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あの夕暮れを編曲したのは誰か?ーセロニアス・モンクについて、石田幹雄さんと石崎忍さんが語ってくれた。

え? あの曲、モンクが編曲したんじゃないの?
ぼくは驚いた。
ピアニストの石田さんは答えた、違うんですよ、
編曲家がいるんですよ。ちゃんとモンクの意を汲んで
編曲してますね。


セロニアス・モンクに「クレプスキュール・フォア・ネリー」という美しい曲の、アルバム『ライヴ・アト・タウンホール』での、ジャズ・オーケストラ・ヴァージョンの編曲の話である。


この曲が「クレプスキュール・フォア・ネリー」です。


Thelnious Monk


家へ帰って調べてみたところ、この曲の編曲をおこなったのは、Hall Overton(ホール・オーヴァートン)なるピアニスト・編曲家だった。モンクの原曲の美に拡大鏡をかけたようなジャズ・オーケストレーションがなされています。かれはクラシック音楽とジャズの両分野で活動し、特に1950年代から60年代にかけての前衛的ジャズ・シーンで重要な役割を果たした人だそうな。



Hall Overton



なお、この会話はきのう2025年6月5日アケタの店で石田幹雄さんと石崎忍さんのデュオ・ライヴが終わった後の雑談のなかで飛び出したもの。石田さんはジャズ・ピアニストで、石崎忍さんはアルト・サキソフォン奏者です。この夜のライヴは、セロニアス・モンク、ビリー・ストレイホーン、バリー・ハリス、そして石田さんのオリジナルで構成され、石田さんは豹みたいに俊敏なリズム感と走り回る十本の指でもって、それぞれの曲を題材にときに和音をつけ直したり、アドリヴで調性をひっくり返したり、それぞれの曲に新しい光を当てスリリングな驚きを与え、石崎さんの歌心あふれるサクソフォンがすべての曲のメロディの精妙な美しさを際立たせていた。


前述のミュージシャンは石田さんが深く愛し抜き、演奏を続けておられる人たちであり、石田さんはかれらの曲を独自に発展させると同時に、石田さんのオリジナル曲のイメジネーションの源泉にもなっているのではないかしら。みんなそれぞれに起伏に富み陰影のある長く美しいメロディを書く人たちである。なお、石田さんの書く曲はピアノ・ソロで聴くと、メロディ、美しく意表に富んだハーモニー、絶妙なアクセント、導入されるポリ・リズム、調性とその逸脱など複数の構成要素がいずれも興味深く、メロディを覚えるまでに時間がかかる。他方、石田さんの曲を管楽器奏者が吹くとき、メロディの美しさが前景化される。石崎忍さんのアルト・サキソフォンがまたなんとも美しくメロディを歌い上げる。


石崎さんは言った、「タウン・ホールのライヴはモンクが壊れる寸前だもんね。チャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)の吹き方も最高。いっけんぶっきらぼうに吹いてんだけど、あれが正解。ほら、ジャズ屋はつい装飾音符で飾りたてちゃうからね。でも、そんなことしたらモンクの曲が死んじゃう。ジョニー・グリフィンはギリギリOK、コルトレーンも。あくまでもぼくの解釈だけどね。」
石田さんはかぶせる、「モンクもコルトレーンには優しかったよね。」



Charlie Rouse


石崎忍さん


石田幹雄さん


ぼくはふたりの会話に感銘を受けた、さすがミュージシャンだなぁ。聴いてるだけじゃなく、自分で演奏するからこその気づきと洞察である。しかも、ふたりのモンク愛の深いこと。他方、ぼくはかれらの書くメロディのように美しい文章を書けるようになりたいと願った、ジャズ界の星々に。




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