人が観たい動画を観て、聴きたい音楽を聴けるようになった。共産党の意向が影響しやすいテレビ放送と違って、比較的自由な表現が可能なインターネットでは、自由に自分の好きな音楽を聴けるようになったことはとても大きいと思います。
中国本土のポップスは10億人のリスナーを従え、20年代はさらに進化します。その前に、ロックやHip Hopの10年代も振り返ってみましょう。
バックナンバー
1927年から2026年まで、約100年のC-POPの歴史を紹介する連載。過去記事は以下で読めます。ようやく2010年代に入り、ゴールが見えてきました。でも、たぶんあと10回は続きます。飽きずに読んでね。
