見出し画像

『リベンジ・キッチン』──不機嫌なナムル


 それは妻が脳出血で倒れて、
──まだ間もない頃の話。

 我が家の生活は、一変していました。



 家事全般を妻が担っていたこともあり、食事一つにしても、新しい形を模索する必要がありました。


 いざ『料理をする』と決意はしたものの、20年以上、包丁すらまともに触ったことのない私には──

 それはあまりに、無謀なことだったのかも知れません。



 前述した、例の──
あの『おどろおどろしい味噌汁』から、
すでに数日が経過していました。





妻のいる病院から帰る途中に、
スーパーへ立ち寄り、
私は晩ご飯の食材を探していました。

子ども達にも、大見栄を切って、
料理作りをする!と、
決意を表明したものの──


実は、まだまともな料理には、
辿りついていませんでした。

私は野菜が嫌いでしたが、
子ども達には野菜を食べさせないといけないという思いがあり、

スーパーでは、野菜コーナーを中心に見て回っていました。

ーーー


にんじん、ピーマン等、
野菜嫌いの私には、やや難易度が高い食材はやはり手が出ずに。


はて、どうしたものかと。
ノープランの私は、売り場で何にするかを考えあぐねていました。


その時は、すでに20時も回っており、
料理する時間が限られていました。


しばらくして野菜コーナーを見終わろうとした時、私の視界に"モヤシ"が入ってきました。


それを手に取りながら、私は、

なるほど!今日はこれか。

ようやく、その日の晩ご飯おかずを思いつきました。




それは野菜嫌いでも、
みんなが食べれる王道の野菜料理。



『モヤシのナムル』

しかも韓国風に辛く仕上げれば、
ご飯だって何倍でも食べれるという、
ダイエットには憎いメニュー。


さらに調理も短時間で済むという。

そのときの私には、
まさに一石二鳥の料理でした。


よって今晩は、決まりました。

【韓国風モヤシのナムル(キムチ入り)】



ーーー


子ども達が大量に食べれるようにと、
モヤシを3袋と、キムチ一瓶を購入しました。


家にはウェイパー、ニンニクチューブ、
一味唐辛子、ゴマ、ラー油、胡麻油があることは知っていました。

私は、さっそく家に帰り、
キッチンで、その調理に取り掛かることにしました。





──そのレシピ──


鍋でお湯を沸かして、モヤシを一気に投入。
──3分後には…もうグダグダ

水洗いで奇跡を期待するも…復活せず。

それをボウルに移し、

キムチ・ニンニク・胡麻油・
ウェイパー・唐辛子・ラー油・ゴマを一気に投入。


韓国料理は混ぜる


と聞いたことを思い出し、
全力でかき混ぜて完成!



調理時間:15分程度。
私の額からは、汗が滲んでいました。




それから──

調味料や食材が飛び散りまくった調理場を眺めながら、ふう、と一息つき。

私は少しだけ、満足感に浸っていました。



試食のつもりで、
ボールの淵についたゴマを、
指ですくって軽く舐めてみました──


!?

驚きました。

マジでヤバい辛さが舌に刺さり、
鼻から一気に強烈なニンニクの匂いが抜けていきました。


次に、
恐る恐るモヤシを一本つまめば──、


!?


そのモヤシは…
すでにモヤシにあらず…


絡まったキムチと融合した異様なヌメリ、口の中に広がる刺激臭と奇怪な歯触り。

それは、もはや…。


また、よくよく見れば、

ボールいっぱいに真っ赤に染まり、
モヤシとキムチが絡み合ったそのビジュアルは、まさにスプラッター映画。

それでも気を取り直し、
少し映えを意識しながら私は、

そのホラーナムルを、
きれいに皿へ盛り付けました。





『ご飯できたよー』
と、子ども達を呼んで、

それを食べてもらえば──

少しは、気を使うかと思いきや…


ーーー


長女
人間が食う物じゃない💢


長男
食べ物で遊ぶなって、言われたけど?



・・・


ーーー



このままでは、終われず💢


『リベンジ・キッチン』
──不機嫌なナムル【完】




『リベンジ・キッチン2』
──その段取りと謎の調味料
へ続きます。

※前回の話
──おどろおどろしい味噌汁が生まれて





▼この話のシリーズのマガジンはこちらからご覧になれます。



▼その他の話、全体構成【目次】はこちらからご覧になれます。

いいなと思ったら応援しよう!

何ごともお気楽に よろしければ応援とフォローをお願いします。 チップはクリエイターとしての活動費にいたします!