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子どもを主語にしたICT化──プロジェクトI【島ICT#13】/離島のデジタルデバイド編

デジタル図鑑(知らない誰かがくれた優しい彩りの物語)は完成した。
だが、島の人にどう届けるかという問いは、まだ残っていた。
「2005年の教室を考える会」(島の問いを抱えて、2005年の教室へ)で受けた刺激を抱えたまま島に戻り、 私はその問いを、具体的な行動に変え始める。
「子どもを主語にしたICT化── プロジェクトI」は、ここから本格的に動き出す。

◆本シリーズの背景(初めて読まれる方へ)
今から20年以上前の2002年。
離島の小学校に、一人の教師が赴任した。
島の日常生活では、インターネットを使うことができなかった。
家庭でも職場でも、情報はすぐに調べられるものではなかった。
島の外の出来事を知るには、時間と手間がかかった。
必要な情報は、あとから届くものだった。

学校もまた、その制約の中にあった。
インターネットを常時自由に使える環境はなかった。
調べ学習で問いが生まれても、その場で確かめることは難しかった。
学びを外とつなぐ手立ては、限られていた。

そうした状況の中で、教師は子どもたちの総合的な学習の時間を通して、学びを島の外へ、そして島の人たちへ届けようとした。
限られた条件の中で、インターネットやICTを手段として用いた。
同時に、学びを支えるために、島の通信環境そのものをどう整えるかにも向き合っていった。
これは、その過程で積み重ねられた、小さな試行錯誤の記録である。

※なお,地名・商品名等は一部仮名としている。


1 「プロジェクトI」と名づけた理由

この頃、島で進めている一連のICTの取り組みに、自分なりの呼び名が必要だと感じるようになった。
そこで、少し照れくさいが、NHKの番組にならって「プロジェクトI」と勝手に名づけることにした。

目指しているのは、通信インフラが十分に整っていないこの島で、学校だけでなく、地域全体が本土並みに情報へアクセスできる環境をつくることだ。
一教師の立場で、あまりにも大きな目標に見える。
正直、達成できるかどうかは分からない。

それでも、たとえ究極のゴールに届かなくても、そこへ向かうための「足がかり」だけでも残せたらいい。
そう考えるようになっていた。

地域の人たちに、 「ITがあると、ちょっと便利だ」 「意外と悪くない」 そう感じてもらうこと。
その実感がなければ、どんな仕組みも根づかない。
この取り組みは、学校から地域へ向けた情報発信であり、新しい連携の形を探る試みでもあった。

プロジェクトは、すでに動き出している。
三年計画のうち、一年目は終盤に差しかかっていた。

一年目の目標は、地域への発信。
子どもたちの学びや日常を、イントラネットを通して地域に届ける。
そのための環境整備が、いま、急ピッチで進んでいた。

前夜には一つの朗報も舞い込んでいた。
この計画にとって、確かな追い風になる話だった。

「プロジェクトI」のIは、IT、インターネット、イントラネット、ISLAND。
そして、勤務する島の頭文字でもある。

だが、主役は機器でも回線でもない。
あくまでも子どもたちだ。
地域の環境整備は手段にすぎない。

子どもたちにつけたい力のために、このプロジェクトは動いている。


2 研修の余韻が、教室の道具になる

「2005年の教室を考える会」で、思いがけない収穫もあった。
抽選会で手に入れたのが、「マグネットスクリーン」という教材だった。
黒板にマグネットで貼り付けられる、液晶プロジェクター用のスクリーン。
しかも、ホワイトボード用のマーカーで書き込みもできる。
つまり、黒板に貼り、映し、書き、消し、そのまま授業ができる。
会場でも一番人気の品で、運よく手に入れることができた。

自宅に戻ると、すでに届いていた。
ただ、一つ問題がある。 小学校にはプロジェクターがない。
これまで必要な場面では、その都度、隣の中学校から借りてきていた。

スクリーンがあるなら、いっそ自分用にプロジェクターを買ってもいいのではないか。
最近は価格も下がり、ノートパソコン程度になってきているという話も聞く。
これがあれば、校内だけでなく、出張先でのプレゼンテーションにも使える。

すぐに決断はしなかったが、研修で得た刺激が、具体的な「道具の検討」にまで及んでいることに、自分でも少し驚いていた。


3 一人ではできないから、前に進めた

この日は、朝から慌ただしかった。
保護者宛の文書作成。
迫る締め切り。
細かな校務が、次々と重なっていた。

そんな中でも、校長先生が動いてくださっていた。
プロジェクトIでアンテナを設置する予定の、コンクリート柱の所有者への許可。
電話をかけ、確認を重ね、必要な手続きを一つずつ進めてくださっていた。
その結果、無事に設置の了承が得られた。
これを受けて、私は業者へ追加部品を含めた再見積もりを依頼するメールを送った。

調整の電話をしてくださっている校長先生

さらに、昼には漁協の専務さんから電話が入った。
譲り受ける予定のパソコンの、再セットアップ用のCDを渡したいという。
自分は動けなかったが、養護教諭の先生が代わりに受け取りに行ってくださった。

一人ではできない。
だが、多くの人に支えられている。

その事実を、この日は何度も実感することになった。
この気持ちに応えなければならない。
そう、自然と思えた一日だった。


4 静かに進む、最後の準備

プロジェクトIは、派手な成果がすぐに見える取り組みではない。
だが、確実に、少しずつ前へ進んでいる。

地域へどう届けるか。
誰に、どう見てもらうか。
どうすれば「自分ごと」になるか。
その問いを抱えながら、環境整備は最終段階へと向かっていた。

機器をそろえる。
許可を取る。
人と調整する。
一つひとつは地味な作業だ。
だが、どれも欠かすことはできない。

プロジェクトIの一年目は、いま、最後の大詰めを迎えている。
子どもたちの学びを、島の中へどう開いていくのか。

その答えは、もうすぐ形になろうとしていた。

離島のデジタルデバイド編14へ続く・・・👇


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