見出し画像

【番外編③】美容クリニックのスタッフは、9割が歯に課金していた

美容クリニックのスタッフが、
一番している美容と聞いて、何を想像するだろうか。

二重整形。
糸リフト。
ボトックス。
肌管理。

たぶん、そのあたりを思い浮かべる人が多いと思う。
私もそうだった。

でも、実際に美容クリニックで働いてみて、
一番驚いたのはそこではなかった。
私がいた美容クリニックで、
かなり多くのスタッフがしていたもの。

それは、歯の矯正だった。

え。
歯なの?

と思うかもしれない。
でも、本当に歯だった。

子どもの頃から矯正していた人。
大人になってから始めた人。
まさに現在進行形で矯正中の人。

時期や方法はそれぞれだったけれど、
体感としては、9割以上のスタッフが何かしら歯に手をかけていた。

きれいになりたい。

そのささやかな願望には、
わりと容赦なく値段がついてくる。

美容クリニックで働いて、
私はそれを嫌というほど知った。

では、実際にスタッフたちは何にお金をかけていたのか。

私が見た範囲で、書いてみようと思う。





1.一番多かったのは、歯の矯正だった

  
歯列矯正は高い。

きれいに全体を整えようと思えば、
100万円近くかかることもある。

時間もかかる。
お金もかかる。
痛そう。
面倒くさそう。

私の中では、かなり大きな決断だった。

でも、美容クリニックでは違った。

歯にお金と時間をかけることは、当然だった。

美容クリニックは、
お金も時間もかかる場所。

でも、私の想像していた金額とは、
桁が一つ、いや二つくらい違っていた。

私は美容が好きだった。

ただ、それは美容雑誌を読んだり、
『プラダを着た悪魔』を観て、
ミランダになった気でいる一般人の美容好きだった。

美容クリニックにいた人たちの本気度とは、
そもそも土俵が違っていた。

2.前歯4本をインプラントにする男性スタッフ

さらに驚いたのは、とある男性スタッフだった。

背が高く、清潔感があって、
いかにも美容クリニックにいそうな爽やかな青年だった。

その人が、ある日うれしそうに話していた。

「今度の休み、前歯4本、インプラントにするんだ」

前歯4本。

私は心の中で復唱した。

前歯を、
インプラントに、総入れ替え。

なかなかのパンチ力である。

事故に遭ったわけでもない。
大きな病気だったわけでもない。

見た目を整えるために、
前歯を4本インプラントにするらしい。

しかも、本人は明るかった。

社割で安く受けられると、
うれしそうに笑っていた。

私はそれを見て思った。

気合が違う。

こちらはドラッグストアで、
数百円高い美白成分入りの歯磨き粉を買うかどうかで悩んでいる人間である。

その横で、前歯4本を総入れ替えする話をされる。

世界が違う。

財布が
違う国に住んでいた。

もちろん、歯には人それぞれ事情がある。

だから、軽々しくどうこう言うつもりはない。

口元を整えることに、
数百万のお金をかけるのが当然。 

それが美容クリニックという世界だった。


3.ボトックスは、ほぼコンビニ感覚だった

次によく聞いたのが、ボトックスだった。

ボトックスは施術時間が短い。

ダウンタイムも比較的少ない。

だからなのか、
多くのスタッフがかなり気軽に受けていた。

「ちょっとエラ気になるから打とうかな」

「肩こりあるし、首まわりもすっきりさせたいからやっとこうかな」

「額、動くの気になるんだよね」

まるで、

「ちょっとコンビニ行ってくる」

くらいの温度感である。

私の「ちょっと」は、
せいぜい帰りにプリンを買うくらいである。

あの人たちの「ちょっと」は、
顔に針を打つ。

同じ「ちょっと」なのに、

こちらは甘味、あちらは医療行為。

美容クリニックの「ちょっと」には、
覚悟と課金がちゃんと乗っていた


4.目、鼻、人中、唇、豊胸。気になる場所は人それぞれ

目、鼻、人中、唇、豊胸。

そういった施術を受けているスタッフも、もちろんいた。

体感では、いわゆるプチ整形まで含めると、
6〜7割以上のスタッフが何かしらしていたと思う。

ただ、このあたりは人によってかなり違った。

目を大きくしたい人。
鼻筋を整えたい人。
唇をふっくらさせたい人。
人中を短くしたい人。
胸を大きくしたい人。

コンプレックスは人それぞれだった。

だから、施術内容にもばらつきがあった。

美容クリニックで働いていると、
人がどこを気にしているのかが見えてくる。

そして怖いことに、
自分の顔も前より細かく見るようになる。

ここ、もう少しこうだったら。
鼻、もう少し高かったら。
輪郭、もう少しすっきりしていたら。
肌、もう少しきれいだったら。

そんなことを考えるようになる。

まったく、厄介な職場である。

人のコンプレックスを見ているうちに、
自分のコンプレックスまで発掘されていく。

誰も掘れと言っていないのに。

私の中の余計な自意識が、
勝手にスコップを持って走り出すのだ。


5.肌管理と小顔は、もはや家賃だった

そして最後に、肌管理と小顔である。

これは、もはや家賃のようなものだった。

レーザー。
ピーリング。
イオン導入。
ボトックス。
脂肪溶解注射。
糸リフト。

本編でも少し書いたが、
糸リフトをメンテナンスのようにとらえているスタッフもいた。

私の感覚では、
「美しくなるためにする」
というより、

「今の若い姿を維持する」
「きれいであり続ける」

という意味合いが強かった。

美容は、一発逆転ではない。

日々の維持。

メンテナンス。

課金。

この言葉が似合ってしまう世界だった。

ボーナスが入ったら、あれをしたい。
次は肌管理を続けたい。
歯も直したい。
フェイスラインも気になる。
髪にもお金をかけたい。

そんな話が休憩中に出る。

聞いているだけで、財布が息切れする。

美容代が、もはや家賃。

あの場所では、
美容にかけるお金の桁が、私の感覚より1桁だった。

いや、2桁だったかもしれない。


6.そして私も、しっかり影響されている

ここまで書いておいて何だが、
私も人のことは言えない。

美容クリニックを辞めた今でも、
小顔の高周波治療には年に10万円以上使っている。

毎月のレーザーも、欠かさず通っている。

まったく、どの口が言っているのだろう。

あの頃は、
美容にお金をかけるスタッフたちを見て、
すごいな、怖いな、気合が違うな、と思っていた。

でも結局、私もその空気を少し吸ってしまったのだと思う。

鏡を見るたびに思う。

ここがもう少しこうだったら。
肌がもう少しきれいだったら。
フェイスラインがもう少しすっきりしていたら。

人間は欲深い。

いや、私が欲深いだけかもしれない。

美容クリニックは、
ただきれいな人たちが働く場所ではなかった。

きれいでいるために、
お金と時間を差し出せる人たちの場所だった。

そして私は、
それを少し遠くから眺めていたつもりで、
気づけば自分も財布を開いていた。



美容クリニックには、
お金のこと以外にも、
本編では書ききれなかった話があります。

きれいな世界の裏側。
看護師なのに、SNS撮影で踊っていた話。
そして、私が美容クリニックで病んだ本当の理由。

他の番外編はこちらです。
↓ 【番外編①】美容クリニックで働いて知った、きれいな世界の裏側

↓ 【番外編②】SNS撮影で踊り、看護師なのか何なのか分からなくなった話

そして番外編の最後に、
きれいな職場で、なぜ私はあそこまで削られていったのかを書きました。

↓ 【番外編④・完結】美容クリニックで病んだのは、仕事ができなかったからではない


美容クリニック編の全体の流れを読みたい方へ。
全12話はこちらにまとめています。

↓ 全話まとめはこちら


いいなと思ったら応援しよう!

白湯|地方を出たい女の本音 「この人、うまくいかない日もあるけど、なんとか生きてるな」 そう思っていただけたら、そっと応援してもらえるとうれしいです。 いただいたチップは、店主が次の記事を書く力に。 ときどき、売り子のあざらしのおやつ代になります🦭 その日は、責任をもって食レポします🍵

この記事が参加している募集