「へぇ」が返ってきたポスターセッション【研#13】/研修で出会う探究の風景
離島の小学校での総合的な学習の時間では、地域と関わる実践を続けていた。
2003年度には、その中で取り組んでいたアワビの中間育成を、外に向けて伝えてみたいと考えていた。
「2005年の教室を考える会」には前回も参加しているが、今回はポスターセッションという新しい発表形式に挑戦することにした。
一方的に話すのではなく、目の前の相手とやり取りしながら伝えるその場に、自分の実践を持ち込んでみたいと考えたからである。
前回の話👇👇
初めてこのページに来られた方へ
「研修で出会う探究の風景」は、教師としての学びの記録です。 教育公務員特例法には、「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」と記されています。教師にとって学びは、仕事の一部でもあります。
私自身、これまで校内研修や教育センターでの研修、研究大会、学会、そして自主研修など、さまざまな学びの場に関わってきました。 そこには毎回、出会いがあり、葛藤があり、ときに自分の教育観が静かに塗り替えられる瞬間がありました。
このシリーズでは、そうした研修の風景を綴っています。 現在進行中の連載とも時系列でつながる形で、掲載しています。
今回は勤務していた離島の小学校(へき地2級)2年目、2003年頃の記録です。
1.週末の帰宅、出発前夜の静かな焦り
島の小学校での勤務は続いているが、週末になると自宅へ戻る生活が続いている。
今回も、翌日の自主参加の研修に向けて、島から金曜の3便で本土へ戻ってきた。
「2005年の教室を考える会」は、これからの教室のあり方を考える実践者中心の研究会である。
講演を聞くだけではなく、ワークショップやポスターセッションを通して、自分たちで考え、対話しながら学びをつくっていく場として位置づけられていた。
2003年11月、この「2005年の教室を考える会」に参加するための上京である。
特別な遠征という高揚感と持ち物の準備によって、少しずつ気持ちが引き締まっていく。
※直前の勤務の状況👇
帰宅後は、翌日のポスターセッションに向けたプレゼンの仕上げに取りかかった。
島での実践をどう伝えるか考えた結果、「トリビアの泉」風の構成にまとめている。
(この「へぇ~」がしょっちゅうこの頃いろんなところで出てくるのは、よっぽどブームだったんだろうと、改めて思う笑)
作業が終わったのは、かなり遅い時間だった。
明日は早起きしなければならないと分かっていながら、結局この時間になってしまった。
起きられるかどうか、少し不安が残るまま、その夜は終わった。
2.初対面の再会と、ポスターセッションという場
翌朝は、朝一番の飛行機で羽田へ向かった。
今回は、モノレールとJRが共通で使えるSuicaカードを購入している。
今では当たり前のことであるが、当時は移動が少しだけ軽やかになったことを思い出す。
受付は12時からだったため、その前に昼食を兼ねて、ネット上で交流のあった先生と、そのお友達の先生に会うことになっていた。
この先生とは、自身のホームページ「熱中時代」を開設した当初からのつながりがある。
しかし、これまで実際に会ったことは一度もなかった。
さらに、この方には、大学院の修士論文を書く際のデータ調査にも協力していただいている。
忙しい時期にもかかわらず力を貸してもらった経緯があり、そのことへの感謝はずっと心に残っていた。
こうしてようやく実現した対面だった。
わずかな時間ではあったが、直接言葉を交わせたことが、素直にうれしかった。
会場に入り、いよいよポスターセッションが始まる。
今回が初めての経験であり、始まるまではかなり緊張していた。
発表は、島に勤務してからの実践を「トリビアの泉」風に構成したものだった。
始まってからは、汗をかきながら声を張り上げ、とにかく一生懸命に伝えた。
※プレゼン画像の一部👇

持参した小道具の「へぇ〜ボタン」も使ってみたが、会場の熱気の中ではほとんど響かないほどだった。
さらに、持っていったアワビの貝殻を出し忘れ、途中で慌てて取り出すという場面もあった。
それでも、目の前で聞いてくれる人がうなずいたり、「へぇ」と反応してくれたりする。
その様子を見ながら、一方的な発表ではないよさを実感していた。
こうして聞いてもらえると、自分も自然と熱く語れる。
その感覚は、これまでの発表とは明らかに違っていた。
結果として、時間いっぱいまで話し続けてしまい、質疑応答の時間は取れなかった。
緊張は大きかったが、終わったあとは、聞いてもらえたという充実感と、少しの放心状態が残った。
この経験は、自分の中で小さくはなかった。
一方的に伝えるのではなく、目の前の相手とやり取りしながら伝えていくことで、これほどまでに言葉が引き出されるのかと実感したからである。
このような場は、総合的な学習の時間の中でも、子どもたちに経験させることができるはずだ。
いや、むしろ、子どもたちにこそ必要な学びなのではないかと感じていた。
そのためには、まず教師である自分自身が体験しておく必要がある。
今回のポスターセッションは、その意味でも大きな一歩だった。
3.24時間の研修が残したもの
前日(土曜)の12時から当日(日曜)の12時まで、24時間にわたる研修は、まさにジェットコースターのような展開だった。
めまぐるしく進んでいく中で、この会そのものに込められた仕掛けの大きさを改めて感じていた。
今回はポスターセッションだけでなく、ワークショップも開催された。
前回参加したときと比べて、その意味についても考えることができたように思う。
※前回参加したときの様子👇
ただし、問いに対する「答え」を出すことは簡単ではない。
グループで議論を重ねても、自信を持って言える結論にはなかなかたどり着かない。
それでも、考え続けること、協働で作り上げていくこと、その過程そのものが大切なのではないかと感じていた。
夜には懇親会も開かれ、全国各地から集まった実践者と直接話す機会があった。
それぞれの現場での取り組みや悩みを聞きながら、自分の実践と重ねて考える時間はとても刺激的だった。
同じように現場で試行錯誤している仲間がいることを実感できたことは、大きな支えにもなった。
こうしたつながりが生まれることも、この会の価値の一つなのだと感じていた。
では、自分に何ができるのか。
その問いはまだ曖昧なままだが、少なくとも、先を見通しながら、目の前の地域、保護者、子どもたちのために実践を続けていくしかない。
この場での出会いから、多くのことを学んだ。
4.秋葉原と「へぇボタン」、教室へ戻る
研修を終えた帰り、最終便の飛行機は取れなかった。
そのため、少し早い便で帰ることになったが、わずかな時間を使って秋葉原に立ち寄った。
店を見て回っていると、「トリビアのへぇボタン」を見つけた。
キーホルダーとして持ち歩けるタイプの、小さなボタンである。

これは島の子どもたちへの土産にしようと思い、購入した。
教室に戻って渡すと、子どもたちはとても喜んでいた。
もともと、朝の会の1分間スピーチの中で、「これがあればいいのに」と話していたことがある。
実際に使い始めると、子どもたちは話をよく聞くようになり、発表する側も内容を工夫するようになった。
ほんの小さな道具だが、教室の空気を変える力がある。
そんな手応えを感じながら、日常の実践へと戻っていった。
次回へ続く・・・
これまでの研修編はこちら👇👇
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