妻を初めて泣かせた日 【後編】
……!?
その事業が、
終わりを告げたのは一瞬でした。
海外の仕入れ先へ、
アクセスしようとするも開かない。
リスク分散のため仕入れ先を
中国、アメリカ、イギリス
と分けていましたが、
全てがブラックアウトしていました。
──後になり、知りましたが、
私が発注していた商品は、
全て中国の工場で作られていて、
その工場がアメリカやイギリスで、
名前を変えてサイトを立ち上げていたものでした。
何かしらにより、
中国の工場が閉まれば、
連鎖して一瞬にして消える。
──漏れなく、私の事業も。
注文のキャンセルや返金に追われる中、
これ以上、傷を深くすると戻れないと気づき。
その事業をあっさり閉じました。
資金ゼロで始めた事業であり、
借金もなく終われたこと。
──それだけが、救いでした。
それから──
再就職のために、
めぼしい求人募集に片っ端から応募するも……
企業からは、
"お祈り"をされ続けていました。
バイトで凌ぐことも考えましたが、
生活は成り立たないと分かっていました。
一瞬、危ない仕事も考えましたが、
これ以上、妻を泣かせられない。
とやめました。
そんな時に長女から、
『転職いっぱいしてるんだし、
昔の上司にでも泣きついてみたら?』
との助言。
辞める前にその人たちに、
『絶対に起業して成功します!』
と豪語して去っていて、
かなりバツ悪かったものの、
──もはや、なりふり構わず。
スマホの電話帳にある
元上司だった人達に、
片っ端から電話をかけました。
『失敗しました!
何でもするので助けてください!』と。
──半分以上の人は、
あっさり断るか話を聞くだけ。
ただ、2人の元上司が、
実際に動いてくれていました。
一人からは、
『俺が辞めても、お前を入社させるから』
と嘘でも涙出るような言葉も。
──頭を下げる以外になく。
そして内定へ。
電話をしてから、
僅か1カ月のことでした。
就職した会社での勤務地は四国。
単身赴任でしたが、
初めて住む土地であり、
何より、
また働けることに、
私は胸躍らせていました。
妻に『しっかり稼いでくるから!』
と言えば、
ニコリと静かに手を振って、
送り出してくれました。
──あの日、妻を泣かせたことは、
時間が経っても消えることはなく。
そして私は、
妻を介護しながら今も、
会社員として働いています。

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