最果ての終着駅、万字炭山駅跡へ
旧万字駅から万字炭山駅跡へ向かう道は未舗装で、車1台がやっと通れるほどでした。
バサバサと容赦なく車のサイドをこする草木。
ゴツンと底を打つ音。
行く手を阻むように狭くなっていく道。
引き返そうかとも思いましたが、ここであきらめては、終着点「万字炭山駅跡」が見られず、悔いが残ります。
最徐行で、慎重に車を前へ進めました。
深い緑の奥に、ぽつんと佇む一軒家が現れました。
映画『幸せの黄色いハンカチ』に登場したような、長屋に煙突という典型的な炭鉱住宅ではありません。
窓に板が打ちつけられているので、恐らく空き家なのでしょう。

驚いたことに、その先には、まだ人が暮らしている気配のある家がありました。車が横付けされ、洗濯物が揺れ、畑野菜や花が育っています。
一歩家を出たとたん、クマと鉢合わせしないだろうか。冬の買い物はどうしているのだろう、急病のときは…とあれこれ考えてしまいます。
でも、きっとそれは要らぬ心配。半世紀以上、この地で暮らしているのでしょうから、自然と共生する知恵は万全なはず。
やがて、さびついた橋が現れました。
都会で見かける鉄さびは、景観を損ねて見えますが、大自然の中のさびは、なぜか美しく感じられて心惹かれます。

その先には、コンクリート造りの四角い建物がありました。 一瞬変電所かと思いました。

よく見ると、壁面にはひし形の中にカタカナの「ト」と書かれたマークが残っています。

それは「豊永林業」のマークとよく似ていました。炭鉱の坑道を支える「坑木(こうぼく)」を切り出していたのでしょうか。
もしご存知の方がいらしたら、教えていただけると幸いです。
夏草に覆われ、わずかにのぞかせるコンクリートです。これが何かは、見当がつきません。

ついに、万字炭山駅跡へたどり着くことができました。
近くには、ズリ山がそびえ、階段を上った先は展望台になっています。(今回は登りませんでした)
◆ズリ山
石炭を採掘するとき、利用価値のない石や土砂(ズリ、ボタ)を積み上げてできた人工の山
駅舎はすでに撤去され、現在は、木造の万字炭山森林公園管理棟が建てられています。

周囲を散策してみると、大きなコンクリートの遺構が姿を現しました。

目を凝らすと、黄色い花の奥にわずかにトンネルが見えます。
これは、万字炭鉱で採掘された石炭を貨車に積み込むための「ホッパー(貯炭槽)」で、トンネルは、線路が引き込まれていたアーチの跡ではないかと思われます。


上の写真は、管理棟に展示されていたものです。
かつて北海道の近代化と戦後復興を支え、多くの労働者とその家族で活気にあふれていた万字線の終着駅・万字炭山駅。
それが今では、生い茂る緑と静寂に包まれ、コンクリートの遺構を残すのみです。
かつての栄華と、現在のひっそりと静まり返った自然。
そして、どの線へもつながらない終点の、圧倒的な最果て感。
夏草や兵どもが夢の跡
その場に佇んでいると、松尾芭蕉の、この句に込められた感情がいっそう心に染み渡ります。
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