初めての外泊──半年ぶりの帰宅
【第5章 番外編 その1】
その年の1月に、
脳出血で倒れた妻が家に帰れたのは、
5ヵ月後の、
6月に入ってからでした。
──それまでの間、
妻は弱音を一切吐かず、
懸命に回復へ目指して、努力を続けてきました。
重い後遺症は、
まだ色濃く残っていましたが、
その甲斐もあって、
妻は順調に回復していました。
そんな中で、
出された『外泊許可』。
ついこの前まで、家に帰れることを
想像すらできなかった私は、
心を躍らせながら早速、
その準備に取り掛かりました。
医師から、
「一泊だけのお試し外泊」の許可が下り。
それを知った妻は、
ずっとニコニコしていました。
すっかり顔なじみになった、
看護師さんやスタッフさんからも、
『いいわねえ〜』『楽しみだね〜』
と声を掛けられ、
そのたびに嬉しそうな顔をしていました。
当時の妻は、
移動はほとんど車椅子でしたが、
杖を使えば数メートル程度は自立歩行も可能で。
手すりを使えば階段の昇り降りも、
ゆっくりながらできる状態でした。
許可が出てからは、
たとえ一泊とはいえ──私は、
妻が家で過ごせるかを、
何度も『一人シミュレーション』していました。
自宅は幸いバリアフリー設計であり、
移動に困るような段差はなかったものの、
手すりのない場所が多く、
注意が必要でした。
特に心配だったのは、
トイレと寝室。
トイレは一人で出入りできるか?
便座から立ち上がる動作は大丈夫か?
自分が妻になったつもりで、
片足で立ったり、何度も出入りしたり、
便座から立ったり座ったりを繰り返して確認しました。
寝室は二階でした。
らせん状のやや急な階段を、
右半身麻痺の妻に、それができるか。
これも実際に、自分で昇り降りしながら何度も確かめました。
病院のベッドとは異なり、
弾力のある高さのあるマットレスに、
腰掛けたり、横になっては、
また起き上がる。
そんな一連の動作を、
問題がないと判断できるまで、
繰り返していました。
検証の結果──
入浴以外は、
妻が家で過ごすことができると分かり。
やや不安を残しながらも、
妻を迎える準備が整いました。
外泊の当日は晴天。
病院の前に停まった介護タクシーは、
後方のハッチバックから、
スロープが降ろされ、
車椅子のまま妻を乗せて運べる。
ワンボックスタイプのミニバンでした。
まとめた病室の荷物を
介護タクシーに乗せて、
車椅子を押しながら──
『いざ、半年ぶりの我が家へ!』
と言う私の掛け声に、
妻もワクワクした様子でした。

初めての外泊──半年ぶりの帰宅【完】
▼この話は【番外編 その2】へ続きます。
▼この話は、【第5章】若若介護の形シリーズの番外編です。シリーズのマガジンはこちらからご覧になれます。
▼その他の話やシリーズは、全体構成【目次】からご覧になれます。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援とフォローをお願いします。
チップはクリエイターとしての活動費にいたします!