BTSが「ARIRANG」で見せたメディア戦略
Forbesから良記事が到来
Forbesから興味深い記事が出ていました。
内容は、BTSの「ARIRANG」プロモーションにおけるメディア選択を、欧米メディア側の目から見たものです(記事のジャンルも「ビジネス>メディア」)。
記事内容の要約
簡単にまとめると、記事の趣旨はこうなります。
「ARIRANG」のプロモは、TVや雑誌特集と言った旧メディアに依存せず、ポッドキャスト系チャンネルなどのデジタルコンテンツを多用し、かつ成功を収めた。
今のBTSのような影響力を持つスターは、話題作りのため、メディア主導の取材を受ける必要がない。むしろ、アクセス数を稼ぎたい旧メディア側が、彼らを追いかけるという力関係の逆転が起きている。
メディアがスピードやクリック数を優先し、まとめサイト(アグリゲーター)化した結果、情報の門番としてのコントロールを失った。
何年も前のBTSであれば、話題性を維持するために、敵対的であったり問題を含んでいたりする可能性のある既成の報道陣に身を委ねる必要があったかもしれませんが、今日では、グループが取材に応じようが応じまいが、同じメディアが勝手に彼らについて記事を書くからです。
これこそが、『Arirang』のプロモーションにおいて、既成メディア側の露出が極めて少なかった理由を説明していると考えられます。
これ同じようなことを他のメディアも言っていて、メディアが取材記事よりネットで手軽に意見を拾ってきてまとめ記事作っちゃう傾向は、どこも変わらないんだなと思ってました。
まあ、コストが段違いですからね……。全記事をサブスクにすると読まれにくくなるだろうし、ネット時代には避けられない展開と言えまする( ;∀;)
ちなみに「皆がそう言っている」は責任逃れが容易な上、取材いらずでSNSからコピペすればいいだけというコスパの良さから、メディアもしょっちゅう使っています。日本では「こたつから出なくても書ける記事=こたつ記事」と呼ばれています。
記事何本いくらという超安値でのライター募集もされていますし、最近ならAI生成記事のテンプレがあると思われます。
私から見るとどうなるか
私は日本人ですが、バンタンを通して韓国や欧米のメディアを見てるので、目線が少し違います。
Forbesが「メディアの役割の変化」と絡めて語っているものをK-POPやバンタンの側から見れば、「既存の業界ルールからの独立」になるんじゃないかと感じます。別にどれが正解かというのはないと思いますが。
会社の方針転換
私はBTS中心にしか見ていないのですが、「ARIRANG」を契機に、HYBEの方針ははっきり変わったように感じます。
韓国メディアに対しては、リリースやツアーに伴う恒例の記者会見を行わないなど、塩対応です。
BTSカムバ周りでのインタビューを見ても、彼らが選んだポッドキャスト系チャンネルや、一部の――光化門ステージにも招待されていた――グローバルメディアや配信サービスが選ばれており、韓国メディアはそれを報道しています。
(中略)
私はこれらの対応を見ていて、HYBEはK-POPを捨てはしないけど、その形は変えていくつもりなんだなと思いました。
要するに、もう主導権を握っているのは「韓国メディアやTV局ではなく、HYBE(とBTS)」であり、韓国音楽番組の一位を獲るために出演する必要はないのだろうという意味です。
K-POPと旧メディアの結びつき
私は既にグローバルスターになった状態のBTSにハマったので、リアルタイムで音楽番組に出たバンタンを見たのは、『Killin' It Girl』のホビだけなのですが、それでも韓国ってTV局が強いんだなと感じてました。
ここから心が汚いことを言うので、ピュアな人はスキップしてください。だって真夜中に事前収録して、出演料は雀の涙で経費は大方事務所持ち、そこに入れるファンも事務所に集めさせてるからほぼファンミーティングみたいになっててアーティストの自腹でプレゼントありとか、何か凄いから!
ホビとかARMYが待つためにスタジオ借り上げまでしてくれてたから!!
収録時間も普通じゃなくて真夜中とかがあります。AMとPM間違ってんのかと思いました。
前にテテが「遅くまでありがとう。暗くて危ないからARMY同士一緒に帰るんだよ」って言ってる映像を見て「優しい💜」って思ったけど、ほんまに危ないわ。遅いのレベルが想像外( ;∀;)
投票アプリで広告回し&課金させて、一回番組に出たら動画を細切れに何回もアップして再生稼ぎ(韓国で出したら次英語字幕版出すとか、同系列別チャンネルで出すとか、色々ある)して、人気のあるアーティストならチッケム動画もガンガン出して配信サービスにも貸して、授賞式商売までできるなんて、利権の塊じゃないですか!?
しかもそんな音楽番組が週5もあるんですよ。多すぎぃ!
私は最初の頃、アーティストが「TV局の廊下でダンチャレしてる」ことにビビってましたが、そのうち拘束時間が長いからそこでやるのが合理的なんだろうなって思うようになりました。
今はHYBEも大きくなったからわかりませんが、若いバンタンの映像とか見てたら廊下で遊んでたり車で歯磨きしたりしてて、目頭が熱くなります。拘束するなら部屋をあげて……! あっ話がズレた。
心が汚い話終わり。メディアは基本セットだから、記事も書き放題、映像も提供し放題だし、韓国メディアって巨大インフラだと思いました。
だから、今回の「ARIRANG」カムバにおけるBTSの旧メディアへの塩対応は、すごいなと感心してます。なかなかできないですよ、ほんとに。
Weverseという自前プラットフォームを育て、マルチレーベルをグローバルレーベルに進化させ、BTSという最強のIPを掲げて放送局への依存を断ち切り、長年苦しめられてきたメディアを蹴り飛ばして世界へ出ていくとか、誰か少年漫画にしてほしいくらいの逆転劇です。
韓国メディアはどう思ってるの
Forbesは「俺らもう門番じゃないよな(自嘲)」スタンスであり、これはメディア論というレンズを通してBTSという現象を見ているとも言えますが、肝心の本国――韓国メディアはどう思ってるんでしょうね。
これまで「ARIRANG」関連の記事を追いかけて来た中では、「メディアの役割」にまで踏み込んだものは読んだことがない気がします。
やたら叩く自国メディアに対して「国の宝やぞ?」と諫めるとこまではあっても、「何故私たちは叩くのか」みたいな構造論は見かけません。メディアの握る「知る権利」や、上からの「叱責して正す」正義感覚の強さが先に出るような印象を受けています。
また、この時に言論の自由を勝ち取り、武器としていく中で、「権力者と戦うことこそが正義である」という感覚が生まれ、儒教的な「富や名声を得た者は手本とならねばならない」という価値観と混ざり合って、「道を外れたら叱責して正すべき」という姿勢を獲得したのではないか、とも思っています。
「バンタンはうちのもの」というウリ感覚も感じますが、それゆえか「BTSが韓国メディアを必要としなくなった時、私たちはどうするか」みたいな論調からの振り返りも見ない気がします。
現状、BIGHITからの一括プレスリリースしかもらえてないのはわかってるはずですが……。
当たり前なんですけど、韓国側から見るとバンタンは身内なんだな、と思います。だからこそ、彼らがグローバル化していく側面が見えづらいのかもしれません。
私は「外人」だから、逆に「HYBE AMERICAが本社になったら何が起こるのか」みたいな妄想を気軽にやっちゃいますが、本国側からしたら理解できない感覚なのかもしれません。知らんけど。
言ってみれば、BTSにはK-POPアイドルとしての面とグローバルスターとしての面があり、それは現状どちらも切り離せないものなので、彼らを理解するには両面から見ていった方が面白いんじゃないかと思いますし、Forbesの記者が見たのはどちらなのだろうかという点が興味深いです。
また、IP規模的に「BTS戦略=HYBEのグローバル戦略最前線」にならざるを得ないので、そこも併せて考えるとより妄想し甲斐があるようにも思います。
あちこちで新しい展開が発生中
BTSの塩対応、いやメディアに対する主導権はどこまで進むのか。
これは特に気にしてなくてもカムバやツアーを見守ってるうちに色んなことがわかっていきそうで、楽しみにしています。
出演幅自体は広がってるので、その中から「出演した番組がエミー賞候補に選んでくれと名乗りを上げた」みたいな展開も生まれていますしね。
旧メディアを素通りして選んだデジタルメディアが伝統ある賞レースに殴り込んでくるとか、幾重にも面白いw
Varietyの記事を見たら「Hot Ones」も予想されてました!
映像編集部門に「“Hot Ones” (YouTube) — “BTS Breaks Another Record While Eating Spicy Wings” by Colin Higgins and Marie Uridia」とありますね。C'mon, Wing!!
とりあえず私は全ポッドキャストが多言語字幕をつけてくれますようにと、ITの神に祈っています。聞き取れない……!( ;∀;)
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