裁量労働制・勤務間インターバル・つながらない権利(厚労省審議会分科会)
2026年5月13日に開催された労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会(第209回)議事録が公開されていますが、裁量労働制や勤務間インターバル制度や「つながらない権利」について労使委員から意見が述べられています。また公益代表委員から裁量労働制実態調査に関する意見もありました。
5月13日に開催された労働条件分科会
厚生労働省ウェブサイトに公開された労働働政策審議会(労政審)労働条件分科会(第209回)議事録によると、議題は(1)資金移動業者の口座への賃金支払制度について、(2)労働市場改革分科会等について(報告事項)でしたが、裁量労働制の対象拡大についても議論されています。
裁量労働制実態調査について
裁量労働制の本人同意と撤回
公益代表委の原委員(原昌登・成蹊大学法学部教授)は「労働者調査の本人同意・撤回の部分なのですが、撤回が加わった関係で、撤回について様々な記載があるのですが、これは、そもそも裁量労働制の適用の開始時点、同意を取る手続についてはあまり調べないという感じになるのでしょうか」と質問しています。
事務局の川口(厚生労働省)労働条件政策課長は「今回、2024年改正で、撤回についても様々な規定がされていますので、それは追加して調べます」と回答し、また「同意そのものについては、前回調査でも、どういう方法で同意を取っているかとか、そういう一定の事項は調べております。あるいは、同意をしなかった人がどれぐらいいたかとか、そういったことも調べておりますが、前回調査したことは今回も調査いたします」と付け加えています。
原委員は「前回とそろえることも重要かと思うのですが、撤回に関して、具体的に、例えば撤回の申出先とか、撤回後の配置・処遇に影響があったかを調べるのであれば、撤回よりもむしろ大事なのは同意の部分です」と述べています。
裁量労働制の同意に関する様々な状況調査
そして原委員は「最初の同意の部分で、同意しないことが、例えば同意を拒否しづらい雰囲気だったかとか、同意の手続で例えば使用者側からどういう説明があったかとか、そういった同意そのものに関して具体的に調べていただいて、プラス、撤回についても調べていただけるのはもちろん賛成なのですが、そもそも入り口の同意について、より具体的に、これは、調査項目が少し変わるかもしれませんが、本来はそこが大事だと思うのです。ですので、撤回に関して調べるだけでなく、同意の手続とか、同意に関する様々な状況について調べることを御検討いただけたらと思いました」と意見を述べています。
原委員の意見に対して川口労働条件政策課長は「今の点に関して申し上げますと、非常に重要な御指摘です。ただ、調査の手法上、同意をしなかった人、つまり、同意した人が適用労働者になっていて、結果的に同意しなかった人については、直接調査の手が及ばないところはありますが、同様の観点から、一度同意はしたのだけれども、撤回した方がいると。そういう場合に、なぜ撤回したのか、あるいは撤回はしていないけれども、撤回しづらい雰囲気があるとか、そういった同意しなかった理由を直接聞くことは難しいのですが、それに近いものを聞けないかということは、今、工夫しながら検討したいと思っています」と答えています。
同意を拒否しづらいと感じたか
さらに原委員は「多分、同意をした方はたくさんいらっしゃると思うのですが、同意を撤回する方はあまりいらっしゃらないのではないかという感覚があります。ですから、もちろん、同意した方が調査の対象だと思うのですが、そのときに例えば同意を拒否しづらいと感じたか、あるいは同意に際して、十分な説明が提供されたかとか、そういったことについては、同意をした方について聞けると思います。ですから、もちろん、調査の形から、同意をした方が前提だと思うのですが、そのときに、振り返っていただいて、同意せざるを得ないような雰囲気だったかとか、そういったことについて、もしあれば、重要な情報かと思いますので、調査に盛り込んでいただけたら、御検討いただければと思います」と。
なお原委員(原昌登・成蹊大学法学部教授)の専門分野は労働法全般、パワーハラスメントやカスタマーハラスメントなどのハラスメント法理、および労働市場の法政策。
裁量労働制の対象拡大について
使用者側委員の意見
使用者(経営者)側の加藤委員(加藤吏・トヨタ自動車株式会社人事部グループ長)は「労側(労働者側)から、一部企業では不適切な運用がなされているという御指摘があったと思うのですが、そういったことを理由にして制度そのものが否定されたり、規制を強化していくということではなく、現行制度の適正な運用を一層促すとともに、必要に応じて、働き過ぎにならないための仕組みを検討していくことが重要ではないかと考えております」と発言しています。
また使用者(経営者)側の古川委員(古川大・UAゼンセン会長代行)は「労働からの解放規制の強化について意見を申し上げたいと思います。(日本成長戦略会議)労働市場改革分科会においても、複数の有識者の委員の方から御発言があったと承知しておりますが、労働者の健康確保の実効性を高めるという観点から、勤務間インターバル制度の義務化、つながらない権利の法制化に向けた検討を行うべきであると考えております」と、勤務間インターバル制度の義務化と「つながらない権利」の法制化について意見されています。
労働者側委員の発言
労働者側の菅村委員(菅村裕子・日本労働組合総連合会<連合>総合政策推進局総合政策推進局長)は「裁量労働制の拡充(対象拡大)を(使用者側が)求めるねらいは、割増賃金を払いたくないからではないかとも思ってしまうところでございます。例えば、時間外労働が80時間であったとしても、裁量労働手当は時間外労働30時間や40時間分しか払っていないというケースがあると認識しています。真に労働者に裁量権が確保されていない実態もある中で、相当の業務量が与えられ、それを拒否できず、結果として長時間労働になり、なおかつ相応の処遇も伴っていない実態が現実としてあることを重く捉えるべきであると思っております」と述べています。
また労働側の佐藤委員(佐藤好一・全日本自動車産業労働組合総連合会副事務局長)は「裁量労働制適用者に裁量があるのか、ないのかという問題ですが、先ほどこれも使側(使用者側)委員から労使の知恵で改善しているとの発言がありました。そうした実態があるからこそ、裁量労働制の拡充や緩和をするべきではないと考えます。運用改善をしっかりと現場に根付かせていくことが重要ではないかと考えております」と発言されています。
勤務間インターバル・つながらない権利
議事録によると、労働者側の古川委員(古川大・UAゼンセン会長代行)は「労働からの解放規制の強化について意見を申し上げたいと思います。(日本成長戦略会議)労働市場改革分科会においても、複数の有識者の委員の方から御発言があったと承知しておりますが、労働者の健康確保の実効性を高めるという観点から、勤務間インターバル制度の義務化、つながらない権利の法制化に向けた検討を行うべきであると考えております」と、勤務間インターバル制度の義務化と「つながらない権利」の法制化について意見されています。
なお、議事録によると事務局(厚生労働省)は「次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします」と述べています。
裁量労働制の実態調査(再調査)が今年(2026年)7月~8月に行われる予定ですので、調査結果を厚生労働省が発表するまでは(急ぐ議案がなければ)労働条件分科会は開催されないのではないかと思います。
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