わたしたちのnote〜スキからはじまる心の物語〜第4章
第4章|言葉の交差
「それぞれのnote、それぞれの人生」
春、夏、秋、冬。
季節が巡るたびに、彼女はひとつ、またひとつとnoteに記事を重ねていった。
最初は手探りだった投稿も、次第に“自分の居場所”として確かなものになっていく。
彼女にとって、noteはただ文章を書く場所ではなかった。
誰にも見せられない感情を、そっと置いておく避難所だった。
子どもが熱を出した夜、職場で悩みを抱えた日、
ふと涙がこぼれそうになった帰り道。
noteに綴られた彼女の文章には、声なき叫びと、静かな希望が入り混じっていた。
そして、彼の存在があった。
投稿するたび、彼から「スキ」が届くことがあった。
それは、“読まれている”というより、“見守られている”という感覚に近かった。
「あなたの投稿を読んで、静かに背中を押されました」
そんなコメントが、時折彼から届いた。
彼女はそのたびに、自分の言葉が“誰か”に届いていることを思い出す。
それだけで、次の日を生きる理由になった。
彼もまた、彼女の投稿を追っていた。
ふとした夜。
ひとりきりでリビングに座っているとき、
彼はnoteを開いて、彼女の最新の投稿を探す。
そこには、何気ない日常が綴られているだけだった。
でも、その“何気なさ”に、彼は毎回、心を掴まれていた。
ある日、彼女が投稿にこう書いていた。
「ふと、誰かに『大丈夫?』って聞かれたくなる夜があります。
でも聞かれたら、きっと笑って『大丈夫』って言うんですけどね。」
その言葉が、彼の胸に残った。
「大丈夫」と言いながら、「大丈夫じゃない」とき。
誰にでもある、そういう夜の重さを、
彼女はあっけないほど自然に言葉にしていた。
それに対して、彼は短くコメントを残した。
「“大丈夫”の裏側にある気持ち、
ちゃんと届いていますように。」
彼女は返事を書かなかった。
でも、次の投稿にはこんな一文があった。
「noteの中には、風が通るような言葉がある気がします。
それに触れると、少しだけ呼吸が深くなるんです。」
まるで、彼の言葉にそっと応えたような投稿だった。
ふたりのやりとりは、あくまでも静かだった。
頻繁なコメントのやりとりはない。
ただ、お互いの投稿に「スキ」を送り、
必要なときだけ、ごく短い言葉を置く。
彼女が病気で入院したとき、投稿がしばらく止まった。
そのあと、ふいに投稿が再開されたとき、
彼は思わず涙が出そうになった。
「まだ慣れない日々ですが、
このnoteだけは、自分の居場所にしておきたいと思っています。」
彼は、その投稿に
「おかえりなさい」とだけ書いた。
数日後、彼女の投稿にはこう綴られていた。
「“おかえり”って、こんなにやさしい言葉だったんですね。
言葉って、誰かの一言で、また呼吸できるようになるものなんですね。」
彼はその文章を、何度も何度も読み返した。
季節は巡り、
彼は父を亡くした。
そのことは、誰にも話していなかった。
けれど、noteにはほんの数行だけ、心を預けた。
「今日の空は、どこまでも澄んでいました。
あの人の旅立ちに、似合うような、静かな空でした。」
その投稿に、彼女はコメントを書かなかった。
けれど、すぐに「スキ」が届いた。
彼はその「スキ」が、どんな長文よりもあたたかく感じた。
ふたりは、noteという場で8年を過ごした。
一度も声を聞かず、名前も知らず。
けれど、互いの人生の「光と影」に触れ合いながら、そっとそばに立ち続けていた。
言葉は、ときに愛よりも深い。
彼も彼女も、きっと気づいていた。
これは、恋ではない。
でも、出会いと呼ぶには、あまりにも静かで確かなつながりだった。
そして、この“言葉だけの関係”に、
ある日、亀裂のような沈黙が訪れる。
この物語が、あなたの日々にもそっと寄り添えますように。
――つなぐ|HIROMI🌸
▶︎次回|「第5章:沈黙の時間」
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▶︎第2章はこちら
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わたしも、あなたのあたたかさを誰かに繋げていきます🕊️
