妻を初めて泣かせた日 【中編】
あっけなく終わりを告げた
その夢のことを
──妻に話した日。
その晩の妻は泣きながら、
『……これから、どうするの?
家のローン、子どもの学校……』
『だからやめてって、言ったのに……』
と背を向けて、
布団被りながら妻は、
ベッドで一人泣いていました。
結婚して、
20年が経とうとしていましたが。
──その時が初めて、
"妻を泣かせた日"でした。
これほど、
長く泣いている妻の姿を見るのは、
その時が初めてでした。
そのあまりに切ない
妻の後ろ姿を見て、
私はとてつもない自己嫌悪と、
妻に対する申し訳ない気持ちに、
苛まれていました。
……全ては、俺が悪い。
自分が原因で、
妻を泣かしたことだけが、
──どうにも許せず。
その泣き続ける妻に、
『大丈夫。何も心配いらないよ。
絶対なんとかするから』
と背中越しに伝えるも、
私の言葉に反応することなく、
そのまま泣き続けていました。
──その時の私は、
まだ40歳そこそこ。
それまでに、
かなりな転職を繰り返していて、
履歴書の欄が足りないほど。
子どもは2人とも私立。
家は建てたばかりで、
そのローンも巨額でした。
また生活費も高く。
生活そのものを維持するだけでも
並のバイトでは、
とても凌げない状況でした。
妻でなくても、
……これは、"詰んだ"な。と。
その事業の整理には、
2か月ほど要しました。
その間の収入はなく、
また職を探せる状態にもなく。
家のお金だけは、
どんどん消え去っていきました。
私は次に進むために、
毎日のように夜通しで、
その整理をし続けるしかなく。
毎朝、気分転換のつもりで、
駅近くの縁石に座りながら、
タバコをふかしていました。
──その頃には、もう。
ホームレスの男性からも
すっかり顔馴染みでした。
すっかり親しくなった
その男性とタバコをふかしていても。
私の頭の中には、
『さて、どうするかな』
──しかなく。
ただ、不思議と、
事業の整理さえ終われば、
何とでもなるような、
そんな気がしていました。
……けれど世の中は、
そんなに甘くなく。
ようやく全てが片付き、
いざ転職活動を始めるも。
当然のごとく──
書類選考すら、
一社も通ることはありませんでした。

妻を初めて泣かせた日 【中編】
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