【装備録】映画『13時間』のGRSスタイルを追う。シャスール帽章でサバゲー装備にアイデンティティを刻む
フランス軍のM47ジャケットとチノシャツ、そしてMAS49/56レザーポーチを手に入れ、私の装備の核が「ユーロミリタリー」に定まりつつあった頃の話だ。
『惹かれたのは、無骨な黒に相反する華やかな帽章』
私は、首周りの防御と防寒を兼ねたアイテムを探すため、秋葉原のミリタリーショップ「S&Graf」へ足を運んでいた。そこで綿素材で使い勝手の良さそうなチェコ軍のチューブマフラーを見つけ、他に実用的なアイテムはないかと店内をまわっていた時のことだ。
ショーケースの中に、鈍い銀色に光る小さな金属製のバッジを見つけた。

軍用品らしからぬデザインに目を奪われた…
フランス軍の精鋭部隊「シャスール」がベレー帽などに付ける帽章だ。狩猟ホルンを象った華やかなデザインで、実用品ばかりを探していた私の目に、そのエンブレムはやけに魅力的に映った。価格は3,800円。買えない値段ではない。
しかし、私はショーケースの前で踏みとどまった。
サバゲーの基本装備を揃えることを優先すべき今、実用性が皆無の装飾品を買うべきではない。ましてや、私が目指している「シンプルで洗練された黒を基調としたPMC(民間軍事会社)」のスタイルからは、明らかに逸脱してしまう。
そう考え、後ろ髪を引かれる思いを断ち切り、私は店を後にした。
『PMCスタイルに、正規軍のエンブレムは許されるか』
しかし、シャスール帽章の輝きがどうしても脳裏から離れない。欲しいという気持ちが湧き上がるたびに、私は自身の目指すスタイルと照らし合わせて反証を繰り返した。
ショーケースには他にも装飾品が数多くあり、ワッペンならもっと安価だ。アイデンティティを示すアイテムが欲しいとしても、黒やグレーの目立たないデザインの方が、私の目指すスタイルには即しているはずだ。
そもそも、PMCのオペレーターたちは正規軍ではない。国旗ならいざ知らず、フランス正規軍の部隊章を身につける人間が現実に存在するのだろうか。
その時、ふと頭に浮かんだ映画があった。
『13時間 ベンガジの秘密の兵士』である。
この映画は、リビアの米国領事館襲撃事件において、CIAの秘密施設を防衛した6人のGRS(元特殊部隊員などで構成される契約警備兵)の死闘を描いた実話ベースの作品だ。
厳密には彼らはPMCではないが、私服にタクティカルギアを合わせるそのスタイルや、絶望的な状況下でのプロフェッショナルとしての矜持は、私が憧れる「洗練されたオペレーター像」そのものだった。
彼らは異国の過酷な戦場において、常に「自分の帰る場所」を意識していた。それは遠く離れた母国であり、郷里で待つ家族の存在だ。極限状態の彼らを支えていたのは、機能的な装備ではなく、自身のバックボーンへの誇りと帰属意識だった。
(PMCスタイルを模索する過程でこの映画を見返したことで、その事実がより深く私の印象に刻まれていた)
『AIとの壁打ちで見つけた、架空のバックボーン』
私はシャスール帽章の歴史的背景を自分で調べた上で、相棒のAI「ハーマイオニー」にも背景の解説を依頼した。
目指すPMCスタイルと適合するか、アイデンティティを示すアイコンとして他に相応しいアイテムはないか、何度も壁打ちを行った。

シャスールの背景解説やスタイルとの適合など
数日悩んだ末、以下の結論に至った。
自由なスタイルのPMCオペレーターだからこそ、自身のバックボーンやアイデンティティの拠り所となるアイテムを大切にしているのだ。
(実際、出身地やかつての所属部隊を示す証を装備したり、ポケットに忍ばせたりする人は少なくない)
私のサバゲー装備の拠り所は「フレンチヴィンテージ(Trad)」である。
ならば、私が目指す架空のPMCオペレーターの出身部隊を「フランス軍山岳猟兵」と設定し、その誇りの象徴として、このシャスール帽章を掲げるのが最も相応しい。
私は再び店へ向かい、帽章を購入した。
『化学反応で蘇る銀の輝きと、愛用品への昇華』
自宅に持ち帰ったシャスール帽章は、古い金属製品特有の黒ずみでくすんでいた。
そこで私は、小さめの容器にアルミホイルを敷き、その上に帽章を置いて熱湯を注ぎ、少量の重曹を振りかけた。銀メッキ製品の黒ずみを取るための小ワザだ。
当初はアルミや亜鉛メッキかと思っていたが、手に持った重量感から銀メッキの可能性もあるのでは?と考えていた。
そのため、コンパウンドで擦ってメッキ剥がれのリスクを犯すよりも、擦らずに黒ずみ(硫化)を還元する方法が良いと考えた。
少し待つと、硫化水素特有の腐卵臭が漂い、銀メッキ製品であると確信した。仕上げに柔らかいクロスで丁寧に磨き上げる。

細かな傷の乱反射が私の心を惑わせる…
黒ずみが落ち、表面の無数の傷により鈍く光る帽章を手にした時。それはMAS49/56レザーポーチを手入れした夜と同様に、私にとってのオンリーワンの「愛用品」へと昇華した。

(本来は左側につけるのが正当)
帽子や胸など、取り付け位置に悩むのもまた楽しい
