『破壊される家計』──連鎖し続ける「更なる恐怖」
およそ10年前の、ある日、
妻が突然、脳出血で倒れた。
その直後、息子が「死んでくる」と言い残して、姿を消した。
わずか一週間も経たずに──
家族は崩れていった。
そして──追い打ちをかけるように
「お金」という現実が待っていた。
働けないまま、『家計は崩壊』した。
ICUで意識の戻らぬ妻の隣に座り、
機械音だけが響くなかで、
私は恐怖に震えながら生活のことを考えていた。
人としての生きる術が、
壊れていく。
それでも──
『このまま終わるわけにはいかない』
という気持ちだけは残っていた。
誰の助けもなかった。
地の底で、這いつくばりながら考えていた。
諦めたら、
すべてが終わる。
──だったら、
やれるだけ、やってやる。
私は、ピッピッという機械音だけが鳴り響く、薄暗いICUの病室で、
脳出血で倒れた、まだ意識の戻らない妻の隣に座り、ただ黙って──
生活のことを考えていました。
働くことすらままならず、
家計は急激に悪化していきました。
破壊されたのは、
妻や息子だけではなく。
"人として生きていくための『お金』"も、
同時に壊れていました。
ある日、何の予兆もなく──
地の底へ突き落とされた私は、
ただ茫然と目の前の『現実』に、
体を震わせて恐怖していました。
それは、妻が脳卒中の手術を受けた
まだ間もない1月中旬のこと──
私は会社に、当面は働けないことを伝え、
休職の許可を取り付けていました。
ありがたいことに理解は得られたものの、
日当、残業、営業手当──
すべての手当類は即座にゼロになりました。
加えて──
看護師だった妻の収入も、
夜勤や残業手当は同じくゼロに。
その結果、月の世帯収入は4割減。
それは、「介護が始まったその瞬間」から、実は確定していた事実でした。
そして、そこへ追い打ちをかけるように届いたのが、
──高額なクレジットカードの請求。
治療費、入院費、生活費、学費、住宅ローン……
そのときは、
ただ生きているだけで、出ていくお金が爆発的に膨れ上がっていきました。
──気がつけば、
その月の医療費だけで、
70〜80万円が吹き飛び、
年末や年明けに使った、
普段ではあり得ない額の請求が目の前には迫っていました。
さらに──
その2か月後には、
子ども達の学費300万円。
またその翌月、翌々月には、
年金や税金の請求。
妻が倒れてから、わずか4か月の間に、
必要となる現金は、ゆうに500万円を超えていました。
──「このままでは、いずれ破綻する」
その現実が、
目の前に横たわっていたことに、
私は意識のない妻の隣で、
ようやく気づきました。
ただただ、恐怖していました。
その二文字だけが、
何度も私の頭を駆け巡っていました。
『破産』
『破壊される家計』
──連鎖し続ける「更なる恐怖」へ【完】
▼この話は続きます。
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▼関連の話1 妻が脳出血で倒れる
▼関連の話2 息子の自殺騒ぎ。
▼この話は『若若介護シリーズ』の一編です。全体構成【目次】はこちら
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