退職金の受け取り方で手取りが変わる|3つの分かれ道
退職が近づくと、「退職金やiDeCo、年金は、どう受け取るのが正解なんだろう」と気になってきます。実は、同じ金額でも“受け取り方”しだいで、手元に残るお金が変わることがあります。運用が上手いか下手かではなく、税や控除のルールの話です。
しかも2026年から、関係するルールが1つ変わりました。あてはまる方は、知っておくと慌てずに選べます。
最初にお断りしておくと、この記事は特定の商品をすすめるものでも、「こうすれば儲かる」という話でもありません。「どこに“分かれ道”があるか」を、お金の制度の数字を扱ってきた立場から、できるだけやさしく整理するだけです。
(筆者について)企業が将来払う退職金や年金の額(退職給付債務)を数理で計算し、その中身を説明する仕事を、コンサルタントとしてしてきました。年金や保険の数理(アクチュアリー)の準会員です。個人の損得に踏み込む助言はせず、年金・退職金・NISA・iDeCoのしくみを、一次情報で確かめながらやさしく整理します。特定の銘柄をすすめたり「もうかる」と断定したりはせず、自分で選ぶための“制度の知識”をお届けします。
【分かれ道① 退職金は「一時金」か「年金(分割)」か】
退職金は、まとめて受け取る(一時金)か、分割で受け取る(年金形式)かを選べる会社があります。ここで効いてくるのが、税の扱いの違いです。
・一時金で受け取ると、退職金向けの専用の税の優遇(退職所得控除)が使えます。
・年金形式で受け取ると、別のしくみ(公的年金等控除)が関わり、ほかの所得と合わせて課税されます。
どちらが有利かは、金額・ほかの収入・年齢で変わります。「一時金と年金を組み合わせる」選び方もあり、一律にこっちが得とは言えません。具体的な金額はご自身の状況で変わるので、税理士や勤務先の窓口で確認してください。
【分かれ道② iDeCoと退職金を「いつ」受け取るか(2026年からの新ルール)】
ここが今年の注目点です。ただしこれは、iDeCoや企業型DC(確定拠出年金)をやっていて、かつ会社に退職金もある方の話です。どちらか一方だけの方は、この分かれ道は当てはまりません。
iDeCoや企業型DCのお金を一時金で受け取るときも、退職金と同じ税の優遇(退職所得控除)を使います。ところが、iDeCoと退職金の受け取りが時期的に近いと、税の優遇枠を二重には使えず、片方の控除が目減りすることがあります。
2026年1月から、この「近い」とみなされる期間が広がりました。iDeCoなどを先に受け取り、あとから退職金を受け取る場合、これまではおおよそ5年空ければよかったところ、改正後はおおよそ10年空ける必要がある形になりました(通称「5年ルール→10年ルール」。正確な年数は条件で変わります)。
たとえば「60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で退職金を受け取る」のように間隔が近いと、控除の一部(重複する期間の分)が調整され、手取りが変わる可能性があります。受け取る“順番”と“時期”で結果が変わりうる、ということです。(逆に、退職金を先に受け取ってからiDeCoを受け取る場合は、別の・もっと長い期間のルールになります。)
自分のケースが当てはまるかは、勤続年数や受け取り予定で変わります。最新の改正内容と合わせて、税理士や勤務先の担当窓口で確認してください。
【分かれ道③ 公的年金を「いつから」受け取るか(繰下げ)】
公的年金は、受け取り始める時期を遅らせると金額が増えます。日本年金機構の制度上、1か月遅らせるごとに0.7%増え、たとえば70歳まで遅らせると+42%、75歳までで+84%になります(上限まで使えるかは生まれた年で変わります)。増えた分は一生続きます。
ただし、「待てば待つほど得」とは限りません。繰り下げを待っている間は、その年金を受け取れません。配偶者がいる場合の加給年金など、受け取れなくなるものが出ることもあります。さらに、年金が増えると税や社会保険料も増えますし、いつまで働けるか・健康状態とのバランスもあります。得かどうかは寿命や働き方しだいで、一概には言えません。具体的な損得は状況によるので、年金事務所や専門家に相談しながら決めるのが安心です。
【まとめ:早く知っておくほど、選べる】
3つに共通するのは、「早く知っておくほど選べる」ということです。受け取り方には、退職や年金の手続きが始まってからでは選び直しにくいものもあります。だから、むずかしい計算の前に「自分はどの分かれ道に当たりそうか」だけ先に把握しておくと、いざ相談するときに話が早くなります。
この記事が役に立ったら、スキをもらえると、次に書くテーマを選ぶ判断材料になります。退職金・年金・iDeCoなどお金の制度のしくみを続けて整理しているので、フォローすると新しい記事が届きます。
(免責)この記事は、制度の一般的なしくみをやさしく整理したものです。個別の投資・税務の助言や、結果(手取り・税額)の保証ではありません。具体的な金額・税額・最新の制度改正は、国税庁・日本年金機構などの公式情報や、税理士・社会保険労務士などの専門家でご確認ください。
自分の数字で、手取りの分かれ道を1枚にする
ここまでで「受け取り方で手取りが変わるしくみ」はつかめたと思います。次は、その地図に自分の数字を当てはめて、退職所得控除・所得税の速算・受け取る順番・繰下げの4つを1枚に並べて比べる番です。記入式のワークシートにまとめました。
※特定の受け取り方をすすめるものではありません。最終的な金額は必ず一次情報・専門家でご確認ください。
受け取り方の次に、退職前後の3〜5年では決め方が続けて出てきます。退職金の受け取り方から、退職した年の税金、その翌年の社会保険料、年金を受け取り始める時期まで——これらを順番と連動でひとつながりに通したい方には、全体を年表で設計した統合版もあります。
退職前後の「お金の決め方」ロードマップ(note・¥1,280)
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退職金は一時金と年金どっちが得?手取りで損しない4つの線引き
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