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60代のリアル|第2幕、第17話【実録・無謀な事務仕事】「安心して定年を迎えられるはずだったのに!」引き継げないVBAと私の葛藤


前回までのあらすじ

2026年7月17日、金曜日の夕方。課長から告げられたのは「システムリプレイスの一旦ストップ(事実上の撤回)」という衝撃的な言葉でした。

頭をよぎったのは、休み明けの7月21日(火)からびっしりと予定されていたシステム会社との打ち合わせのこと。

正社員たちは連日の残業に耐えながら、膨大な資料と課題を整理し、連休明けに向けて万全の準備を整えていました。

しかし、それらはたった一言で「すべて不要」となり、積み重ねた時間と努力は一瞬で無に帰してしまったのです。

「業務が変わる」という夢が打ち砕かれ、白紙になったスケジュールと使いづらい旧システムだけが取り残された現場。そこには、深い徒労感と今後の業務への大きな不安が広がっていました。



「安心して定年を迎えられる」はずだった

今回のシステムリプレイスには、現場の効率化とは別に、私個人としての密かな「願い」がありました。

これまで私は、日々の雑務や集計作業を少しでも楽にするため、Excel VBA(マクロ)を組み、業務の自動化を進めてきました。

しかし、自分で作った仕組みだからこそ、「自分が辞めた後、誰がこれをメンテナンスするのか」という引き継ぎの不安が常に頭の隅につきまとっていたのです。

だからこそ、新しいシステムが導入されると聞いたときはホッとしました。

手製のVBAで行っていた処理もすべてシステム側に取り込まれ、VBAを使わなくても回る現場になるはずだったからです。

「これならメンテナンスの心配もない。後任に負担をかけることなく、安心して定年を迎えられる……」

そう思っていたからこそ、7月17日(金)の白紙撤回は、私にとっても梯子を外されるような衝撃でした。

システムという形でのバトンタッチは叶わず、手作りのVBAはそのまま私の手元に取り残されてしまったのです。



押し寄せるバージョンアップと「プロパティ削除」の壁

「また自分が保守し続けなければいけないのか」
という落胆も束の間、さらに頭の痛い問題がのしかかってきました。

会社で使っているExcel2016を、近い将来Excel2024やMicrosoft 365へ移行する計画が進んでいたことです。

Officeのバージョンが変われば、これまで動いていたVBAがそのまま使えるとは限りません。通常業務をこなしながら、すべてのVBAを検証し、修正する作業が追加で発生することになります。

特に致命的だと感じたのが、ホームページに掲載するPDFファイルの「プロパティ削除」の処理でした。

ファイルの「プロパティ」とは、作成者名や更新履歴、ファイルの保存場所といった裏側のデータ(メタデータ)のことです。社外に公開する資料から個人情報や内部情報を消去するこの作業は絶対に欠かせません。

もちろん、会社のVBAコードやデータを自宅に持ち出すことはできません。

そこで週末、自宅のパソコン(Excel2024)を立ち上げ、プロパティ削除の処理コードをゼロから再現してテストしてみることにしました。

予感は的中しました。

セキュリティが強化されたExcel2024では、これまで使っていた記述方法だと「エラーも出ずに正常終了するのに、なぜかプロパティ情報が消えずに残ってしまう」という現象が起きたのです。

「やっぱり……バージョンアップしたら、今のVBAのままでは動かない」

目の前の画面で消えないプロパティを確認した瞬間、背筋が凍る思いでした。

ExcelやPDFなどのファイルには、画面に見えている文章や表だけでなく、裏側に以下のような情報が自動的に記録されています。

作成者名(パソコンのアカウント名や個人名)
最終更新者名
会社名・組織名
作成日時・更新日時
使用したパソコンのパス(保存場所のフォルダ名)

会社のホームページにPDFなどを公開する際、このプロパティに個人名や社内のフォルダ構成などの情報が残っていると、セキュリティや個人情報保護の観点から非常に危険です。

そのため、Webにアップする前にプロパティ情報を消去(削除)する作業が必須となります。

旧バージョンのExcel(Excel2016など)のVBAではこの削除処理が動いていたものの、近年のセキュリティ強化(Excel2024やMicrosoft 365など)により、従来のVBAコードでは「処理自体はエラーにならず正常終了するのに、実際にはプロパティ情報が削除されずに残ってしまう」という現象が起きます(自宅のExcel2024で検証された通りです!)。



もう全部投げ出したい!

「何でパートの私が、ここまで悩まなきゃいけないの……?」

自宅の画面を見つめながら、込み上げてきたのは深い疲弊感とやり切れない怒りでした。

私はプロのプログラマーでもなければ、責任を負う立場にある正社員でもありません。ただのパート社員です。

日々の業務を少しでも効率化しようと工夫して作ってきただけのVBAなのに、システムの白紙撤回によって、その保守もOffice移行に伴うコードの書き換えも、すべて自分の手元に残されてしまいました。

本当ならシステム化でスマートに業務が整理され、後腐れなく気持ちよく定年を迎えるはずでした。それが一転して、重い課題ばかりを押し付けられた格好です。

「責任もないのに、もう全部投げ出したい!今すぐ仕事を辞めたい!」

喉まで出かかったその本音を、必死で呑み込みました。

定年までのカウントダウンを意識する中で、本来負う必要のない重荷と「無事に引き継いで辞められるのだろうか」という割り切れない不安だけが、残された日々に暗い影を落としています。



🌿次回予告

システムリプレイスの迷走、そして白紙撤回——。 職場を揺るがしたあの騒動と、それに伴うVBAの葛藤についての話は、一旦ここで一区切りとなります。

しかし、私が向き合わなければならない現実の波は、職場だけに留まりませんでした。

仕事の混乱に心をすり減らしながら、お見舞いに向かった病院で、母の容体に異変が・・・

私はこの先どう向き合っていけばいいのでしょうか?

つづく


▼ 第18話はこちらです。



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