【対談】「すんでメンター」のゆくえ―サードプレイスの価値と、ビジネスの狭間で
目次
「すんで」と、メンター制度の現在地
埼玉ローカルから広域へ、売上10億円企業への成長と集客チャネルの変化
「ガチガチのマーケティング装置」か「ゆるやかなサードプレイス」か
お節介精神とインセンティブ設計――ポジショントークと透明性の課題
マンクラの変容と実需発信の減少、物件「批評」の境界線
SNSの炎上・誹謗中傷リスクと、会社・個人のスタンス
おわりに:変化を受け入れながら、個人の知見が生きる場を残し続ける
1. 「すんで」と、メンター制度の現在地
南: すんで取締役の南です。
浦和ゆーすけさんに来ていただきました。よろしくお願いします。
浦和ゆーすけ: よろしくお願いします。収録前に株の話などでアイスブレイクをしていましたが、このディープラジオも2回目になりますね。勝手に喋らせてもらっているだけなのに、呼んでいただきありがとうございます(笑)。
南: こちらこそです!
浦和ゆーすけ: 今回は「すんでメンターコミュニティの将来を考える」というテーマです。私個人の意見はあくまで「N=1」のサンプルに過ぎません。だからこそ、他のメンターの皆さんや社内の方々が今何を考えているのか、率直に気になっていたというのが本音のところです。
メンター制度が始まってから、もう5年か6年ほど経ちますよね。
南: そうですね。創業から振り返ると、それくらいの年月が経ちました。
浦和ゆーすけ: 辞めた方もいれば、残っている方もいます。残っているけれど最近はあまり動いていない方もいれば、最近入って積極的に活動している方もいますよね。色んな意味で、過渡期にあると感じています。
私のプチ炎上も含めて、アンチのような反応もある中で、日々、コミュニティのあり方を考えていました。
そこで南さんにお聞きしたいのですが、経営者として、あるいは個人として、今のすんでメンターのあり方をどう見ていらっしゃいますか?
南: あくまで個人の見解であり、代表のすんで埼玉(岡野)と日々議論していることではありますが、メンター制度は創業以来の「軸」であり「核」です。
ただし、それが未来永劫まったく変わらない前提として固定化されているかというと、必ずしもそうではないです。
そもそもメンターシステムを導入した背景には、「世の中に眠っている個人のリアルな知見が、マーケットで正当に評価されていない」という問題意識がありました。そこに「すんで」のプラットフォームを提供し、集客やトスアップ、最終的にはマネタイズできる仕組みを整えたわけです。
ですから、事業フェーズや時代の変化に伴って、形が変化していくのは自然なことだと考えています。
2. 埼玉ローカルから広域へ、売上10億円企業への成長と集客チャネルの変化
浦和ゆーすけ:決め打ちしたいわけではないのですが、一度メンター全体にアンケートを取ってみるのも良い時期なのかな?と思ったりします。
南: 登録してくださっているメンターさんは現在100名以上いらっしゃいます。それぞれがどう関わっていきたいのか、あるいは関わりたくても関われない理由があるのか、ご意見を伺ってみる良い機会かもしれませんね。
それぞれの関わり方の理由の増減も様々で、個人のライフスタイルの変化もあれば、すんで側の客層や、エリアの変化もあります。
創業当初は埼玉ローカルの色が強かったですが、現在は対象エリアが首都圏全域へ、さらにアライアンスメンターを含めれば、日本全国へと広がっています。本社も移転しましたし、会社の雰囲気も変化しているのでしょう。
古くからいる方にとっては距離感を感じる部分もあるかもしれませんが、逆に、新しい参加者も増えています。その意味で、皆さんが何を考えているのかは、聞いてみたいですね。このラジオもその機会の一つですが。
コミュニティ運営の難しさは、常に感じています。創業1〜2年目はすんで埼玉(岡野)を中心に、埼玉を中心とした数十名のメンターさんたちと密に動いていました。その後、社員も増え、3年目、4年目と規模が拡大しました。そして本社を移転し、売上も10億円規模へと成長したのがこの5期・6期目です。
メンターさんの存在感は相変わらず大きいものの、事業環境がダイナミックに動いていることは確かです。
浦和ゆーすけ: 立場によって見え方が違いますよね。メンターさんそれぞれ、社員それぞれ、そして経営陣という、異なった視点があります。
私個人の体験を振り返ると、当時すんで埼玉さん(岡野)が登場して、埼玉のアカウントが一気に盛り上がった時期がありました。初期メンターの方々や、すんでを起点に出会った仲間とは、今でも個人的に親交があります。
サラリーマンをやっていると、30歳を過ぎてから利害関係のない新しい友人を作るのはなかなか難しいものです。会社と家の往復になりがちな中で、マンションや住まいが好きだという共通項を持った人たちが集まり、地元ローカルな知見を共有し合える「サードプレイス」ができたことは、本当にありがたい価値でした。
当時の埼玉メンターは、住まいの知見をボランティア精神で人に教えたい、自分が助けてもらったお礼に次の人にバトンを渡したいという熱量で動いていました。相談に乗ってもらって住宅を購入した人が、次の節目で自らメンターになるというサイクルが綺麗に回っていた印象があります。
ただ、会社の規模が大きくなるにつれて、メンターという存在が、すんで社や事業に対してどう関わるべきなのか、位置づけが少しずつ変わってきた感覚もあります。
南: メンターさん一人ひとり、関わり方のスタンスが違っていて良いと思っています。
すんで側としても、「すんで」のプラットフォームだけでなく、各種エリアLINE、すんでキャリア塾、すんで投資クラブ、感謝祭やすんでショップなど、多様なメニューを用意しています。副業としてしっかり稼ぎたい方もいれば、緩やかなコミュニティの中で、誰かの役に立ちたいというボランティア志向の方もいます。
なので、運営側から「こうあるべきだ」と強く定義づけしてしまうのは、やや違うのかな..と考えています。ガチガチのコミュニティではないからこその良さもありますしね。
3. 「ガチガチのマーケティング装置」か「ゆるやかなサードプレイス」か
浦和ゆーすけ: そこは考えさせられる論点です。
あえて極端なビジネスの視点を取ると、メンターを「集客装置」や「仲介事業の差別化・付加価値の源泉」として捉える見方があります。
本業でBtoB営業やITマーケティングをやっているメンターの方々からすれば、「仕事としての正しさ」を突き詰めると、さまざまな改善案が自然と出てくるはずです。「今月は何人のリードを獲得したのか」といったKPI管理ですね。もし本気でコンサルティングを入れたら、すんでメンターがどのような設計になるのか…興味深くもあります。
一方で、私はすんでが持っている「インターネット的な緩やかさ」や「来る者拒まず、去る者追わず」の空気感を好ましく思っています。ガチガチの組織にしてしまうと、本来のサードプレイスとしての魅力が失われてしまう懸念があります。
どちらの視点から見るかによって、正解が変わってくる難しさがありますね。
南: コンサルティング的な発想だけでは作れないユニークさこそが、すんでメンターの価値でもあります。他社から紹介される際にも、メンター制度は分かりやすく、手前味噌ながら、独自のブランディングになっています。
他社でいえば、Instagramを中心に展開されている不動産インフルエンサーのビジネスモデルもあります。フォロワーが何千人、何万人といて、顔を出して属人的に集客していく手法です。
しかし、すんでメンターは、本業を持ちながら、顔を出さずに、知見を提供したいという方も多くいらっしゃいます。仮に、フォロワー数がX人以上でなければ参加資格がないような仕組みにしてしまうと、本来拾い上げたかった「埋もれている貴重な居住者の生の声」がこぼれ落ちてしまいます。
大切なのは、「すんでメンター」「相談者であるお客様」「法人としてのすんで社」という三者の利益が重なるポイントを模索し続けることです。そしてこのバランスは固定されたものではなく、生き物のように変化していきます。
浦和ゆーすけ: その受け皿の広さと寛容さこそが、すんで社の強みですよね。
ただ、集客構造という観点で見たときに、最近の状況はどうなっているのでしょうか?昔ほど新規のメンター加入が目立たなくなっている印象もありますが、集客におけるメンターさんの比率はどう変化していますか?
南: 率直に言いますと、創業から数年は、私たちの集客の武器は「ほぼメンター経由のトスアップ」しかありませんでした。そのため、いかにメンターさんを増やし、いかに相談件数を増やして活躍してもらうか…という議論に注力していました。当時はメンターさんが増えないことや、メンターさんが暇になってしまうことが、会社全体の死活問題だったわけです。
しかし現在は、LINE配信からの流入、自社での買取再販事業に伴う問合せ、仲介の預かり物件の増加、提携業者からのご紹介など、おかげさまで集客チャネルが多角化しています。
もし現在もメンターさん単体の集客だけに依存していたら、ここまでの規模には拡大していません。
メンターさんにすべて依存せずとも、業績が伸びているのは、不動産仲介業としての地力が付いてきたのと、他のチャネルが強くなった結果と言えます。
4. お節介精神とインセンティブ設計――ポジショントークと透明性の課題
浦和ゆーすけ: 不動産仲介という事業の柱が立ったことで、メンター制度が集客の絶対条件ではなくなったわけですね。コミュニティの居心地としては、初期の少人数で安い居酒屋でわちゃわちゃやっていた頃の楽しさと、会社がスケールしてホテルのビュッフェで交流するような規模感になったときの感覚の違いに似ているのかもしれません。
会社として成長を目指す以上、スケールしていくのは当然ですが、初期からの参加者からすると、良し悪しは別として「当初の空気感と少し変わってきたな」と感じる部分もあるのでしょう。
もう一つ難しいと感じているのが、「お節介精神」と「インセンティブ設計」のバランスです。
例えば、副業として、報酬を受け取る目的を主として活動する場合、成約を目指して、一定のポジショントークを取るモチベーションが働きます。そうなると、純粋なボランティアとして知見を共有していたメンターとは、立ち位置や振る舞いが異なるかもしれませんね。
相談者側から見て、「中立で利益相反のない相談相手だと思って相談したのに、実は裏でインセンティブが発生していて、特定の物件を勧められているのではないか」と誤解されてしまうリスクはゼロではありません。もちろん、法令遵守の上、事前にその仕組みがオープンに説明されていれば問題ないというのが一定の答えではありますが、外から見たときの見え方や透明性は繊細な問題です。
南: ビジネス的には合理的ですが、前提を知らない方からすると「それは違うんじゃないの」と感じてしまう余地はありますね。外部から「メンターの本来の意義と反しているのではないか」と指摘される可能性もあります。
だからこそ、三者の関係性がどう成り立っているのかを丁寧に説明し、透明性を確保し続けることが不可欠だと考えています。
5. マンクラの変容と実需発信の減少、物件「批評」の境界線
浦和ゆーすけ: マンクラを見ていて感じるのは、実需で家を探している「一次取得者」のリアルタイムな発信が減ってしまったということです。
自分がまさに家探しで悩み、決断した直後の時期こそが、同じ立場の検討者に最も寄り添ったアドバイスができる「発信適齢期」だと思います。しかし、市況の高騰もあって実需の発信者自体の母数が減り、実需目線で発信するインフルエンサーも少なくなりました。結果として、メンターの担い手となる層が構造的に生まれにくくなっている面はあります。
さらに、SNSでの発信手法そのものも難しくなっています。
大手デベロッパーの新築プロジェクトであれば批評しても大きな問題になりにくいですが、中古マンションや戸建ての場合、そこには実際に売主様や居住者の方という「生身の個人」が存在します。個人の住まいにケチをつけるような言及をしてしまうと、強い反発や批判を招くことになります。私自身、過去の発信で痛感し、反省した部分です。
南:難しいですよね。正当な批評はアリですが、個人の自宅へ好き勝手言っている、と捉えられてしまうリスクもある。
浦和ゆーすけ: 最近では、良いと思った客観的な事実だけを淡々と並べるような発信スタイルを意識しています。制約の中でいかに健全に発信を楽しむかが問われていると感じます。
6. SNSの炎上・誹謗中傷リスクと、会社・個人のスタンス
浦和ゆーすけ: SNS上でのトラブルに関して、会社がメンターをどこまで守るべきかという「守る・守らない論争」もありました。
発信自体は個人の自由であり、大人として自己責任を持つのが大原則ですが、すんでメンターという看板がついていることで、過剰に叩かれたり、連帯せ金として批判されたりするリスクもあります。メンターが叩かれている姿を見て、「自分も叩かれるのが怖いからメンターになりたくない」「発信を萎縮してしまう」という人が出てくるのではないかと心配になることもあります。
南: 個人的には、こんな発信をしてください、というような、検閲や事前審査のようなことはしたくないですね。例えば、会社として過度な発信ガイドラインを作って、発信を縛ることは本意ではありません。
しかし、当社の業務委託先であり大切なパートナーであるメンターさんに対して、理不尽な誹謗中傷や度を越えた攻撃が行われた場合には、会社として関係各所と連携し、毅然とした措置を取るスタンスは明確に示すべきだと考えています。
万が一の際には弁護士費用を会社が負担してサポートする体制も含め、守るべき部分はしっかり守るという意思表示は必要ですね。
一方で、SNS上の誹謗中傷に対して「攻撃されたから攻撃し返していい」という理屈になってしまうのも健全ではありません。お互いに配慮を持ったコミュニケーションを心がけることが前提です。
浦和ゆーすけ: 相手の言語回路が違うと感じた場合は、無理に議論を深めず、ブロックやミュートを活用して距離を置くことも自衛策として重要ですね。コミュニティとしても、無理に全員を同じ方向に向かせるのではなく、能動的に手を挙げた人が報われ、楽しめる環境を作っていくことが大切だと感じます。
7. おわりに:変化を受け入れながら、個人の知見が生きる場を残し続ける
浦和ゆーすけ: 会社が成長し、フェーズが変わっていく中で、全員が全く同じ熱量で一体となることは難しいかもしれません。
それでも、「誰かの役に立ちたい」「住まいについて語り合いたい」というお節介の精神や、職場と家庭以外のサードプレイスを求める欲求は、時代が変わっても普遍的なものだと思います。
南: おっしゃる通りです。
会社の事業が拡大しても、「個人の眠っている知見を世の中に活かす」という創業時の原点は変わりません。
副業として本気で取り組みたい方も、緩やかに交流を楽しみたい方も、それぞれのスタンスに合わせて心地よく関われる場を提供し続けていきたいと考えています。
本日は率直なお話をありがとうございました。
浦和ゆーすけ: ありがとうございました!
