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星くず市場の青い鍵🗝️

⬆️こちらの企画にチャレンジしてみました。

今回のストーリーは、つなぐ。
から始まった続編です。

つなぐ。も『喜木凛さんの』傘を開いたらどんな物語が始まる?をテーマに物語を作る企画に参加させていただいたのがきっかけで生まれた物語。

素敵なテーマをくださりありがとうございます✨



星くず市場の青い鍵🗝️

未羽は夕暮れの坂道を駆け上がっていた。

西の空は茜色に染まり、その向こうで一番星が小さく瞬いている。
急がなければ。


祖母の日傘を、公園の東屋に置き忘れてしまったのだ。

その日傘は、ただの日傘ではない。白い布地の縁には繊細なレースがあしらわれ、陽の光を受けるたびに優しく輝く。

祖母が曾祖母へ母の日に贈った大切な品で、曾祖母が亡くなったあと、形見として祖母のもとへ戻ってきたものだった。

公園は高台の墓地の隣にあり、人影はない。

部活動のない木曜日になると、未羽はここでフルートの練習をしていた。

父の結人も、子どもの頃はこの場所でひとり絵を描いて過ごしていたらしい。


東屋へ着いた未羽は息を切らせた。

だが、そこにあるはずの日傘が見当たらない。

胸がぎゅっと締めつけられたその時、公園の奥から、一本の光の筋が伸びていることに気づいた。

そして導かれるように光の方へ歩いていく。

すると、そこには見たこともない光景が広がっていた。

イラスト:ChatGPT
片桐みかんさんのお題のイラスト


夜空をひっくり返したような市場だった。

看板には銀色の文字で、

「星くず市場」

と書かれている。

露店には星くずアクセサリー、夢のかけら、願いごと屋、流れ星カフェなどがあり、どれも本物の星を並べたように輝いていた。

入口には星の首輪をつけた黒猫が座っていた。

黒猫は未羽を見ると、まるで待っていたかのように目を細めた。


未羽は真っ先に「ちいさなドラゴン研究所」へ向かった。


吹奏楽コンクールの課題曲が『小さなドラゴン』だった。

曲の途中にはフルートのソロがある。

演奏するのは未羽だった。

けれど、どう吹けばいいのか分からなかった。

もしかしたら、何かヒントになるようなものがあるかもしれない!


研究所には小さなドラゴンの置物があり、その胸には青く光る石が抱かれていた。

イラスト:ChatGPT
片桐みかんさんのお題のイラスト

「触ってごらん」

いつの間にか隣に来ていた黒猫が言った。

未羽が石に触れると、音楽が流れ始める。

やがてドラゴンが口を開いた。

「フルートの場面はね、僕が森の中で羽を休めているところなんだ。静かで優しい時間なんだよ」

未羽は目を閉じた。

木漏れ日の森。

柔らかな風。

眠そうに羽をたたむ小さなドラゴン。

その情景が自然と浮かんできた。

なるほど。

そう吹けばいいんだ。

目を開くと石の光は静かに消えていた。


市場の奥へ進むと、大きな宝石箱があった。

イラスト:ChatGPT
片桐みかんさんのお題のイラスト

中には青い鍵がひとつ。

手に取ると、鍵は淡く光り始めた。

「その鍵は願いをひとつ叶える不思議な力をもっておる」

黒猫が言う。

「ただし、使い方は自分で見つけるのじゃ」

未羽は鍵を握りしめた。

「おばあちゃんの日傘が見つかりますように」

だが何も起こらない。

黒猫はくすりと笑った。

「随分と欲の無い願いごとじゃのう

未羽も苦笑し、鍵をともに戻したその時、テーブルの端の方に飾ってある星くずの瓶の中の1枚の羽根が目に写り胸が高鳴った。

金色に輝く、美しい羽根だった。

「これ、いくら?」

未羽は黒猫に値段を尋ねた。

「羽根など売っとらん。欲しければ持っていくがよい」

未羽が金色の羽根を大事に鞄へしまうのを見た黒猫はニヤリと笑っていた。

その後、星くず詰め放題の店で、袋いっぱいに星くずを詰め込むと市場を後にした。

振り返ると、星くず市場は跡形もなく消えていた。

心細くなったその時。

一羽のカラスが近くへ舞い降りた。

やわらかな瞳だった。

どこか懐かしい。

そのカラスの後ろから父の結人が現れた。未羽の帰りが遅いのを心配して探していたら、カラスがここに案内してくれたのだ。

「未羽!」

未羽は結人の元へ駆け寄った。

そして歩きながら、結人に公園に来た事情を説明した。

ただ、星くず市場の話はしなかった。

何となく、話してはいけないような気がしたのだ。


家へ帰ると祖母が驚いた顔をした。

「日傘を探していたの?日傘ならここにあるわよ」

そう言って未羽に差し出したのは、見覚えのある日傘だった。

ただし以前とは違う。白地の日傘の生地には経年劣化のために出来たシミが目立っていたが、布地は濃紺に染め直され、傘の内側には無数の小さなビーズが散りばめられている。

まるで流れ星を閉じ込めた夜空そのものだ。

未羽は息をのんだ。

その輝きは、星くず市場で見た星たちによく似ていた。

「あなた、この日傘、気に入っていたでしょう?」

祖母は微笑んだ。

「この日傘は未羽に使ってほしいの」
祖母の優しい眼差しに、未羽は胸がいっぱいになった。

あの青い鍵。

願いはちゃんと叶っていたのだ。

それも、想像していたより素敵な形で。

ふと鞄をのぞく。

袋いっぱいに詰め込んだ星くずは跡形もなく、ただ羽根だけが残っていた。

ただそれは金色ではなく、古びた黒い羽根になっていた。

未羽はその古びた羽根を取り出し、ゴミ箱に捨てようとした瞬間、結人が立ち上がり、未羽の手からそっと取り上げ囁いた。

「ベンの羽根だ……」

少年時代に親友だったカラス。

ずっと会えなかった大切な友達。

結人は羽根をそっと撫でた。

その姿を見た母の里奈は、ほっとしたように涙を浮かべた。

長い間返せなかった思い出が、ようやく持ち主のもとへ帰ってきたのだった。


その夏。

吹奏楽コンクールで未羽たちは銀賞を受賞した。

仲間たちは少し悔しそうだった。

けれど未羽だけは違った。

銀色は残念な色じゃない。

星が輝く色だ。

あの夜、星くず市場の空を流れていた流れ星の色だ。

帰り道。

未羽は新しい日傘を開いた。

濃紺の夜空の中で、無数の星たちがきらめく。

見上げると、一筋の流れ星が静かに空を渡っていった。

その先で、黒いカラスが一羽、まるで誰かに手を振るように羽ばたいていた。

未羽はそっと微笑んだ。

星くず市場は、きっと今夜もどこかで開いている。🌙✨🪶

未羽のソロパート↓↓↓



#創作大賞2026
#ファンタジー小説部門

#3つのお題に空想のひらめきを

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