#45 大学教員の憂鬱 休講か補講か
大学教員は、たぶん、多くが学会に所属している。
「全員」とは言わない。
所属していない人もいるはずだからだ。
ただ、僕の周りでは、学会に所属していない教員にはほとんど出会ったことがない。
学会は遊びではない。
仕事である。
新しい知見を発表する場であり、知識を更新する場でもある。
一応、夜は地域貢献もする。
ただし、厄介なのは日程である。
たとえば、今年の前期には学会が三つある。
そのうち二つは平日開催だ。
しかも、場所は北海道と福岡だった。
日帰りでは、さすがに難しい。
朝のセッションは8時から始まるため、前泊も必要になる。
移動日を含めると、合わせて4日間になる。
そうなると、講義を休講にせざるを得ない。
休講
言葉にすると、ずいぶん軽い。
もちろん、学生は少し絶対に喜ぶ。
僕も学生のころは、かなり喜んだ。
けれど、大事なのはここである。
授業を一回休みにしても、その一回がなくなるわけではない。
どこかで取り戻さなければならない。
最近は厳しいのである。
それが補講である。
補講日を探す。
教室を探す。
学年の時間割と重ならないようにする。
自分の予定も合わせる。
これが、なかなか難しい。
候補日があっても、空き教室がない。
教室があっても、時間割にぶつかる。
時間割にぶつからなくても、自分の都合がつかない。
補講を入れられる時間は、思ったほど多くない。
そこで出てくるのが、オンデマンド配信である。
講義をオンデマンドにすれば、補講日を探さなくていい。
教室もいらない。
学生は、自分の都合のよい時間に視聴できる。
ここだけ見ると、とてもよい方法に見える。
実際、かなり助かる。
ただし、作る側はそれなりに大変である。
講義用のパワーポイントは、普段使っているものを使えばいい。
問題は、音声の録音である。
スライドごとに音声を録音していく。
必要なのは、気合である。
これが、意外と噛む。
そして、間違える。
話す順番を忘れる。
録音中に電話が鳴ることもある。
すでに問題だらけである。
録音が終わったら、動画として書き出す。
僕の環境では、MP4で出力すると音声がズレる。
そのため、WMVで出力し、それをPremiere Proに取り込む。
そこから編集である。
言い間違えたところを切る。
リテイクしたところを切る。
無駄な間を切る。
とにかく、切りまくる。
そして、間違いを見つけて、またリテイクである。
音声も、そのままでは少し聞きにくい。
コンプレッサーなどのエフェクターを使って、音を整える。
ときおり、音楽用ソフトのCubaseを使うこともある。
手をかけすぎかもしれない。
でも、これも性格である。
一つの動画が60分だとする。
完成までには、だいたいその3倍の時間がかかる。
まったく、割に合わない。
それでも、オンデマンドには意味がある。
補講日を無理に探さなくてすむ。
学生にも、見る時間を選んでもらえる。
だから作る。
ただ、授業が楽になるわけではない。
対面の一コマが、録音、編集、書き出し、配信設定に変わる。
授業が消えるのではなく、作業の形が変わる。
休講は、授業が一度止まること。
補講は、その一回を別の日に戻すこと。
オンデマンドは、その一回を動画に置き換えること。
似ているようで、ぜんぶ違う。
便利になった。
たしかに便利になった。
そのぶん、教員の作業は別の形で増えている。
そして僕は、いまPremiere Proを開きながらnoteを書いている。
編集から逃避しているのだ。
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