#39 大学教員の憂鬱 新入生オリエンテーションの裏で、教員が少し疲れる驚きの理由
新入生オリエンテーション、という言葉は明るい。
新しい学生が来る。
キャンパスの空気が入れ替わる。
四年間の最初の数日が始まる。
外から見ると、そういう時間に見えると思う。
でも、教員の側から見ると、少し違う。
あれは一日で終わる仕事ではない。
案内だけでもない。
思っているより細かく、長く、気を使う仕事でできている。
たとえば、4月2日は保護者に向けて話をした。
新入生本人ではなく、その家族に向けて、大学での生活と、その先のことを説明する。
しかも、その委員になったと知らされたのは当日の朝である。
4月6日には、新入生に向けて60分の講義の予定も入っている。
つまり、話す相手が違えば求められる言葉も違う。
でも、どちらも同じ時期に重なる仕事である。
その間をぬって、講義で使う冊子の仕分けもする。
授業は、話すだけでは始まらない。
配るものがあり、揃えるものがあり、数えるものがある。
しかも、その冊子を作る費用は自費である。
そんなことがあるのか、と思う人もいるかもしれない。
でも、これが現実である。
新年度は、オリエンテーションだけで終わらない。
迎える仕事のすぐ先に、教える仕事が並んでいる。
しかも、そこにゼミや研究は入っていない。
時間割に見えているものだけが、仕事ではない。
4月は学会もある。
それも2つある。
学会の日程は、こちらの都合では動かない。
どうしても休講にせざるを得ない日が出る。
そうなると、今度は補講が増える。
始まりの季節、という言い方はきれいだと思う。
でも、教員の側にいると、始まりというより、いくつものことが一度に動き出す時期に近い。
新入生にとって、オリエンテーションは入口である。
けれど、教員にとっては、入口に立つだけでは済まない。
説明する。
案内する。
質問を受ける。
不安を拾う。
少し先まで見て話す。
それを、相手を変えながら続けていく。
その横で、授業の準備が進む。
時間割は待ってくれない。
研究も止まらない。
学会も近づいてくる。
しんどさは、行事が多いことだけではない。
切り替える間もなく、次の役割が来ることだと思う。
オリエンテーションという名前は整っている。
予定表の上では、きれいに並んでいる。
でも、中に入ると、かなり人間くさい。
誰かが迷わないように動く。
誰かが置いていかれないように見る。
わからない顔をしている学生がいれば、少し気にかける。
保護者の表情が固ければ、その空気も読む。
そういう小さなことが、ずっと続く。
華やかな仕事ではない。
けれど、雑にはできない。
迎えるための説明が続く。
そのすぐ横で、授業の準備が進む。
ゼミや研究も動く。
学会まで重なる。
息をつく場所がない。
たぶん、しんどさは、そのあたりにある。
新入生にとっては、一度きりの時間である。
でも、教員にとっては、毎年くり返される時期でもある。
同じように見えて、毎年少しずつ違う。
毎年、少しずつ疲れる。
それでも、その場に立てば、やはりちゃんと話そうと思う。
新入生オリエンテーションは、始まりの行事だ。
それは間違いない。
ただ、その始まりを支える側には、少しだけ別の時間が流れている。
明るい顔で立っていても、内側では、もうずっと前から新年度が始まっている。
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