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「大胆な楽観主義」が次の成長株を見つける——Baillie Gifford CEOが語る長期投資の哲学

インデックス投資の普及が著しい現代において、アクティブ運用の旗手として120年以上の歴史を持つスコットランドの資産運用会社Baillie Giffordが、独自の存在感を発揮し続けている。同社のCEO、Tim Campbell氏は、Barron's誌のインタビューで、パッシブ運用が市場の健全性に与えるリスクや、次世代の成長企業をいかに見つけるかについて率直に語った。

運用資産約2,600億ドル(約26兆円)を擁する同社の投資哲学は、「慎重な楽観主義」ではなく「大胆な楽観主義」にある。本稿では、そのアプローチと具体的な投資判断の軸を整理する。


1. パッシブ運用が市場に何をもたらしているか


1-1. 公開市場の50%超がパッシブに

Campbell氏は、まず、公開市場の構造的な変化に懸念を示す。「現在、公開市場の50%超がパッシブ運用に支配されており、そこにアルゴリズム取引やファクター系投資を加えると、裁量的な意思決定を行う投資家の割合は劇的に低下している」と指摘する。

公開市場の本来の役割は、貯蓄資本と優れたアイデアを結びつけ、経営チームが長期的なリスクを取って事業を成長させることを支援することにあった。しかし、株主の多くが「顔のない」存在になりつつある今、その機能が静かに損なわれつつあるという。

1-2. 「質の高い株主」の価値を示す研究

George Washington大学のCunningham教授の研究によれば、少数の銘柄を長期にわたって大きなポジションで保有し、経営陣と真剣に対話する「質の高い株主」を多く持つ企業は、そうでない企業と比べて数十年単位で年率3.4%のアウトパフォームを達成しているという。

Campbell氏はこの数字を重視する。「3.4%というのは、長期で見れば膨大な差になる。質の高い株主が経営判断に与える影響は、想像以上に大きい」。

1-3. 上場を嫌う企業が増えている理由

こうした環境変化を受けて、近年は「できる限り上場しない」という選択をする優良企業が増えている。資本調達はプライベート市場でも十分に可能となり、パッシブ主体の株主構成に組み込まれることへの抵抗感も高まっている。Campbell氏は、「経営陣にとって、株主が誰なのかわからないという経験は、あまり充実感のあるものではない」と語る。

2. Baillie Giffordの投資哲学——「大胆な楽観主義」とは何か


2-1. 「何が正しくなりうるか」を問う思考法

同社がアマゾン、テスラ、Nvidiaといった銘柄を早期から保有し、長期的に大きなリターンを得てきた背景には、「何が間違いうるか」ではなく「何が正しくなりうるか」を起点に思考するという姿勢がある。

Campbell氏は、「投資業界には『慎重な楽観主義』という言葉がある。しかし、実際は、大きく成功した企業に対して我々が犯しがちな最大のミスは、楽観性が足りなかったことだ」と振り返る。

2-2. 下落局面こそ長期投資家の本領

同社が過去20年で最大のアルファを生み出した上位10銘柄を振り返ると、すべての銘柄が少なくとも1回、30%以上の下落を経験しているという。中には複数回そうした局面を経た銘柄もある。

アマゾンが、Amazon Primeを発表した際、市場は近く赤字を出すとして株価を大きく売った。iPhoneを発売したアップルも、その後1年間で株価が半値以下になった。テスラは上場後の数年間、市場で最も空売りされた銘柄の一つだった。

「我々がこれらの企業を支え続けられたのは、彼らが何をしようとしているのかを理解し、困難な意思決定に寄り添う株主であり続けたからだ」とCampbell氏は述べる。

2-3. 「売り時」の判断基準

長期投資家にとって難しいのは「いつ売るか」だ。Campbell氏はそのアプローチをこう説明する。「最初に投資した理由に立ち返ること。その会社がその道筋から外れているなら、自分自身に正直になってポジションを手放す必要がある。そして、そのミスから必ず学ぶこと」。

ただし、道筋からの逸脱がすべて悪いわけではない。Netflixが映画の配信方法を根本から変えたとき、市場は否定的に反応したが、それはむしろ正しい方向への転換だった。判断の難しさもまた、長期投資の本質的な部分だ。

3. プライベート市場戦略——AnthropicとSpaceXへの確信


3-1. 成長曲線の「最も急な部分」を捉える

Campbell氏によれば、同社がプライベート市場への関与を強めている理由は明確だ。「我々は成長曲線の最も急な部分にクライアントを乗せたいと考えている。そして、その急勾配の部分が、今やプライベート市場に移っている」。

同社の最も古いクライアントの一つ、英国の投資信託「Scottish Mortgage」は市場時価総額約200億ドルで、そのポートフォリオの約35%をプライベート企業が占めている。その総経費率はわずか31ベーシスポイントという低水準だ。

3-2. Anthropicを選ぶ理由——安全性と企業向け特化

AnthropicについてCampbell氏は、「彼らが特に魅力的だったのは、AI開発における安全性への取り組みと、倫理的なアプローチ、そして企業市場への注力だ」と語る。

大量のコンシューマーユーザーを抱えるOpenAIとは異なり、Anthropicは、エンタープライズAIに重きを置く戦略をとっており、データセキュリティや規制対応を重視する企業顧客に響く特徴を持つ。

3-3. SpaceXが持つ未来の可能性

SpaceXについては、宇宙打ち上げコストの急速な低下に加え、AIの普及に伴うエネルギー需要という新たなテーマと絡める視点が印象的だ。Campbell氏はこう述べる。「2〜3年後に、AIの増分エネルギー需要を宇宙太陽光で賄うことが合理的な選択になっている可能性は、十分あり得る話だ」。

Starinkによる衛星通信ビジネスも含めると、SpaceXが持つ事業機会の幅は非常に広い。

4. 次の「テスラ」はどこにいるか——新興国・エネルギー・ヘルスケア


4-1. ボトルネックに注目する

Campbell氏がAI時代の次なる有望分野として挙げるのは、「ボトルネックを解消する領域」だ。AIの普及に不可欠なエネルギー、データ通信インフラ、そして半導体の基幹素材としての銅やリチウムなどが該当する。

すでに保有する銘柄としてSK Hynix(高帯域メモリ)、TSMC、ASMLを挙げつつ、「これらの重要鉱物の最良の埋蔵量の多くは新興国に存在する。バリュエーションも相対的に魅力的だ」と指摘する。

4-2. ヘルスケアへの期待

Campbell氏が「人間的な理由からも投資的な理由からも」として特に期待を寄せるのが、ヘルスケア分野だ。AIが医薬品開発や診断精度の向上に与えるインパクトはまだ初期段階にあり、今後の変化の余地は大きいとみている。

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