51歳の遺書
その終活を
始めるにあたって──
何から最初に、
手をつけるか考えた結果。
最初に浮かんだのは、
『遺書』でした。
狭心症や不整脈による
突然死を考慮して。
なるべく無駄な手続きは省き、
今の意思を
便箋に綴って、
家族LINEにも送りました。
けれど、
それはメモ代わり程度のもの──
当然、法的な効力が
あるものではありません。
以下、実際に、
家族へ送った原文の一部です。
【遺書】
・葬式はしないように。
できる限り、
お金を使わず済ませること。
・土地、家、金融資産の財産のすべては配偶者が引き継ぐ。
・その財産管理のすべては、
長女と長男に任せる。
・債務は家のローン以外にはない。
・連絡を必要とする人はいない。
・勤務先の会社に連絡すること。
会社から指定された場所へ、貸与物は郵送すること。
・すべての金融関連の情報は以下。
・資産の売却は、長女・長男に任せる。
但し、その使用は必ず母親の利につながること。
やや寂しくも、
書き出してみて思ったのは、
……意外に、書くことがない
大した財産があるわけでもなく、
身寄りもいない。
会社の手続きも、
それほど煩雑ではない。
……まあ、こんなもんか
その時は、
妙に納得した気持ちになりました。
──あとは、妻のことだけでした。
介護が必要な妻を遺し、
自分が先に逝く。
その後、
妻はどうなるのか。
──という、ことでした。
それは、
まだ社会人になって間もない長女と、
大学生の長男には、
どう考えても、
荷が重すぎると思いました。
けれど、
そうなる可能性がある以上──
避けられない現実なんだと
分かりました。
そして子ども達には直接、
こう伝えました。
『ママの介護をどうするか、
きちんと話し合っておいて欲しい』
おそらく、
私より長く生きる妻は、
その時がきたら、
どう思うだろうか。
きっと、その時は──
泣いたりは、するものの、
私がいなくなったことすら、
すぐに忘れてしまうような気がする。
ただ、
妻にとっては、
それが一番良いと、
私には思えている。

51歳の遺書 【完】
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