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Marc Andreessen氏「ステーブルコイン取引量、Visaに匹敵」― CLARITY法案の意義を語る

ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)の共同創業者Marc Andreessen氏と、ゼネラルパートナーのChris Dixon氏が、自社番組「a16z Crypto Show」に出演し、米上院で審議中の仮想通貨市場構造法案「CLARITY Act」について議論した。同法案は、昨年、超党派の支持を得て下院を通過し、現在上院で審議が続いている。本稿では、法案を推進する立場にある両氏の主張を中心に紹介するが、法案には有力な反対論も存在しており、その論点も併せて取り上げる。


1. 「Bitcoinは、もはや投機の対象ではなく、Visaに匹敵する決済インフラ」


Andreessen氏は、自身が2014年にニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した「Why Bitcoin Matters」を振り返り、当時と現在の違いを説明した。当時は、まだBitcoinが、ほぼ唯一の暗号資産であり、業界というより一部の愛好家によるサブカルチャー的な存在だったのに対し、現在では、ステーブルコイン(ブロックチェーン上のドルと表現できる資産)の取引量が、四半期あたり数兆ドル規模に達し、Visaネットワークに匹敵する規模になっているという。

Dixon氏は、WhatsAppでメッセージを送るのとほぼ同じ感覚で、世界中にほぼ無料で送金できる時代が到来しつつあると説明した。同氏によれば、数年前まで同様の取引には、数ドル、場合によっては数十ドルのコストがかかっていたが、現在は主要なブロックチェーン上で1秒未満・1セント未満での送金・決済が実現しているという。同氏は、また、「Bitcoinがハッキングされたことは一度もない」「Ethereumがハッキングされたことも一度もない」とし、報道される「ハッキング事件」の多くは、これらのブロックチェーン自体ではなく、それを利用する組織側のセキュリティ不備によるものだと説明している。

2. なぜ今、規制の明確化が必要なのか


BlackRock、JPMorgan、Visa、Fidelity、Mastercardといった大手金融機関が、続々と参入する中、Dixon氏は、業界全体が既に「規制の明確性」なしにここまで成長してきたが、それゆえに今こそルールが必要な段階に来ていると説明した。

同氏は、昨年成立した「Genius Act」が、ステーブルコイン(市場全体の時価総額の約15%を占めるとされる)に包括的な規制枠組みを与えたことで、この分野が最も急成長した領域になったと指摘した。この法律の下では、ステーブルコイン1ドル分に対して銀行に実際に1ドルが預けられていることが監査によって保証されるといい、消費者や機関投資家に安心感を与えているという。一方、市場の残り約85%を占めるブロックチェーン自体を含む領域には、まだ包括的な連邦規制の枠組みがなく、これを埋めるのが上院で審議中のCLARITY法案だと説明されている。

3. FTXの教訓 ― 「規制がないことが最大のリスク」


Andreessen氏は、2020年から2024年にかけての前政権下で、業界が規制されるのではなく、「訴追される」対象になった経緯を振り返った。同氏は、この時期に米国の規制環境の空白を突く形で、海外の事業者が独自のルールのもとで自由に活動し、その結果としてFTXの破綻という「大惨事」につながったと分析している。

Dixon氏は、CLARITY法案が持つ意義として、現状は暗号資産取引所を監督する連邦規制当局が存在しない点を挙げた。同氏は、FTXが最終的に破綻した理由は単純で、複数の事業体の間で資金を移動させ、実際には顧客資産を保有していなかった点にあるとし、法案が求める監査体制・開示規制・内部者取引規制などが整っていれば、こうした事態は防げただろうと述べている。同様に、担保となる資産を実質的に持たない「アルゴリズム型ステーブルコイン」であったTerraUSD(Luna)の崩壊についても、Genius Actの枠組みの下では違法となる仕組みだと説明した。

4. 「マネロン対策の欠如」批判 ― 反対派ウォーレン議員との論争


法案への最大の反対勢力の一人として、Elizabeth Warren上院議員の名前が挙げられた。同議員は、この法案を「制裁逃れへの切符」と表現し、北朝鮮やテロリスト、ランサムウェアのハッカーが野放しになると主張しているという。

Dixon氏は、これに対し、現状の規制の曖昧さこそが「底辺への競争」を招いていると反論した。同氏は、Coinbaseのような米国の優良企業がコンプライアンス対応に多額のコストをかける一方、規制の緩い海外の競合企業がその分低コストで参入し、人気を得てしまう構図が繰り返されてきたと説明する。CLARITY法案は、誰が規制対象になるかを明確に定義し、米国内で事業を行う以上は規制対象から逃れられない仕組みを作るものだと位置づけている。同氏は、また、全米最大の法執行機関団体であるFraternal Order of Policeが、この法案を支持する声明を出したことにも言及した。

Andreessen氏は、国家安全保障の専門家との対話を踏まえた見解として、「むしろ悪人がより多く暗号資産や仮想通貨を使うようになることを望んでいる、という声が多い」と述べた。理由として、ブロックチェーン上の取引には「痕跡」が残る一方、中東圏で実際にテロ資金の移動に使われているとされる「ハワラ」のような非公式な送金システムには、物理的な現金の移動すら伴わず、デジタルの痕跡も紙の記録も一切残らないと説明している。同氏はこれを踏まえ、暗号資産を「訴追の先物」と呼ぶ関係者の表現を紹介し、暗号資産を通じて資金を動かす悪人が増えるほど、後になってブロックチェーンを解析し訴追につなげられる可能性が高まると主張した。なお、この点については、ウォーレン議員をはじめとする反対派との間で見解が真っ向から対立しており、どちらの主張がより実態に近いかは、今後の実証的な検証に委ねられる部分も大きい。

5. Netscapeの暗号化規制との類似性


Andreessen氏は、この論争が自身の経験と重なる部分があるとして、Netscape創業初期における暗号化技術(SSL/HTTPS)を巡る規制闘争を紹介した。当時、暗号化技術は「武器輸出規制(ITAR)」のもとでトマホークミサイルと同じ分類を受けており、Netscapeは、海外向けに意図的に脆弱な暗号化バージョンを出荷せざるを得なかったという。同氏は、この結果として海外の競合企業が強力な暗号化を実装した製品を提供するようになり、米国製品が海外市場で不利になった経緯を説明した。

この規制の見直しには、4年を要したといい、同氏はこれを、現在CLARITY法案を巡る7年越しの議論と類似した構図だと位置づけている。同氏は、国家安全保障の観点からも、最終的には米国企業がこの巨大産業を主導する方が、米当局にとって(対応可能な相手が米国企業であるため)望ましいという結論に至ったと説明し、暗号資産分野でも同様の論理が当てはまると主張した。

6. 政府倫理規定を巡る論争


トランプ大統領とその家族が暗号資産事業に関与している点を踏まえ、法案が「最も声高に支持している人物を富ませるのではないか」との批判についても議論があった。Dixon氏は、暗号資産に限らず、株式やその他の金融資産についても政府高官の倫理規定は必要だとの個人的見解を示した上で、CLARITY法案自体が、暗号資産の保有・リスクに関する開示義務やロックアップ要件など、政府関係者を含む全ての関係者への規制を強化する内容になっている点を指摘した。

同氏はまた、この法案が、米国史上初めて、産業規制と政府高官の倫理規定を同一の法案の中で扱おうとしている点は「異例」であり、通常はこの2つが別々に扱われるべきだとの見方を示した。この点については現在も交渉が続いているとし、早期の決着を望むとの立場を示している。

7. 銀行業界のロビー活動 ― ステーブルコインへの利息付与を巡る攻防


法案を巡るもう一つの大きな論争として、銀行業界(特にJPMorgan Chase)による、ステーブルコイン保有者への利息付与を制限しようとするロビー活動が取り上げられた。銀行側の懸念は、消費者が預金をステーブルコインに移し、銀行からの「預金流出」を招くというものだという。

Dixon氏は、現在の法案では銀行側がおおむね望んだ内容(銀行口座と機能的・経済的に類似した形での利息支払いを禁止する規定)が反映されていると説明した。一方で、Walmartでステーブルコインウォレットを月2回使うといった行動に対するクレジットカード的な「リワード」の付与は認められる余地があるとし、これ以上制限を強めれば、Starbucksのポイント制度のようなものまで禁止することになりかねないとの見方を示している。

8. JPMorganも独自のブロックチェーン基盤を構築中


興味深い点として、Dixon氏は、この議論の象徴的な対立構図がCoinbaseのBrian Armstrong氏とJPMorganのJamie Dimon氏の間で語られがちである一方、当のJPMorgan自身が既にトークン化預金をオンチェーンで稼働させるなど、大規模なブロックチェーン事業を展開している点を指摘した。同氏は、大手銀行のほぼ全てが何らかの大規模なブロックチェーン施策を進めており、規制の明確化が実現すれば、これらの取り組みが、本格的に展開されていくだろうとの見通しを示している。同氏は、また、銀行システムの多くが依然としてCOBOL(古いプログラミング言語)で書かれた古いシステムに依存しており、ブロックチェーンが業界横断的な「統一フレームワーク」として、技術面だけでなく調整面の課題も解決しつつあると説明した。

9. 開発者責任を巡る懸念 ― 「オープンソースを殺す一撃」


元ホワイトハウスのサイバーセキュリティ担当官Carol House氏が提起した、ソフトウェア開発者の下流責任(ダウンストリーム・ライアビリティ)を強化すべきだという主張についても議論があった。Andreessen氏は、これを「業界への致命的な一撃だ」と強く批判し、ソフトウェア開発者が将来のあらゆる用途を予見することは不可能だと指摘した。同氏は、これを、ホテル経営者が宿泊客の犯罪計画に関与したことになるのか、車のエンジニアが銀行強盗に使われた車の共犯になるのか、という比喩で説明している。

Dixon氏は、これに補足し、悪意を持って犯罪者を直接的に助けた場合(例えば「犯罪の方法を教えてほしい」というメールに実際に答えるような場合)は明確に犯罪行為であり、これは誰も否定していないと整理した。問題となっているのは、建設的な用途を意図してオープンソースソフトウェアやAIモデル、ブロックチェーンを開発した場合にまで、無制限の下流責任を負わせようとする動きだという。両氏は、こうした責任が課されれば、オープンソース開発、学術研究、ベンチャー投資、そしてスタートアップから大企業に至るまで、業界全体が立ち行かなくなると警鐘を鳴らしている。

10. 証券法との関係 ― 「規制の抜け穴」批判への反論


法案が証券法に「穴を開ける」のではないかという批判についても議論された。Dixon氏は、株式をトークン化した場合、それは引き続き証券として扱われSEC(証券取引委員会)の規制対象になると明確に説明した。法案が新たに定めるのは、Bitcoinのような分散化されたトークンが、発行当初は、中央集権的でSEC規制の対象となる一方、十分な分散化が進んだ段階でCFTC(商品先物取引委員会)の管轄下に移行するという段階的な枠組みだという。同氏は、これは既に過去10年にわたり複数の政権下での裁判例や規制当局の判断によって事実上のコンセンサスとなってきた内容を、法律として明文化するものに過ぎないと説明している。

11. 法案が成立しなかった場合、そして米国の技術主導権


法案が成立しなかった場合について問われたAndreessen氏は、「引き続き取り組みを続け、いずれ成立するだろう」と述べた上で、法律による規制は各省庁による規則制定よりも事実上「恒久的」な性質を持つため、業界にとってより高い予見可能性をもたらすと説明した。

より大局的な観点として、同氏は、米国がこの分野で技術的リーダーシップを握ることの重要性を強調した。同氏は、米国企業がこの産業を主導することは、経済的利益だけでなく、国家安全保障や法執行の観点からも圧倒的に望ましいと主張し、これは政治的立場を問わず全ての米国民が望むべきことだとの考えを示している。

12. CLARITY法案が実現する未来像


Dixon氏は、ブロックチェーンの本質を「非仲介化マシン」と表現し、これまでの主な用途は金融分野(ステーブルコイン、トークン化された株式・国債・融資など)だったが、今後数年間はこれが金融システムの大規模なアップグレードの中心になっていくとの見通しを示した。同氏は、さらに長期的な視点として、AIエージェントが今後何十億、何兆という規模に増加していく中で、それらが経済取引を行う自然な手段として暗号資産が使われる未来にも言及している。

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