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ハリーポッターと車椅子の妻 【後編】







2日目──

その日も晴天でした。


いつもより早く目が覚めた妻は、
一刻も早く"魔法学校"へ向かいたい様子。


私もよく寝れたせいか、
昨日の疲れも、
すっかりなくなっていました。


チェックアウトも済ませて──


いざ、ホグワーツ!




朝食もそこで、
食べる予定にしていました。






到着は予定より早く。

映画で見たことのある食堂に、
そっくりのレストランで、

モーニングを頼みました。


ベーコン、目玉焼き、
いろんな野菜がゴロゴロと
乗ったプレート。

追加で、ピンクのケーキ。





うーん、美味い!



『ねえ、ここの食べもの、
なに食べても美味しくない?』


と言えば、
妻も頷きながらニコニコと。






──そこに着信。



見覚えのない番号。
出てみれば宿泊したホテルから。


『お財布がロビーに落ちてたので、
お預かりしてます』


……え、やっば!


それまで、
スマホで会計をしていたため、
財布がなかったことに全く気づかず。

私はモーニングをほとんど食べずに、
妻をそこに残して、
急いでホテルに戻りました。

財布を受け取り安堵するも、
内心は……

絶対に怒ってるよなあと、
気が重く。


案の定──



『財布あったよ!』と妻に報告するも、
イラついた顔で、ガン無視。



……こっわ



とりあえず妻には平謝りし、
車椅子を押して、

ツアースタート!








当然ながら昨日と同じ説明と、
同じオブジェ。



けれど妻は忘れたように、
全てが新鮮に映っていたようでした。


『わーすごいねー。見てあれー』


と嬉しそうな様子。


すっかりご機嫌になった妻に、
胸を撫で下ろしながら車椅子を押す私。


ただ、
屋内はバリアフリーながら、

他の人に車椅子がぶつからないように、
細心の注意を払う必要がありました。


前の人が立ち止まれば、
ブレーキ掛けながら踏ん張り。


写真撮りながら、
いきなりバックしてくる人いれば、
急旋回と。



テーマパーク内は人が多く、

車椅子を押している時は、
気を抜くことはありませんでした。




次第に昨日からの疲労も加わり、
やがて、ふくらはぎが吊り出し……




しばらくして、

昨日と同じツアーの続行は不可能と、
判断した私は、



『え、何で? もっと見たい』

という妻の希望もよそに、

数々のオブジェや、
コーナーをすっ飛ばしながら、

ツアーの後半に近いレストランに、
駆け込みました。





昨日から車椅子を押し続けた筋肉疲労と、
朝食をまともに取れなかった私には、

頼んだバタービールが、
骨身に沁みるほどでした。



また、そこで食べた、
アフタヌーンティーは、

もはや反則級。





それから、
すっかりお腹も満たされた私は、

完全に戦意喪失。

妻には、気力と体力の限界を伝えて、
家路につくことにしました。



まだまだ妻は、
そこにいたかったようでしたが──



もうそれ以上、

車椅子を押し続ける体力が、
残っていませんでした。










旅行から戻っても、 
すっかりツアーに触発された妻は、

映画のハリーポッターを
見返し続けていました。




そして、また私に、



『このシーン分かる?
あそこにあった、ほらあれだよ?』
と。



けれど、
そう聞かれても。


あの日は、
車椅子を押すので一杯一杯で、
それらを見た覚えがほとんどなく……





『へー、よく覚えてるね』


そう言えば、

ニコニコ
しながら妻は、
また一生懸命に説明してくれました。




そんな妻を見るたび、

大変なこともあったけど、
とても良い旅行だったと思えています。






次は、
どこに行こうかなと──





ハリーポッターと車椅子の妻 

【後編 完】



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