食べれないシーザーサラダとフィッシュ&チップス
そこで味わうのは、
美味しい料理だけ。
……のはずでした。
その日、仕事帰りに同僚と飲みに行く約束をしていた私は、
その1時間も早く店に着いていました。
LINEをすれば、
『まだまだ終わらないので、
先にやっていてください』とのこと。
もちろんそのつもり。
辛口のジンバックを頼み、
つまみは何にしようか選んでいました。
店はオールドアメリカン漂う、
カジュアルなレストランBAR。
メニューもヤンキーさが効いていて、
まったく健康にも配慮しないところが気に入りました。
ハンバーガー?
でかいなこれ。パティも肉肉しい。
またピクルスは別添えで、
そのプレートにもぎっちりとポテトが敷き詰められていました。
1ポンドステーキ。
これはさすがに即死するレベル。
一人で先にやるには少し。
などと、
あれやこれやとメニューを見ながら、
健康も考慮して"野菜と魚"にすることにしました。
野菜はシーザーサラダ。
春巻きの皮を重ねて焼いたようなパリパリの器の中に、チーズと野菜が入ったあれ。
魚はフィッシュ&チップス。
揚げた白身魚2つと、
フライドポテトが添えられたそれ。
店員を呼んで、それらを注文。
まず来たのは、重ねられた小皿と、
ナイフやフォークが束になって入れられた木の皮で編み込まれた細長い籠。
そして蓋が下になった大きなボトルのマスタードとケチャップでした。
そうそう、これこれ。
それだけで私のテンションは上がり、
すっかり気分は、オールドアメリカンに。
しばらくすると、
シーザーサラダが登場。
え? デカッ!
食べ方の説明を聞けば、
そのパリパリのパイ生地の器を、
野菜が入ったままひっくり返し、
ぐちゃぐちゃに崩して混ぜて食べるそう。
言われる通りに、
フォークとナイフでひっくり返し、
そのパリパリの器とサラダを混ぜれば、見た目は空気を含んで更にボリューミーに。
それを横で見ていた店員は、
容赦なく粉チーズをその上に掛けて去っていきました。
それを一口食べれば──
絡み合うチーズと、超濃厚でクリーミーなドレッシングが口中に広がり、
それを後追いするように、
パイ生地とレタスのパリパリの食感が、
攻撃的なほどの刺激を中枢へ。
これは、めちゃくちゃ美味い!
あくまでサラダであり、
罪悪感もなくパリパリ、シャリシャリと勢いよく食べていれば、
半分ほどなくなったところで──
急激な"満腹感"が襲ってきました。
最近は少し油っぽいのを食べると、
同様の現象に見舞われることが増えていました。
よもやサラダごときに、
そうなるとは思わず。
とりあえず辛口のジンバックを流し込んで、仕切り直しを図っていました。
そして、そこに来たのは、
フィッシュ&チップス。
写真よりデカい白身魚のフライと、
大量のフライドポテト。
え? これ、一人前?
しばらく休憩するも、
胃袋はまったく仕切り直さず。
目の前のプレートの料理を見てるだけで、もはや大満腹でした。
しばらくスマホを見ながら、
チビチビと飲んでいると、
同僚がようやく合流。
とりあえず生を頼んで、
すっかり冷めたフィッシュ&チップスを食べながら同僚は、
マジ、美味いですよこれ!
食べちゃって、いいんですか?
と、言いながら。
例のマスタードとケチャップを、
ボトルが鳴くほど振り絞り。
残ったシーザーサラダとともに、
あっさりと平らげていきました。
同僚が次に頼んだのは、
アメリカンハンバーグのチェダーチーズ乗せ。
ジュウジュウと音がする鉄板に、
乗せられて来たそれは──
すでに仕上がっていた私には、
鼻から抜けるほどの油の“ご馳走臭”が凄すぎて、
思わず少し距離を置きたくなるほどでした。
すいません、じゃあ遠慮なく。
と、言いながら同僚はそれを、
フォーク片手に、チーズの糸を引きながら、まるでパスタでも食べるかのように口の中に運んでいきました。
そして、いともたやすく完食。
もはや完全に仕上がり切っていた私には、
まるでアスリートの競技でも、
観戦しているかのようでした。
その後、生を頼む前に同僚は、
まだ頼んで良いですか?
と言いながら、
何にするか次のメニュー選びに、
取り掛かり始めていました。
店を出て、
同僚と別れた道すがら──
結局、私が味わったのは、
ジンバック2杯と半分のサラダ。
昔より油っぽいものが、
食べれなくなったという、
諦めにも似た敗北感でした。
ただ、人が美味しそうに食べてるのを見るのは悪くはないな。
初めて、そう感じていました。

食べれないシーザーサラダと
フィッシュ&チップス【完】
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