5分間の回線に希望をのせて【島ICT#08】/離島のデジタルデバイド編
前回は、島の学校とICTのこれからを見つめた。
あれから少し、日常の時間が流れた。
再び向き合うのは、遅くて、でも確かな“島の通信”だ。
前回の話👇
勤務した離島の当時のICT環境👇👇
離島の小学校で,一小学校教諭が当時の島のデジタルデバイドに挑戦しました。
今から約20年以上前の2002年(平成14年)4月からのお話です。
※注:本文中の一部地名や商品名等は仮名(かめい)にしています。
1. トラブルの向こうに、“人の声”があった
敬老会の準備でデジタルボードを使う予定があった。
学校用のノートパソコン(普段は校長先生が使っているWindows XP機)に接続してみたが、ボードが認識されない。
何度か試しても反応はなく、画面には沈黙が続いた。
当日、ボードを直接操作する予定はなかったため、急ぐ必要はなかったが、念のため業者の担当者にメールを送っておいた。
すると昼休み、電話がかかってきた。
「状況、だいたいわかりました。○○をもう一度確認してみてください」と穏やかな声が伝わる。
言われたとおりに操作すると、画面が動き出した。
単純なことだった。
ドライバの一部をインストールし忘れていただけだったのだ。
離島にいると、こうしたサポートの一つひとつが身にしみる。
物理的には遠くても、「すぐに応えてくれる人がいる」という事実が、どれほど心強いことか。
通信が届くということは、単にデータが通ることではなく、人と人の距離を埋めてくれることなのだと、あらためて感じた。
2. 1日5分の“世界”
宿舎からのインターネット接続は、テーブル代わりのこたつの前。
そのいつもの場所に座っての5分間を思い出す。
携帯電話をモデム代わりにしてプロバイダにダイヤルアップするしかなかった。
使えるキャリアはNTTドコモのみ。
携帯電話に通信ケーブルをつなぎ、ノートパソコンから接続する。
通信速度は9.6kbps。
しかも料金は「通話」と同じ扱いで、1分およそ40円。
つまり、5分つなげば200円。
一晩で数回試すだけで、1,000円を超えてしまうこともあった。
それでも、パソコン通信をやめる気にはなれなかった。
当時のドコモには「無料通話分」という仕組みがあり、月6,000円ほどのプランで**約60分分(2,400円相当)**が含まれていた。
その残り時間を毎晩確認しながら、ほんの5分だけ接続してメールを受信する。
そのわずかな時間が、情報とつながる貴重な瞬間だった。

困るのは、不要なメールだ。
広告やダイレクトメールを受信すると、それだけで数十秒、通信料が加算される。
「時間とお金を奪われたような気がして腹が立つ」と日記に書いたのは、本音だった。
そこで頼りにしていたのが、当時のドコモ携帯にあった「リモートメール」というiモードサービスだ。
これは、プロバイダのメールを携帯電話で代理受信し、件名や本文の一部だけを確認できる仕組みだった。
いまで言えば、Gmailの通知で「件名だけ先に読む」ような感覚に近い。
宿舎ではまず携帯で重要なメールを見きわめ、必要なものだけパソコンで開く。
そうやって,いつもの場所に座って,通信料を節約するのが、小さな知恵だった。
3. “便利”ではなく、“必要”なもの
そんな日々の中で、ある記事を見つけた。
「離島などのADSL進出を行政が積極支援──○○県が情報化計画」 というニュースだ。
近隣の県が、離島への情報インフラ整備に動いている。
胸が熱くなった。
自分の県では離島は少なく、同じような動きは望めないかもしれない。
それでも、島で暮らす人がいる限り、通信の手段を確保するのは行政の責任だと思う。
情報インフラは、こうした地域ほど生活に直結する。
天気予報を知ること、船の運航を確かめること、家族に連絡すること・・・ どれも「便利」ではなく「必要」なのだ。
情報が届くということは、暮らしが守られるということだ。
島にとってICTとは、単なる技術ではなく、人が生きるための道具なのだと思う。
4. 5分の通信がつないだもの
メールひとつ送るのに数分かかり、通信料を気にしながら画面を見つめていたあの頃。
それでも、確かに世界とつながっていた。
たった5分でも、誰かの声が届く。
その瞬間に、「この島でも学びは広がる」と信じることができた。
“通信料の島”にあったのは、不便さだけではない。
離れた場所からすぐに電話をくれた業者さんや、メールで支えてくれた人たちの存在があった。
つながりを求めて動く人の手のぬくもりが、この島にも届いていた。
たった5分の通信でも、その向こうには確かな人の思いがあった。
次回へ続く・・・👇
当時勤務していた 離島の小学校はこんな島でした。👇👇
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