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『結婚後夜』──娘をやれない父と、覚悟だけの男



 家も貯金もない。
 あるのは"覚悟"だけ。



「定職もない男に、娘はやれない」

 妻の父の言葉は、まさに正論。



 それでも、フリーター同士だった私たちは、
一緒に暮らすために結婚を選んだ。



 許されないまま始まった結婚生活。


 父親の気持ちが変わっていくまでの、
小さくて長い時間──

これは、
私たちふたりの“出発の物語”です。





大学4年生の春、
卒業が目前に迫っていたころ。

私はすでにプロポーズを済ませ、
妻との結婚を決めていました。



まず自分の親に報告すると、
父も母も「お前が好きなら仕方ない」

と、あっさりと認めてくれました。




一方、妻の父親は違いました。

「定職も収入もない男に、娘はやれない」

と、当然ながら猛反対。




何度も彼女の実家へ足を運んで

誠意を込めて説得を試みましたが、
首を縦に振ってはもらえませんでした。





卒業式の日は、
私たちにとって大切な節目でもありました。

卒業式に入籍をすると決めていた私たちは、式が終わったその足で、

近くの役所へ向かい、
婚姻届を提出しました。



その夜の謝恩会では、教員や同級生たちから、たくさんの祝福の言葉をもらい、


まるで、
ささやかな“披露宴”のようでもありました。




ただ一つだけ、
心に引っかかっていたのは――


最後まで、
妻の父親から結婚の許しを得ることができなかったこと。




私は卒業後、

妻との新生活のために、
安いアパートを借り直して、

暮らしの準備を整えていました。




けれど彼女の父は、

「フリーターのままでは、
一緒に住むことも許さない」
と、



結婚そのもの以上に、
“ふたりの生活”を強く反対していたのです。



たしかに、当時の私の収入は、
時給800円のアルバイト。



どれだけ頑張っても、
年収200万円に届くかどうか、
という状態でした。

それでも私には、
不思議と不安はなく、


「ふたりで生活するのに、
月いくら必要なのか」

は、同棲生活を通じて、
感覚的に把握できていました。




──数ヶ月が過ぎたころ。



先にしびれを切らしたのは、
彼女のほうでした。


「もうパパの許しはいらない。
私は一緒に暮らす」
と、

自分の意思をはっきり伝えてきました。


彼女の母も、

「駆け落ちみたいな形にだけはしたくない」

と父親を説得してくれました。





そして、
ようやく晴れて、


私たちは“ふたりの暮らし”を
スタートさせました。


結婚式は、その2年後──

まわりからの支援もあって、
海外で2人きりの挙式を挙げることができました。



あれほど結婚には、
頑なだった彼女の父親も、


私たちに子どもたちが生まれてからは、


すっかり

“優しいおじいちゃん”

になっていました。






【結婚後夜】
──娘をやれない父と、覚悟だけの男【完】



▼ふたりの新婚時代
【新婚前夜】に続きます。


▼このお話は『結婚前夜』の続きです。






▼このシリーズの全編はこちらから



▼『若若介護シリーズ』の全体構成【目次】は、こちらからご覧になれます。

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