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「テック・レック」― 半導体株がベア相場入り、Appleは一時5兆ドル突破の明暗

米国のハイテク株に大きな変動が走った一日となった。Nasdaq100指数は、調整局面に迫り、半導体株を中心に売りが加速する一方、Appleは、一時時価総額5兆ドルを突破し、史上2社目の快挙を達成した。SpaceX株も、上場後の急落が続くなど、AI関連銘柄を巡る評価が大きく揺れ動いている。Bloomberg Techが伝えた内容を項目ごとに、より詳しく整理する。


1. 半導体株、4日連続下落でベア相場入り


フィラデルフィア半導体指数(SOX)は、4営業日連続で下落し、これは昨年12月以来の連続下落記録となった。同指数は、6月のピークから25%下落し、テクニカル的な「ベア相場」入りが確認された。もっとも、同指数は、年初来ではなお上昇しており、今年前半だけで指数は倍増していたという背景がある。

番組に出演した市場関係者は、こうした「弱気相場」や「調整局面」という定義自体が、本来は広範な経済全体を対象に設計されたものであり、それを韓国・台湾市場や半導体指数のような、集中度の高い(少数の銘柄に偏った)指数に当てはめている点には注意が必要だと指摘した。同氏は、今回の急落の背景として複数の要因を挙げている。1つは、Alphabetをはじめとするハイパースケーラーがフリーキャッシュフローのマイナス転落、あるいは大幅な減少に直面していることで、投資家が、「この水準の支出をいつまで市場が許容するのか」という疑問を強めている点だ。もう1つは、中国発のAIモデルの効率性向上で、より効率的なモデルが登場すれば、必要となるインフラの規模も縮小しうるとの見方が広がっていることだ。同氏はまた、今回の上昇相場が旺盛な利益成長に加え、一定のレバレッジと「乗り遅れる恐怖(FOMO)」によって支えられてきた面もあり、その2つの要素を取り除けば、より現実的な評価水準に近づくはずだとの見方も示した。

2. 中国の技術進展が投資家心理を圧迫


米国市場の下落は、中国の技術的進展を巡る新たな材料とも重なった。中国のAIスタートアップMoonshotが、高性能モデルを発表したことは、中国のAIモデルの実力を市場に再認識させる「目覚まし」の役割を果たしたとされる。さらに、中国がチップ製造装置であるリソグラフィー(露光装置)分野で進展を遂げているとの報道もあり、半導体関連株への圧力材料となった。

加えて、DRAMメーカーのCXMTが、中国本土で新規上場を果たし、時価総額で早くも中国国内では最大の上場企業となり、まもなく中国企業として世界のどの市場に上場していても最大級の評価額を持つ企業になる見通しだと報じられた。同社は、SK HynixやSamsungと直接競合する立場にあり、これが最近急騰していた関連銘柄への圧力材料になっているという。市場関係者は、投資家は常に将来を織り込もうとするものであり、中国の技術力向上のようなニュースが出れば、それに応じて株価評価も見直されていくものだと述べている。

3. メモリー株の急落 ― SanDiskは3営業日で3割下落


とりわけ大きな調整に見舞われたのがメモリー・ストレージ関連株だ。番組に出演したBloombergの株式担当記者によれば、この分野は、年初来、2倍、3倍、あるいはそれ以上に値上がりした銘柄が相次いでおり、その中でもSanDiskは、3営業日連続で二桁パーセントの下落を記録し、この数日間で時価総額の約3分の1を失ったという。

同記者は、メモリーは、2026年を通じて特に注目度の高いセグメントであり、AIデータセンター構築に伴う需要の高まりから、価格自体も大きく上昇してきたと説明した。具体的には、メモリー価格は、昨年8月末以降、約800%上昇したとされる。こうした急騰を踏まえれば、ここへきての株価の押し目自体は驚くことではないともいえるが、これほど価格が上昇した以上、企業側がどこまで高い価格を許容できるのか、そして、現在の株価が、すでに「ピーク利益」の水準を織り込んでしまっているのではないか、という懸念が浮上していると分析した。同記者は、これを、楽観シナリオが既にどこまで株価に織り込まれているのかを見極める局面に入ったと表現し、それが直近のボラティリティの高さにつながっていると述べている。ジェンセン・ファンNvidia CEOも前週、メモリーが依然としてボトルネックであると述べていたという。

4. SpaceX株、上場高値から1.2兆ドル減


SpaceXの株価も大きく変動した。上場(6月12日)後の直近高値から、時価総額にして1.2兆ドルが失われたとされる。Bloombergの記者は、売り側(セルサイド)のアナリストは、総じてSpaceXに強気な姿勢を示してきたとしつつも、これはIPOを担当した銀行、あるいは、SpaceX経営陣との関係を重視する動機によるところも大きいと指摘している。同社株を巡っては空売り筋の参入も見られ、SK Hynixの米国預託証券(ADR)が、IPO価格を大きく下回って取引されている点にも言及があった。

Bloomberg Intelligenceのアナリストは、このスライドが本質的にAI関連材料に連動していると分析している。同氏によれば、同社を巡って構築されたバリュエーションモデルは、AI事業が実際にうまくいけば、今後10年の終わりまでにハイパースケーラー各社に匹敵する評価額まで成長しうることを示していたという。したがって、テック業界やハイパースケーラー全体に下落局面が訪れれば、それがSpaceX株にも色濃く波及するのは当然だとの見方を示した。同社の目論見書で示された将来事業の大部分がAI関連であり、AI市場に不安定さが出るたびにSpaceX株も影響を受ける構図だという。加えて、12月末までに50億ドル超相当の株式ロックアップ解除が控えており、これが需給面での重しになっているとも指摘されている。

一方で、直近のStarship試験飛行の成功は好材料と受け止められた。番組では、前週に一度打ち上げが土壇場で中止・スクラブされた際に時間外取引で株価が急落した場面が「衝撃的だった」と振り返られ、実際に打ち上げが成功した際には好感される反応があったと紹介された。この日の取引でも、一時4〜5%程度下落する場面があったSpaceX株は、終盤にかけて切り返し、約3%高で取引を終える場面も見られた。アナリストは、目論見書に記載された軌道上データセンターやエンタープライズソフトウェア販売といった将来事業は、いずれもStarshipが機能し、ペイロードを軌道上に展開できることが前提になっていると強調し、Starshipの打ち上げ頻度・搭載量の拡大が今後も注視すべきポイントになるとした。同氏は、また、Starlink事業についても、短期的には重要な収益源であるものの、長期的な収益性・利益成長を牽引するのはAI関連事業になるとの見方を示している。次の直接的なカタリストとしては決算発表が挙げられ、今回の決算シーズンは、総じて期待値が高いため、良い数字を出すこと自体のハードルも高くなっていると分析されている。

5. Appleが一時5兆ドル突破 ― 史上2社目の快挙


対照的に、Appleは、このAI関連株の混乱をよそに上昇し、一時時価総額が5兆ドルを突破、史上2社目となる快挙を達成した。株価は取引時間中に最大1.8%上昇し、終値ベースで340ドルを上回れば、この水準を維持したまま取引を終えることになるとされた(その後、この日のセッション高値からはやや後退したという)。市場関係者は、Appleが、Nvidiaのような大型設備投資競争に参加していないことが、むしろ同社をAI関連の混乱から一定程度切り離している要因だと分析している。

Bloombergは、また、Appleが、スマートホーム市場への再参入を計画していると報じた。競合として挙げられるのは、AmazonのEchoやGoogleのNestで、約7インチのディスプレイを備えたスマートホームハブとなる見通しだ。ビデオ通話やスマート家電の操作に加え、キッチンでのレシピ表示のような用途も有力な使われ方になりそうだという。報道によれば、Appleは、この分野への参入を長らく計画していたものの、AI面でのソフトウェア開発が追いつくのを待っていたとされ、ようやくAI版Siriの提供にこぎつけたことで、この秋にも新製品を発表する準備が整ったという。

あわせて、7月21日に既報のあったKlarnaとの提携によるデバイス分割払いプログラムについても、新たに価格の詳細が判明したと報じられた。これは「今買って後で払う(BNPL)」という購買スタイルに慣れた世代の拡大を意識したデバイスリースプログラムで、Appleのサービス部門(既に同社で最も急成長している事業)への追加的な後押しになるとみられている。市場関係者は、こうした動きが投資家にとって好感材料になると同時に、長らく遅れていたホーム・ウェアラブル部門の強化に向けた動きとしても評価できるとしている。

6. Anthropic、オープンウェイトモデルを巡る論争に反論


AI政策を巡る議論も動きがあった。前週末、NvidiaのジェンセンCEOとMicrosoftのサティア・ナデラCEOが主導し、数十社が署名した業界横断の公開書簡が発表され、中国発のAIモデル(Moonshotなど)への対応を理由に、オープンウェイトAIモデルを政府が規制すべきではないと訴えた。この書簡にAnthropicが、名を連ねなかったことは業界内で話題となり、元ホワイトハウスAI担当者などから、Anthropicが自社の独自ビジネスを守るためオープンウェイトモデルへの規制強化を望んでいるのではないかとの臆測も出ていた。

これに対し、Anthropicは、前日、自社ブログでこの臆測に反論し、そうした見方は事実ではないと説明した。同社は、オープンウェイト・クローズドウェイトを問わず、すべてのモデルに義務的な安全性審査を課すべきだとの立場を示し、これは業界内では異色の主張だと報じられている。また、オープンウェイトモデルが防御能力の向上につながるという同書簡の前提には異論を唱えつつ、モデルの安全性・セキュリティ確保の重要性を改めて強調したという。なお、ジェンセン・ファン氏は今週、AIと公共政策の未来を巡る協議のためワシントンD.C.を訪れているという。

中国側もこの動きに反応し、Moonshot AIのような自国のAI企業が、米国モデルを不正に利用しているとして制裁対象になった場合、必要なあらゆる対抗措置を取ると警告した。これは前週、米財務長官や大統領科学技術政策顧問が、いわゆる「蒸留」――既存モデルから産業規模でデータを抽出し競合チャットボットを作る手法――と呼ばれる形で中国企業が米国のAI技術を不当に利用している可能性について警戒感を示し、これが確認された場合は制裁対象になり得ると発言したことへの反応だとされる。中国側は、蒸留は一般的な慣行であり、自国企業がその範囲を逸脱してはいないと自国産業を擁護する立場を示している。

7. Nvidia社員、対中密輸容疑で台湾当局に拘束


その他のニュースとして、台湾当局がNvidiaの従業員を、チップの中国への密輸容疑で拘束したと関係者が明らかにした。Nvidia自体が不正行為で訴追されたわけではないとされるが、この捜査は4つの法域にまたがる、AIチップの「シャドー取引」を対象とした広範な取り組みの一環だという。

8. Meta、テキサス州で新たな11億ワット規模のデータセンター


Metaは、BlackRockと共同で140億ドルを投じ、テキサス州に11億ワット規模のデータセンターを建設する計画を明らかにした。稼働開始は2028年を予定しており、投資家がAI投資のリターンを厳しく精査する中でも、同社がAI関連投資を継続する姿勢を示す最新の事例となった。Bloombergの記者は、この規模の投資について、数年前であれば「巨大プロジェクト」と評しただろうが、現在のデータセンター建設ラッシュ全体の中に位置づけると、必ずしも突出したものではないと指摘している。同社は、既にルイジアナ州でも500億ドル規模の別のデータセンター建設を発表しており、これには付随するチップ投資だけで約2000億ドル相当が見込まれるとされ、それと比べれば「大きいプロジェクトではあるが、最大ではない」という位置づけになるという。

Metaは、翌日に決算発表を控えており、記者は今回の決算での最大の焦点は支出計画そのものになるとの見方を示した。前週、Alphabetが、設備投資見通しを引き上げたことで株価が下落した例があり、Metaも前四半期に同様の反応を経験している。AIインフラへの支出動向は、今週の大型ハイテク企業決算シーズン全体を通じて、投資家が最も注視するポイントになっているという。

9. 垂直特化型AIへの資金シフト ― Sapphire Ventures Cathy Gao氏


ベンチャーキャピタルSapphire VenturesのパートナーであるCathy Gao氏は、企業向けAI導入の局面が変化しつつあると指摘した。同氏によれば、これまでは、「知能の獲得競争」、すなわちどのラボがより優れたモデルを持っているか、そのモデルに対し、どんなユースケースを見つけられるかが焦点だったが、現在は、実際の業務ワークフローへの「本格導入」の時代に移行しつつあるという。日々の業務フローへの組み込み、具体的なユースケースの特定、そして、測定可能な投資対効果(ROI)が重視される局面になったとし、この移行は、特定の業界に深く特化した「垂直AI(バーティカルAI)」企業に有利に働くと同氏は主張する。こうした企業は深い業界知識と顧客理解を持ち、実務で起こりうる無数の例外的なケース(ロングテール)に対応する能力を備えているとし、知能そのものがコモディティ化するほど、その周辺にある業務知識やエッジケース対応力の価値が相対的に高まっていくと説明した。

なぜ大手基盤モデル企業自身がこうした市場を狙わないのか、という問いに対し、Gao氏は、これは「幅」と「深さ」の違いに帰着すると説明した。基盤モデル企業は、今後も巨大なビジネスを築き続けるだろうが、あらゆることに手を広げることはできず、焦点を絞る必要があるという。垂直AI企業は、顧客ごとに残る「最後の1マイル」――何十年も更新されていないような既存のレガシーシステムへの統合や、エンジニア集団を投じた個別カスタマイズ――に徹底してこだわる点で異なるとした。

同氏は、具体例として、住宅不動産分野に特化した自社ポートフォリオ企業を挙げた。この分野は歴史的にはソフトウェア市場としてさほど魅力的とは見なされてこなかったが、労働力・サービス市場まで含めれば約2000億ドル規模になるとされる。同社は、現在、年間経常収益(ARR)が既に2億ドルを突破し、米国の賃貸住宅の6軒に1軒をカバーするまでに成長しているという。Gao氏は、こうした「一見魅力的に見えない、泥臭い(gritty)産業」にこそ、大きな市場機会が眠っていると分析し、業務の複雑さや例外ケースの多さは「バグ」ではなく、いったんワークフローに食い込めば強力な粘着性(スティッキネス)を生む要因になると説明した。

Gao氏は、ジェンセン・ファン氏やサティア・ナデラ氏らによるオープンウェイトモデルを巡る公開書簡についても触れ、署名した企業が、まさにエコシステム拡大の恩恵を受ける立場にある点は驚きではなく、モデルの数が増えるほどNvidiaの収益も増えるという構図がその背景にあると指摘した。一方で、発表のタイミング(多くの署名企業がIPOを控えている時期であり、自ら物語の主導権を握りたいのではという見方も紹介された)には意外性があったとの見方も示している。同氏は、オープンウェイトモデル自体は業界にとって総じて好ましいものであり、モデル層での競争が進めばコストが下がり、選択肢も広がるとした一方で、Hugging FaceとOpenAIを巡る事案は、セキュリティや安全性、知的財産といったリスクを軽視すべきではないという「目覚まし」になったとも指摘し、同社としてもサイバーセキュリティへの投資に多くの時間を割いていると述べた。

同氏は、また、足元のベンチャー投資動向についても言及し、特定の業界や、流通チャネル・プラットフォームを既に確立したインフラ企業が明確なリーダーシップを取る形で「バーベル型」の投資分布が生じつつあると説明した。成長性はもちろん重要だが、長期的な「持続可能性(デュラビリティ)」が投資判断の軸として重視されるようになってきているとの見方を示している。

10. コールセンター業界にもAIの波


番組では、AIによるコールセンター業務の代替についても取り上げられた。Bloombergの記者は、電話をかけた際に応対する音声がかつてよりも「ロボット的でなくなっている」と指摘し、チャットボットや音声システムの多くが、より長時間にわたりAIによって対応され、実際に問題解決まで導けるケースが増えていると説明した。同氏は、こうした音声応対能力の向上は消費者にとっては好材料になりうる一方で、数百万人のアメリカ人が従事するコールセンター業務に対しては深刻な影響を及ぼしうるとし、経営陣がAIの労働への影響を語る際には抽象的な表現にとどまりがちだが、実態としては人員削減によるコスト圧縮が主目的であり、多くの人々の雇用に影響が及んでいると指摘した。この分野では、Brett Taylor氏が率いるSierraをはじめ、多数のベンダーが乱立する「未確定」な市場になっているとされ、航空会社や通信会社、銀行など、消費者からの入電が多い業界を中心に、労務コスト削減への需要が強いと分析されている。

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