帰れない長女
昨年一人暮らしを始めて。
半年ぶりに家で過ごす長女は、
以前と何も変わっていませんでした。
何か話すわけでもなく、
家のことをするわけでもなく。
一人暮らしから持ち帰った洗い物を
洗濯機に入れて放置。
それを私は洗い、
乾いたら取り込む。
長女はずっと、
自分の部屋で1人、
ネットをしたり、編み物をしたり。
たまに家に帰ってきた時ぐらいは、
"何もしたくない"とばかりに無言で。
そうして。
帰ってきても、顔を見せることは、
ほとんどありませんでした。
一方──
普段の長女の生活を知らない妻は、
台所に水を飲みに来たり、
トイレに行く長女の姿をちらっと見かけるたびに、
『今、どこで何してるの?』
『普段は働いてるの?』
と、その都度、
声をかけていました。
けれど長女は、
『んー』
と、答えにもならない返事。
明らかに、
会話すること自体が面倒そうな。
──ほっておけばいいのに
と思いながら、
その様子を見ていました。
それでも妻は、
諦めずに話しかけて、
相手にされないまま──
だんだん感情的になり、
『もう、帰ってこなければいいのに💢』
と……
大晦日。
長女が物心ついた頃から、
私は毎年、長女と二人で、
夜中に初詣へ出かけていました。
今年も、同じように。
『行くよ』
と声をかけて家を出ました。
神社まで、
片道三キロほどの道を歩きながら。
話したかったのか、
長女もぽつぽつと話し出し。
とりあえず長女が、
ちゃんと楽しくやっていることだけは、
分かりました。
参道の屋台で甘酒を飲み、
おみくじを引くのが恒例でした。
私は去年と同じ「吉」。
長女は、よく分からない四文字熟語。
その帰り道──
ふと
『そろそろ俺じゃなくて、
彼氏と初詣行かないとな』
と言うと、
『え、いいの?』と。
『当たり前だろ』
──長女なりに、
気を使っていたのか。
それから、
元日、二日と、
家族そろってお節を食べて。
なぜか三日から、
私だけが食中毒に──
妻の介護ができないため、
長女に、
『俺、何もできないから。
ママのこと、手伝ってあげて』
と頼むと。
その日の夕方──
長女は何も言わずに、
一人暮らしの部屋へ帰っていきました。
……まあ、そうするか。
相変わらず、
感じは悪いな。
次に長女が帰ってくるのは、
いつのことやら。
……まあ、いつ帰ってきても、
そうでなくても。
ただ、長女が家で、
のんびり過ごせるようになるには、
まだ時間が掛かりそうでした。

帰れない長女 【完】
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