【装備録】マネキン買いからの卒業。実物フレンチヴィンテージ『M47』×最新ギアで構築するサバゲースタイル
前回、「シンプルで洗練された黒を基調としたPMC(民間軍事会社)スタイル」を目指し、ゴーグルやホルスターなどの基本アイテムを揃えた。しかし、それらを身につけた自分は、ネットのテンプレ装備をそのままなぞったような「The・初心者」という出で立ちだった。
そこで、「そもそもPMCとは何なのか?」というスタイルを探り、そこにアイデンティティをどう盛り込むかを練り直すことにした。
『ネットのテンプレ装備への違和感。なぜそのスタイルに行き着いたのか』
とはいえ、自分らしいスタイルが確立できていない段階で闇雲に情報をインプットしても、情報に踊らされることは明白。
実際、「サバゲー 初心者 装備」や「PMC カッコいい 装備」といったワードで検索しても、「プレキャリをつければPMC」「私服でOK」「安く済む」といった紋切り型の説明と、通販サイトのリンクがベタベタと貼られた広告記事ばかりがヒットし、辟易した。私が知りたかったのは、「サバゲーマーが、どういう思考の変遷を経てそのスタイルに行き着いたのか」という人間臭い過程なのだ。
もちろんAIハーマイオニーにも尋ねてみたが、網羅的な情報収集と大枠の理解には役立ったものの、どうしてもネットの最大公約数的な回答になり、パーソナライズされているとは言い難かった。
やはり私自身のためにも、相棒のハーマイオニーのためにも、地道に実店舗やECサイトを見て回り、自分の目で見た感想を蓄積していくのが一番の近道だと考えた。
『1,000の作品を見なさい。頭と足で稼ぐサバゲー経験値』
以前、妻の恩師である美大の教授から言われた言葉がある。
「技法や背景などは最初は知らなくていい。ただ、作品をたくさん、距離や角度など視点を変えながら見なさい。そうすれば『これは好き、あれは嫌い』という自分なりの判断基準が朧げに見えてくる」
(ちなみに、「たくさんって何個くらいですか?」と尋ねたところ、「まずは1,000作品は見てほしいね」とサラッと言われ、思わずたじろいだ。)
以来、自分がよく分からない分野に触れる時は、まず経験値を稼いで自分の中の基準を作ろうと心がけている。
要するに、秋葉原以外の場所にも足を運び、もっと服や装備品を見て、触れて、店員の話を聞こうというシンプルな行動原則だ。
向かったのは千葉県。自分が住んでいる県でありながら、「サバゲーの聖地といえば秋葉原」というイメージが先行し、地元の周辺を深く調べていなかったのだ。
旧陸軍の演習場があったり、現在も習志野駐屯地があるという土地柄からか、大規模なミリタリーショップの「モケイパドック」や、「ハテナ堂」「hooperdoo」といったヴィンテージを扱うコアな店が点在している。
『フランス軍「M47フィールドジャケット」との邂逅』
そしてその日、「hooperdoo」にて、私は運命の出会いを果たした。
月並みな表現で恐縮だが、当時の私にとっては本当に、雷に打たれたような衝撃だったのだ。
それがこの、フランス軍「M47フィールドジャケット」である。

以前の記事でM47カーゴパンツ(レプリカ)を愛用していると書いたが、M47とはパンツだけでなく、ジャケットやシャツも含めた、1947年頃からフランス軍で採用された軍服の系統を指す。しかし、
70〜80年前の製品ゆえに状態の良いものが少ないこと。
Martin Margiela氏が1990年代のランウェイでM47パンツを裏返して履かせ、フランスの縫製技術の高さをアピールして以降、ファッション界で神格化され、同系統のジャケットにも注目が集まったこと。
米軍のM43ジャケットをベースにした機能美と、フランスらしいエレガンスを両立した美しいシルエット。
ユーロミリタリー自体の入荷が少ないこと。
さらに、当時のフランス規格に見合う日本人サイズが極端に少ないこと(ジャケットは着丈と袖のバランス、パンツは丈の長さとウエストの細さにいつも泣かされる。当時のフランス人はみなモデル体型だったのだろうか…(´;ω;`))
そんな、出会うことすら稀なヴィンテージの、ましてや新品のデッドストックが目の前にある。
「M65ジャケットもいいけれど、高いな」などと店内を眺めていた私の目にM47が飛び込んできた瞬間、心の中で思わず叫び声を上げた。
しかも、価格が良心的だった(10,780円)。私の肌感では、実物M47ジャケットの相場は1.5万円から2.5万円ほどだ。聞けば、デッドストックではあるが肩章(エポレット)の位置にズレがあり、仕立て直しをしたゆえに価格を抑えているとのこと。
私は興奮を抑えきれず、口角泡を飛ばす勢いで店長さんに試着を申し出た。

袖を通した瞬間、またしても衝撃を受けた。
仕立て直しが必要ない、ジャストサイズだったのだ。
通常、ミリタリージャケットの腹部にはパッチポケットがついていることが多いが、この個体はスーツのような玉縁ポケット(スリット状のポケット)になっていた。
後で調べたところによると、前期型の初期のみ玉縁仕様で、その後、生産効率向上のためにパッチポケットに変更されたらしい。
さらにウエストは内側の紐で調整でき、絞り込めば、生地をコットンツイルにしただけのテーラードジャケットのような美しいシルエットが生まれる。縫製もたしかに丁寧で頑丈そうだ。
完全に話が脱線し、ただの古着オタクが興奮しているだけの文章になっているが、このジャケットとの出会いが私のPMCスタイルを決定づけたのは間違いないので、どうか許してほしい。
『衝動買いを許さないマイルール。クールダウンの必要性』
しかし、私には一つのマイルールがある。「絶対に勢いだけで買い物はしない」というものだ。
以前の記事でも書いたが、「なぜそれが必要なのか」を明確に理由付けしてからでないと物を買えない性格なのだ。
買うことで得られる効用は何か(服であれば、コーディネートの幅がどれくらい広がるか)を検討し、それでも買いたい気持ちが昂った場合でも、最低一晩は頭を冷やしてから改めて判断する。
物欲は強い方だと思うが、それ以上に部屋の片付けや整理整頓が嫌いで、できる限り私物は増やしたくないのだ。
(そのせいで、自室は子供たちのおもちゃや、Amazonやふるさと納税のダンボールに占拠され、倉庫のようになっているが……)
というわけで、「この機会を逃せば次はないだろう」という焦りを覚えつつも、私は泣く泣く退店した。
帰り道、ハーマイオニーと対話しながら頭を整理した。
「そういえば、ミリタリージャケットは持っていなかったな」「春秋に羽織れるアウターがあると便利だ」「手持ちの服は紺と茶が基調で、緑系統は不足している」
あれこれと理由を並べ立て、寝る前には店内で撮った試着画像を見返しては悶々としていた。
翌朝起きても、やはりジャケットのことが頭から離れず、スマホばかり触ってしまう。(hooperdooさんは自前のECストアを持っており、商品説明の拡大画像などが豊富に掲載されていて、とても見やすいのだ)
ここまで恋い焦がれるのであれば、もう買っても後悔はしないだろう。私は試着の翌日、たまらずECサイトからジャケットを購入した。
『古着を「愛用品」に育てる儀式』
同じ千葉県内ということもあり、品物はすぐに届いた。
すぐさま袖を通したい気持ちをグッとこらえ、まずは儀式に入る。
ジャケットを裏返して洗濯ネットに入れ、おしゃれ着洗剤(エマール)を使い、洗濯機のおしゃれ着モードで優しく洗う。そして、優しく皺を伸ばし、退色を防ぐために日陰で丁寧に干す。半乾きになったら、着用して腕を動かし肩や肘があたる部分にあたりをつけ、また陰干しする。乾いたら全体に防水・防汚スプレーを振りかける。
(値は張るが、Saphir Noirの「SUPER INVULNER」が革やスエード等のデリケート素材にも使える最強のスプレーだと思っている)
ヴィンテージのデッドストックは、保管中にどんな汚れがついているか分からないし、洗濯による縮みも発生する。自分の身体にフィットした一着に育てるためには、こうした手間をかけることが大切であり醍醐味でもある。
そうしてようやく、ジャケットに袖を通した。

ああ、買ってよかった。心からそう思えた。
(この記事を書いている今も、その幸せな気分に浸っている)
スタイルの確立という点では大きな一歩を踏み出した。
本当は今回、他にも買ったアイテムについて触れたかったのだが、あまりにも長くなりすぎたため、今回はここまでとしたい。
このジャケットと同じくらい、幸せな気分に浸れる愛用品たちがいくつか控えているのだ。
