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【島ICT#04】やってきた新兵器──離島の教室に“電子黒板”が現れた日/離島のデジタルデバイド編

LANを整え、中古パソコンを揃えたことで、島の教室の風景は少しずつ変わっていった。 子どもたちは、画面の向こうから得た情報を“使って”考えたり、意見を形にしたりするようになり、「学びの道具」としてコンピュータが動き始めていた。
そして2002年の夏、その挑戦をさらに一歩進める存在が現れる。 ただの機械ではない、授業の可能性を広げる“新兵器”──デジタルボードである。

前回までの話👇

勤務した離島の何がデジタルデバイドか👇👇

離島の小学校で、一小学校教諭が当時の島のデジタルデバイドに挑戦した記録です。 今から約20年以上前、2002年(平成14年)4月から始まった物語の続きになります。

※注:本文中の一部地名や商品名等は仮名(かめい)にしています。



1. 新兵器、デジタルボード登場!

やがて「総合的な学習編」にも登場するのだが、ICTの授業を進めていくうえで、実に頼もしい“秘密兵器”が島の学校にやってきた。 それが「デジタルボード」と呼ばれる機器である。

見た目はただのホワイトボード。ところがパソコンの画面をプロジェクタで投影し、専用ペンを使うと、まるでその画面に直接触っているかのように操作ができるという代物だった。 今ではプロジェクタを使わずにPCと直接つながるモニター型の電子黒板が主流だが、当時としてはこれが最先端の技術だった。

ただし、使い勝手は今のように洗練されていたわけではない。投影映像とボード面の位置を細かく合わせないと正しく操作できず、プロジェクタの焦点距離が少しでも変わると、また一から位置調整が必要になった。
それでも、板書と操作が一体化するこの機器は、当時の教室から見れば未来そのものに見えた。 しかも、キャスター付きで画面が大きく、移動も簡単。何なら「ホワイトボードとしても普通に使える」というおまけ付きだった(実際、それで使っていた時間のほうが長かった気もする…笑)。

デジタルボード

2. 50万円の未来を“借りて”みた

価格はおよそ50万円。離島の小規模校にとっては、どう頑張っても手が届かない金額である。 ではなぜそんな高価な機器がやってきたのかといえば、実は「モニター」として無償で借り受けたものだった。新商品の実証校として一定期間使い、活用報告書を提出するという条件つきである。

4月か5月ごろ、ある視聴覚教育の専門誌でモニター校募集の記事を見つけた。 「どうせ当たらないだろうな」と思う気持ちがなかったわけではないが、それでも“ダメ元”では済ませなかった。 授業でどのように活用するのか、子どもたちの学びがどう変わるのか──自分なりにできる限り具体的な授業実践計画書を書き上げた。 夜遅くまで何度も推敲を重ね、「これなら伝わるはずだ」と思えるまで書き込んだのを今でもよく覚えている。
だからこそ、当選の知らせを受け取ったときは、驚き以上に「努力が報われた」という充実感があった。 ちょっとした宝くじに当たったような気分ではあったが、それは“運”だけではなく、自分の挑戦の成果でもあったのだ。


3. 昭和のエンジンで未来を運ぶ

このデジタルボードが届いたのは7月の中頃だった。 だが、ここは離島。物が届くというのは、それだけでひと仕事である。 本土から連絡船までは宅配業者が運んでくれるが、島に着いてから先は自力でなんとかしなければならない。

一応、島内にも宅配便を扱う人はいるが、おばちゃんが一人で配達している程度で、大きな機器など運べるはずもない。 いや、「運べない」というより、「そんなの持てるわけないじゃない」と笑いながら言われたほうが近い。 そのやり取りが妙に印象に残っている。

「大きな荷物が届くけど、どうする?」 そんな電話が漁協からかかってきた。結局、校長先生にお願いして1000円を払い、漁協の“モートラ”(エンジン付きの荷物運搬機)を出してもらうことになった。
バタバタと大きな音を立てながら、未来のICT機器が“昭和の風情”そのままの運搬機に揺られて学校へとやってきた。 最新の技術がやってくる道のりが、いちばんアナログというのも、離島らしくて面白い。


4. 汗だくメーカーさん、島に奮闘す

機器が到着してから2〜3日後、横浜からメーカーの担当者がやってきた。 あらかじめ「朝の1便で来て午後の3便で帰ること」「昼食は用意しておくこと」といった段取りを伝えておいたが、滞在時間はかなりタイトだ。 担当者は機器の組み立て、初期調整、機能確認、操作方法のレクチャーなどを、汗をかきながら一つひとつ丁寧にこなしてくれた。 慣れない船旅や時間に追われながらも、真剣な表情で機器に向き合うその姿には、こちらも頭が下がる思いだった。

都会の学校とは勝手の違う現場に、驚きと新鮮さを感じていた様子も印象的だった。 帰り際、担当者は「こういう場所にも教育の最前線があるんですね」とぽつりと言った。 その言葉が妙に胸に残った。離島という場所は、ICTのような“新しい風”が届きにくい場所である。 だからこそ、一つの機器が持つ意味は、都市部の学校とは比べものにならないほど大きいのだ。


5. 学びの新しいステージへ

使い方の説明は子どもたちも一緒に聞いていたが、最初はあまりピンときていない様子だった。 そもそも「画面を触って動かす」という体験自体が初めてだったのだから、無理もない。 それでも、教室の片隅に鎮座する“新兵器”は、それだけで子どもたちの興味を引きつけていた。

「これを使えば、授業がもっと面白くなるかもしれない」 「パソコンの世界が、もっと近くなるかもしれない」

そんな予感が、子どもたちの中に少しずつ芽生えていった。 そしてこのデジタルボードの導入は、総合的な学習の時間の推進に確かな弾みをつけ、今後のICT活用の可能性を大きく広げるきっかけとなったのである。


第5回へ続く

赴任した離島とは「離島のの小学校編」はこちらから👇👇👇


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