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知らない誰かがくれた優しい彩りの物語【島総①#10】/vol2 お魚天国青波島編/離島の総合的な学習① 

冬休み前の最後の追い込みで、図鑑の方針やデータを子どもたちと仕上げました。
ここからは、私の本格的な出番となります。
そして,図鑑制作を通して,忘れられない出会いがありました。

前回の話 【島総①#09】👇

こんな島です 【離島04編へのリンク】👇👇

離島勤務1年目総合的な学習の時間の実践記録です。
今から約20年以上前の2002年(平成14年)度のことです。
※注:本文中の一部地名や固有名詞・氏名等は仮名(かめい)にしています。


1 アナログが息づく、図鑑づくりの最終ステージ

冬休み前、子どもたちと一緒に図鑑づくりの追い込みを進め、 魚介類のページデータはほぼ完成していました。

机の上に並ぶイラストや原稿、パソコンに映る作成途中のページ。
教室全体が、図鑑づくりに向かうエネルギーで満ちていました。

特に印象的だったのは、デジタルの中にアナログの温かさが残っていたことです。
子どもたちが書いた作文の文字、言葉を選ぶときの迷いがにじむ書き込み、 色鉛筆で描いた魚の輪郭や濃淡。
そうした手の跡が画面の向こうでも確かな存在感を持っていました。

こうして材料がそろい、いよいよ冬休みからは私の出番です。
子どもたちと話し合って決めてきた内容をもとに、 全体の構成を組み上げていく作業へと進んでいきました。


2 子どもたちの学びを地図にする作業

まず考えたのは、この図鑑をどのようなサイトマップで形づくっていくかでした。
これは子どもたちとの話し合いで方向性を決めており、その内容を土台にしながら私の手で組み上げていく作業です。

子どもたちにも確認し、
「ここから先の細かいレイアウトは先生に任せてもらってもいいか?」
と了承を得て、冬の机の上で制作が始まりました。


表紙は、水色を基調にした海と空を思わせる壁紙にしました。
タイトルは「おさかな天国青波島(仮名) 海辺のデジタル図鑑」。
そして制作校として「○○県南浦市青波小学校(仮名)5・6年生」と明記しました。

続いて、それぞれのページに飛ぶリンクを順に配置しました。
【サイトマップ一覧】

○青波島の紹介  日本地図 → 県の地図 → 島の写真
○この図鑑について  図鑑制作の理由、活動の写真、説明
○メンバー紹介  自分を魚介類に例えたイラスト、ニックネーム、理由、好きなこと
◎デジタル図鑑  
・あいうえお順の魚一覧(34種類)
・アンケート結果ベスト10(1〜5位は予想形式)
・変わった呼び名の魚一覧
・種類別分類(目ごとの一覧)
○クイズコーナー  8問の問題と正解、ヒントページへのリンク
○私たちの願い  制作の感想と、家庭のインターネット環境の実情

表紙の一部

個別ページは、ひな形コンテストで決めた形式に沿って、 名前、分類、特別な呼び名、特徴、捕り方、私たちのおすすめ料理、写真で構成しました。
道具の写真や手描きイラストが混ざることで、ページは一段と豊かな表情をもちました。

こうした構成が画面の中でひとつにつながったとき、 半年間の学びが図鑑という舞台に立ち上がってくるのを感じました。


3 島へ戻った大晦日──図鑑への最後の一歩

日直から戻り、自宅で図鑑の仕上げ作業を進めていたときのことでした。
ページを一つひとつ確認しているうちに、どうしても足りないデータがあることに気づきました。
何度見返しても見当たらない。
このままでは、完成した図鑑の中に一つだけ“穴”が残ってしまいます。

翌日は大晦日でした。
それでも、島へ行って取ってくるしかありませんでした。
幸い、天気予報は悪くありません。
離島では、車でさっと取りに行くようなわけにはいかず、 行きたいときにすぐ動けないもどかしさがあります。
それでも、必要なものが島にある以上、動くしかありませんでした。

明日の朝一番の船に乗ろう。 そう決めて、すぐに準備に入りました。

翌朝、冬の澄んだ空気の中で船に乗り込み、島へ渡りました。
学校へ走り、棚や机の中を探し、ようやく目的のデータを見つけた瞬間、 胸の奥に静かな安堵が広がりました。
この記録については、離島の小学校編第23話にも記しています。

あの小さな往復がなければ、図鑑は完成しませんでした。 冬休みの静かな校舎で、そのことを強く感じました。


4 画面の向こうから返ってきた温かなひと筆

冬休みの間、何度もページを開きながら図鑑の細部を整え、 なんとかマイタウンマップ・コンクールの締め切りに間に合わせる形で “ひとまずの完成”にたどりつきました。

その作業中に、偶然、海の生き物を描いた素材サイトを見つけました。
作者の方は釣りが好きで、イラストは本職ではないそうですが、 どの絵にも海への愛情がにじんでいて、図鑑の世界観にもよく合っていました。


そこで使えるアイコンをページに配置していきましたが、 掲載されている種類は多くなく、三十四種類のうち対応できたのは一部だけでした。
並べてみると、アイコンがある魚とない魚が混ざり、 どうしても“歯抜け”のように見えてしまうページがありました。
提出はできたものの、そのわずかな空白が心に引っかかっていました。

しかし、取りあえず素材を使わせていただいたお礼として,図鑑の完成報告とURLを添えて、作者の方にメールを送ることにしました。
子どもたちが島で調べ、まとめてきた姿を少しでも見ていただこうと思ったのです。

数日後、返信が届きました。
「アイコンが少なくて寂しく感じたので、足りない魚を描き足しました」
その一文に、思わず息をのみました。

急いでサイトを開くと、 伊勢海老、ウニ、カメノテ、マツカサウオ…… これまでなかった魚たちのイラストが、新たな仲間としてずらりと並んでいました。
子どもたちの図鑑のために、わざわざ時間を使って描いてくださったことを思うと、 胸の奥がじんと熱くなりました。

制作してくださったアイコンの数々

冬休みの苦労の先で、 海のむこうの誰かがそっと支えてくれていた・・・。
そう思える出来事でした。


5 子どもたちが見つけた「海の向こうの応援」

三学期。
完成した「海辺のデジタル図鑑」を教室に映すと、 子どもたちは次々にページを開いては歓声を上げました。
自分たちで考えた分類も、ベスト10も、クイズも、 半年間の学びが形になって並んでいるのがうれしくてたまらない様子でした。

そして、新しく加わった魚アイコン。
画面を食い入るように眺めては「かわいい」「本物みたい」と声を弾ませました。

そこで私は、冬休み中の出来事を伝えました。
図鑑のURLを送った素材サイトの作者の方が、 足りない魚を子どもたちのために描いてくださったこと。
釣りが好きで、イラストは本業ではないにもかかわらず、 心を込めて仕上げてくださったこと。

話を聞いた教室はしんと静まり返り、 その後、「お礼を送りたい」と全員が口をそろえました。
感謝のメールを作る子どもたちの表情は、 どこか誇らしげでもありました。

さらに後日、作者の方はご自身のサイトのコラムで
「島の子どもたちががんばっていたので、足りないアイコンを描いて提供した」
と書いてくださいました。

画面の向こうの誰かが、 この小さな島の学びを見守り、力を貸してくれた。
そのつながりこそ、図鑑づくりが残してくれた大きな贈り物だったのだと思います。


▶離島の小学校編11へ続く・・・👇👇

解説編はこちら👇👇

おさかな天国離島の総合的な学習の時間マガジンはこちら👇👇👇


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