最終回の後に第1話を見返して震えた。僕が『刑務所のルールブック』に心掴まれた理由
人気ドラマ『賢い医師生活』のスタッフが贈る『刑務所のルールブック』をレビュー。スーパースター投手が過剰防衛で収監されるという不条理から始まる物語は、笑いと涙、そして「麻薬のリアル」という残酷な現実を突きつける。最後に明かされる「第1話の正体」に、あなたもきっと驚くはず。僕が感じた、このドラマの「賢い」楽しみ方を綴ります。
12月に入り、それまで観ていた『ホテルデルーナ』の長編ファンタジーなラブコメから一転、少し渋めの作品をみようと思っていた。
▼前回視聴した『ホテルデルーナ』のレビュー
そこで「刑務所モノ」に手を出そうと思い『刑務所のルールブック』を観る事にした。
出演にパク・ヘスとチョン・ギョンホの名前があったので、彼らが起こす化学反応にも期待しての視聴だ。
▼以前観たパク・ヘス出演作品
▼以前観たチョン・ギョンホ作品
なお、ここからのレビューにはネタバレが含まれているので、未視聴の方は気をつけて欲しい。
■華やかなキャスト、しかしタイトルの「ギャップ」に驚く
(あらすじ)
ネクセン・ヒーローズのスーパースター投手、キム・ジェヒョクは、妹が襲われていた際に相手を返り討ちにした。しかし、それが「過剰防衛」と見なされ、一審で懲役刑を言い渡される。スターの座から一転、刑務所に収監されることになったが……。
(主人公絡みのキャスト)
キム・ジェヒョク: パク・ヘス
イ・ジュノ: チョン・ギョンホ
キム・ジホ: クリスタル
キム・ジェヒ: イム・ファヨン
(主な囚人)
キム・ヨンチョル: キム・ソンチョル
キム・ミンチョル: チェ・ムソン
カン・チョルドゥ: パク・ホサン
コ・パクサ: チョン・ミンソン
ユ・ハニャン: イ・キュヒョン
ユ・ジョンウ: チョン・ヘイン
(レビュー)
まず、本作品はキャストが非常に豪華だ。パク・ヘスとチョン・ギョンホはもちろん、キム・ソンチョル、チョン・ヘインといった有名どころに加え、脇役の顔ぶれも凄い。そのせいで主なキャストのリストがいつもより長くなってしまった。
しかし、タイトルには若干のギャップを感じた。
邦題の『刑務所のルールブック』は、少しシリアスな比重が高い印象を受ける。最初は僕も「野球選手の収監時の苦労話かな」と思っていた。だが、原題を見ると『슬기로운 감빵생활(賢い監房生活)』。
「あ、『賢い医師生活』的なやつか!」と、タイトルを見て拍子抜けした。つまり、コメディ寄りなのだ。
■刑務所という名の「舞台」で繰り広げられるコント
『賢い医師生活』のように、ストーリーは時折シリアスでありながらも、かなり緩い雰囲気で進行する。正直に言えば、刑務所生活というよりも「刑務所という場所を借りたコント」のようにも感じた。
実際に、3話目では映画『ショーシャンクの空に』をモチーフにしたであろうシーンがあった。脱獄をにおわせておき、聖書の中から取り出すストーンハンマー。しかし、実は監獄では食べられないカップ麺を食べるために給湯器のリミッターを壊すオチ。
実際の刑務所は罪人が収監されている場所だ。同居による情が湧くとしても、まともな人はそう多くないはず。だが、なぜかジェヒョクが収監された部屋には変な人の割合が少ない。むしろ序盤を抜けると、ほとんどが冤罪や巻き添えで収監されているため、リアリティはやや薄く感じた。
また、韓国ドラマ「あるある」だが、主役がスーパーキャラだ。ある程度ダメな要素はあるものの、基本的にはハイスペックで金に困らない。つまり、主役側が問題を解決できるカードを常に持っている。さらに今回は野球のスーパースターという設定なので、周囲が勝手に応援してくれるオプション付きだ。「そんなの普通あり得ないし、これだと刑務所生活も他の人より辛くないんじゃ……」と冷めた視点で見てしまう部分もある。
そういった意味では、この作品にはある種の「割り切り」が必要だ。
刑務所はあくまで題材。その舞台を用いたコメディドラマだと思えば、役者の演技に裏打ちされた面白い作品として楽しむことができる。シナリオの展開自体は、ひとつひとつが非常に秀逸だ。
■キャラクターたちの多層的な魅力
主役のキム・ジェヒョクは、自身のストーリーを軸にしながらも、他の収監者たちの「ナビゲーター」的な役割を担っている。彼自体のキャラクター性は若干薄めだが、人情に厚く、のぼーっとして鈍臭そうに見えて、実は感情を表に出さずに策を練るタイプだ。
彼は必ず部屋の中で『三国志』を読んでいる。これにより視聴者は彼に「劉備玄徳」を重ね合わせ、彼がどんな悪者であろうと仲間を裏切らない人間であることを暗に理解する。
そして、親友イ・ジュノを演じるチョン・ギョンホ。
彼の演技は『賢い医師生活』や『イルタ・スキャンダル』でも見てきたが、ツンデレで非常に面白い。今回はジェヒョクの親友としてだけでなく、兄弟や仲間に対するアプローチが光る。「大丈夫か?」と思うほど激しくクッションをぶつけるような演技もあり、もはやコントであることを分かった上での振り切りようは、鈍いジェヒョクと対照的で良いスパイスになっていた。
それ以上に、同部屋の仲間たちのストーリーが濃い。
性犯罪者、詐欺師、いかさま賭博師、麻薬中毒、ヤクザ、横領したサラリーマン、部下暴行死の罪を着せられた大尉……。一人ひとりの物語を織り交ぜる手法は、まさに『賢い医師生活』に近い。
■「地獄」を突きつけるリアリティの瞬間
刑務所内での仕事や食事、懲罰房の描写など、生活風景は非常に立体的で趣がある。だが、物語が終盤に差し掛かり、出所シーンが描かれるようになると、このドラマは単なる「美談」ではない顔を見せる。
例えば、「カイスト」ことカン・チョルドゥ。明るく過ごしていた彼だが、息子への臓器移植を申し出た際、当の息子から面会を拒絶される。
さらに象徴的なのが「ヘロリン」ことユ・ハニャンだ。ソウル大薬学部卒の秀才でありながら麻薬に手を出し、服役中は禁断症状に耐え抜いた。しかし、出所した直後、誰も迎えに来ていない寂しさに負け、ふとした隙に再び麻薬に手を出して逮捕されてしまう。これは、麻薬中毒の恐ろしさを敢えてストーリーに押し込んだ、作者からのメッセージだと僕は思った。
刑務所での出会いは偶然であり、シャバに出ればアカの他人だ。
そんな「離別の不条理」を描きつつも、一方でイ・ジュヒョンが、かつて慕った「オヤジ」に再会しに来るシーンは、シナリオの巧みさを感じさせた。
チョン・ヘイン演じるユ大尉については、最初から「冤罪だろう」と確信していた。なぜなら、あのチョン・ヘインだからだ(笑)。『D.P.』で見せたような、あの人の良さそうな彼が人殺しのはずがない。(映画『ベテラン』では悪役にもチャレンジはしているが)
予想通りではあったが、ラストシーンで再審請求が許可された際の彼の嗚咽は、さすがの演技力で引き込まれた。
■最後に気づいた「最高の伏線」
刑務所設定の無理やりさはさておき、人間ドラマとして観るには非常に面白い作品だった。
そして見終わって気づいた、ある「発見」がある。
第1話をもう一度見返してみて欲しい。冒頭に「10月」と記載がある。
初見では刑務所に入る前の試合だと思っていた。しかし、よく見るとジェヒョクは「右」で投げているのだ。
もともと左投げだったジェヒョクは、刑務所生活で左肩を壊し、右投げに転向した。つまり、あの冒頭のシーンは「2018年10月」、つまり物語の結末だったのだ。
僕たちは、彼の物語のラストを最初に見ていた。
それに気づいてもう一度冒頭を見返すと、「ジェヒョク、本当にお疲れさま」という気持ちがこみ上げてきて、なんだかジーンとしてしまった。
不条理な場所で、それでも「賢く」生き抜こうとする人々の物語。
皆さんは、どう思いましたか?
コメント・フィードバックあればお願いします。
💡 ドラマで学ぶ『刑務所のルールブック』の韓国語
せっかく韓国ドラマを毎晩観るなら、ただストーリーに浸るだけでなく語彙も泥臭く拾い上げて自分の血肉にしたい。本作の原題や、ストーリーの核となる「刑務所・法務用語」は、漢字語の仕組みやニュアンスを知ると一気に解像度が上がる。学習の小ネタとしてチェックしてみてほしい。
まずは原題のタイトルから紐解いていこう。
原題:슬기로운 감빵생활(直訳:賢い監房生活)
슬기로운(スルギロウン):「賢い、聡明な(슬기롭다)」の連体形
감빵(カムパン):監房、刑務所(俗語・スラング的な表現)
日本語の邦題『刑務所のルールブック』は少しシリアスな印象を与えるが、原題は『賢い医師生活』に連なる「賢い」シリーズの一つ。このタイトル通り、過酷な刑務所を舞台にしながらもどこかコミカルで人間味あふれる日常が描かれている。
その他、作中で頻出する「刑務所・司法用語」や、主要な登場人物の韓国語表記をまとめた。ドラマの独特な世界観と紐づけて覚えると記憶に残りやすい。
主要人物・役名
キム・ジェヒョク:김제혁(パク・ヘス:박해수)
イ・ジュノ:이준호(チョン・ギョンホ:정경호)
キム・ジホ:김지호(クリスタル:정수정)
カン・チョルドゥ(カイスト):강철두 / 카이스트(パク・ホサン:박호산)
ユ・ハニャン(ヘロリン):유한양/해롱이(イ・キュヒョン:이규형)
ユ・ジョンウ(ユ大尉):유정우/유대위(チョン・ヘイン:정해인)
刑務所・司法用語
監房 / 独房:감방(カムパン) / 독방(トッパン)
収監:수감(スガム)
出所:출소(チュルソ)
移送:이송(イソン)
懲罰房:징벌방(ジンボルバン)
冤罪(濡れ衣):누명(ヌミョン)
再審:재심(ジェシム)
麻薬:마약(マヤク)
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