物語のような日常エッセイ【私の家は、しゃべる]〜プロローグ〜
先週までの『気配』に、じっと耳をすませていたら。
少しずつ、彼らの「声」が聴こえるようになってきました。
気づいたのは、ほんの些細な、いつもの帰宅の瞬間。
ソファにどさりと荷物を置いたとき、
なぜか「おかえり、やっと来たね」と言われた気がしたのです。
もちろん、本当に声がしたわけではありません。
でも、そうとしか受け取れない、温かくて不器用な“圧”がある。
この家には、少しだけ不思議なルールがあります。
誰も言葉を発していないはずなのに、
なぜかいろんなモノたちが、私の気持ちを“先回り”してくるのです。
ソファは、ただそこにあるだけなのに、
玄関を開けた瞬間から、妙にこちらを安心させようとしてくる。
「今日は長かったでしょ、ほら座りなよ」とでも言いたげに、どっしり構えている。
洗濯機は、やけに世話焼きだ。
洗濯カゴが山盛りになっていると、
「ちょっと、これ全部一気に洗う気?」と、
ため息をつきそうな顔でこちらを睨んでいる(気がする)。
冷蔵庫は、無言だからこそ一番おそろしい。
昨夜こっそり食べたプリンが減っていることも、
疲れた日ほど甘いものが増えることも、ぜんぶ無表情で見抜いている。
電子レンジは、とにかくいつでも騒がしい。
「あと30秒!」「まだいける!」「おい、熱すぎるって!」
毎回、こちらの空腹よりも先にひとりで盛り上がっている。
iPhoneは、健気にずっと働きっぱなしだ。
気づけば一日中、私の指先を受け止め、世界と繋いでくれている。
文句ひとつ言わないけれど、たまに画面の向こうで、静かにため息をついている気がする。
そしてベッドは、何も言わない。
でも、一番わかっている。
頑張りすぎた日も、
何もしたくない最悪な日も、
全部まとめて「まあいいよ、おやすみ」と、優しく沈み込んで受け止めてくれる。
ただの“物”のはずなのに。
なぜか少しだけ、人間くさくて、愛おしい。
そして私は今日も、
そんな“少しだけしゃべるモノたち”と、賑やかに暮らしている。
──さて。
最初に出会うのは、いつだって私を真っ先に受け止めてくれる、あの場所。
#1 【もしもソファが…】へ続きます。
この家の中で、静かに、でも愛おしくおしゃべりをしているモノたちの物語を、ひとつのマガジンに全部まとめてあります。
家事の合間に、あるいは夜眠る前のひとときに。
いつでもこの扉を叩いて、彼らに会いにきてくださいね。
[序章④:前夜の気配]
[序章③:電子レンジの気配]
[序章②: 冷蔵庫の気配]
[序章①: ソファの気配]
感謝とご縁の小さな書棚 | ひゅう | さんに掲載していただきました。ありがとうございます😊こちらです↓<[序章④:前夜の気配]もしも、リビングの明かりを消す前夜に戻れたら>
