#40 大学教員の憂鬱 今、僕が教員に求めたい資質
最初に、ちょっと偉そうなことを書いてみる。
教員に必要な資質と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
大学教員は、とにかく仕事が多い。
研究がある。
教育がある。
そのほかにも、名前のつきにくい仕事がいくつもある。
でも、その中でも外せないものがある。
研究を実行する力。
教育を実践する力。
この二つは、やはり必要だと思う。
研究の力は、博士号を取るまでのあいだに、ある程度は鍛えられる。
でも、教育は少し違う。
本当に役に立った講義は、ただ教科書を読むだけのものではなかったはずだ。
難しい言葉を、そのまま並べるだけの話でもなかったはずだ。
初学者にもわかるように、本質をほどいて渡してくれる。
そういう講義が、あとに残る。
僕は、自分のボスによく言われた。
教科書をただ読んで、それを講義と言っているようではだめだ、と。
そんなものは、誰にでもできる。
難しい言葉だけで説明しようとするのも同じだ。
理解されない言葉で話すのは、時間の無駄だ。
そして、こうも教わった。
難しいことをやさしく。
やさしいことを深く。
深いことをおもしろく。
教育に必要なのは、知識の量だけではない。
知っていることを、相手に届く形に変える力なのだと思う。
研究についても、ボスから大事な5つのCを教わった。
Concentration 集中
Continuance 継続
Contribution 互助、貢献
Confidence 自信、信頼
Coexistence 共存
研究の話として聞いたけれど、あとから振り返ると、そのまま教員にも当てはまる気がしている。
ただ、ここにもう一つ、厄介なことがある。
大学教員は、大学の外で社会経験を積む機会が多い仕事ではない。
これは軽くない。
アカデミアの中だけで長く生きていると、視野が狭くなることがある。
自分では丁寧に説明しているつもりでも、相手には届いていないことがある。
大学の中に長くいるほど、そのずれに気づきにくくなる。
だからこそ、教員には、知識や実績だけではなく、自分の見え方を疑う力も要る。
そして、忘れてはいけないことがある。
大学教員を育てているのは、学生でもある。
教える側が、一方的に育てているわけではない。
学生の反応で気づくことがある。
伝わらなさで、自分の未熟さを知ることがある。
思いがけない質問で、説明の甘さに気づかされることもある。
教員は、教えながら育てられている。
大学教員に必要なのは、派手さではない。
よく知っていることだけでも足りない。
相手に届くように話せること。
続けられること。
信頼を失わないこと。
周囲と共に仕事ができること。
そして、自分もまた育てられていることを忘れないこと。
僕が教員に求めたい資質は、たぶんそういうものだと思う。
すごい人であることより、
きちんと届く人であること。
そのほうが、学生にとって、ずっと大きい。
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