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「完成」の先にあった、もう一つの宿題【島ICT#11】/離島のデジタルデバイド編

前回は、当時の島の通信環境という「動かしがたい実態」を見つめた回だった。
今回は、デジタル図鑑が完成し、コンクールへの出品を経て、ようやく次の一歩を踏み出した頃の記録である。
完成の先で、学びをどう動かそうとしていたのか。 その試行錯誤を書いている。

前回の話👇

デジタル図鑑の完成はこちら👇👇

離島の小学校で,一小学校教諭が当時の島のデジタルデバイドに挑戦しました。
今から約20年以上前の2002年(平成14年)年度からのお話です。
※注:本文中の一部地名や商品名等は仮名(かめい)にしています。


1 図鑑完成後に見えてきた、もう一つの目標

デジタル図鑑は完成した。
総合的な学習の時間として、子どもたちは確かな成果を形にした。
しかし、私の中では、どこか落ち着かない感覚が残っていた。
理由ははっきりしている。

当時進めていた二つの報告・・・ デジタルボードのモニター報告と、研究助成の報告書。
その最初の申請書には、実践の成果だけでなく、当初掲げた目標が明記されていたからだ。
そこには、こう書いていた。

児童たちがふるさとの自然や生活のすばらしさを再発見し、 島内LANを構築して地域住民に情報発信を行う。 そのことにより、発信の喜びや表現力、自信を育てる。 さらに地域の方々との相互交流を図り、豊かな心情と交流への意欲を高める。

研究助成の申請書より

つまり目標は、 「総合的な学習の実践」「島内イントラネットの構築」 この二本立てだった。

図鑑づくりは形になった。
だが、もう一つの柱・・・島の人に見てもらう仕組みは、まだ手つかずのままだった。

報告書の締切は、刻々と近づいていた。
「このままでは終われない」 そう思い、私はまずできることから動くと決めた。


2 日常の中で踏み出した最初の一歩

行動のきっかけは、意外なほど日常の中にあった。
ある日の昼休み、校長先生が 「漁協に用があるから行ってくる」 と声をかけてきた。
来週、市へ提出するPTAの陳情書類。
その書類に、組合長の印をもらいに行くという。

私は、その「ついで」に同行させてもらえないかとお願いした。
頭の中には、ひとつの考えがあった。

連絡船の待合室に、パソコンを置けないだろうか。

連絡船の待合室

島の玄関口ともいえる場所。
島の人も、島外から来た人も必ず通る場所。
そこに、子どもたちがつくったデジタル図鑑を置く。

インターネットが見られない島だからこそ、 「島の中で見られる仕組み」が必要だった。


3 思いを伝えただけで開いた道

漁協で対応してくださったのは、専務さんだった。
私は、少し緊張しながら説明した。

そのパソコンには、 子どもたちが総合的な学習の時間でまとめた 島の魚のデジタル図鑑を入れたいこと。
町の人や、島を訪れた人に、 子どもたちの学びの様子を知ってもらいたいこと。
説明を終え、返事を待った。

完成してインターネットで公開している図鑑

返ってきた言葉は、驚くほどあっさりしていた。

「いいですよ。」

拍子抜けするほどだった。
だが、その瞬間、胸の奥が少し軽くなった。
大きな設備も、難しい交渉もいらなかった。
「やってみたい」と伝えただけで、道が開けた。

これで、少なくとも一歩は進める。
島のICT化に向けて、ほんの小さな前進だったが、 確かな前進でもあった。


4 発信しているのに、見られていない現実

考えてみれば、不思議な状況だった。
子どもたちは、インターネット上にページを公開している。
だが、そのページを、島で暮らす当事者や関係者は見ることができない。

この矛盾は、ずっと気になっていた。

だからこそ、 「島の中でどう見せるか」 「島の人にどう届けるか」 については、まだまだ考える余地があると感じていた。

メーリングリストで意見を求め、 他の実践者の工夫を知りたいとも思った。
そして私は、この問いを持ったまま、外に出てみよう と考えるようになった。

自主的な研修会に参加し、 この実践と悩みを話してみよう。
何かヒントが得られるかもしれない。

その決意が、次の動きへとつながっていく。
この続きは、別の場所で書くことにしたい。


5 うまくいかない日々も含めての実践

そんな折、五年生教室に設置していたパソコンの調子が悪くなった。
NECのPC-9821V10。
今となっては、かなり古い機種である。

前任校にいた頃、ハードディスクだけは4GBに換装してあった。
モニタの不調で、パーツ取り用に保管していた別の本体と入れ替え、 このハードディスクを活かせないかと考えた。

ついでに、システムを再インストールしようとした。
しかし、どうしてもハードディスクが認識されない。
何度試しても状況は変わらなかった。

ひょっとすると、ディスク自体が寿命なのかもしれない。
そう考え、その日は作業を断念した。

島でのICT実践は、こうしたことの連続だった。
思いついた方法を試し、 うまくいかなければ立ち止まり、 また別の手を考える。

連絡船の待合室にパソコンを置かせてもらう話も、 教室の古いパソコンの修理も、 どちらも「完成」と呼べる段階には程遠い。
それでも、 学びを島の中でどう見せるか どうすれば、届かない状況を少しでも動かせるか という問いは、以前よりはっきりと形を持ち始めていた。

一人で考え続けるには、限界も感じていた。
外の実践を知りたい。
同じような悩みをもつ人の話を聞いてみたい。

その答えは、まだはっきりとは見えていなかったが,私はとにかく行動を起こすことにした👇

次回(離島のデジタルデバイド編12)に続く・・・

これまでの経緯がわかる島のデジタルデバイド編マガジンはこちら👇👇


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