3Dプリンターでサイクロン集塵器を作る-改良編-
前回までの行程で作成した各パーツですが、実際に印刷してみて気づいた部分の修正を行ないます。
サイクロンドラム部分
面取りを無くす
縦筒と、ドラム部分の蓋が接する箇所は、当初どちらも大きく面取りしていていました。
これは、ドラムをはめ込むと勝手に中心部分に寄せる工夫です。
ただ、作ってみると別のそんな配慮いらないな?という感じでしたので、蓋のクリアランス修正のついでに、面取りも無くしました。




シェルで削りすぎていた部分の修正
断面解析でチェックすると、以前蓋の裏のフチが変な形状になっています。蓋の肉抜きの際に、「シェル」で自動的に削られた結果、こうなったようです。
「修正」「プレス・プル」だと、シェルで削った全面が戻ってしまうので、あらためてスケッチで円を描いて、「押し出し」で削ったり埋めたりしました。


ドラムとのはめ込みクリアランスの修正

前回、ドラムと蓋のクリアランスがゼロで、蓋が嵌まらなかった部分の修正です。
こちらは「修正」「プレス・プル」で0.2mm外側に修正すればお仕舞いです。
実際、この後印刷してみましたが、丁度良いサイズでした。
気密性の改善
ペール缶とドラムの間に隙間があって、ここに空気が流れ込んだら、気流が乱れるかも? という心配(妄想)があり、ダイソーで購入した虫ゴムをつかって、気密性の改善を行なうことにしました。

なお、本当に効果があるかどうか(効果が出るほど空気の流れがあったのか)は知りません。
良い感じの虫ゴムの取り付け位置を、スケッチを引きながら確認したところ、直径85mmくらいが、穴と磁石の中間にあって丁度よさそうでした。



虫ゴムのサイズで、半径 42.5mmの円周上に丸を描いて、それを「回転」でループ上にします。すると、下半分が蓋の上面に接しているので、1.5mmの半円形にけずれます。
虫ゴムの長さは、直径 x 円周率なので、
85 * 3.14 = 266.9 (267mm)
です。
あと、虫ゴムを取り付けると隙間ができるので、磁石の取り付け穴は1mmくらい浅く修正しました。

実際に取り付けてみると、予定よりゴム部分が上にはみ出したので、磁石を1mm程度浅くしてもまだ足りませんでした。
削る円のサイズを4mmにして、もうすこし虫ゴムが蓋に埋まるようにしたほうが良かった気がします。
ドラム形状のバリエーションを増やす
さて、最初に作ったドラムは、「設計編3」で懸念していますが、穴が小さく、空気の流れが悪いかも知れません。
そこで、あらかじめ何パターンかバリエーションを増やしておいて、GWに実際に試してみることにします。
側面では無く、下に穴を開ける
丸穴ではなく、ハニカム構造にする
他にも、今の形状のまま穴径を大きくする、等ありますが、まずこの2パターンにしました。
側面の穴を無くし、下部に穴をあけるパターン
下に穴を開けるのは、自作サイクロン集塵機のうち、ドラム型でよく見かける形状です。
例えば、直径の異なる塩ビ管を組み合わせたサイクロンなどは、下に穴が空いています。「自作工房」さんの一号機もそんな感じです。
造形の修正は簡単で、外側を3mm厚の円筒で埋めて、その内側を同じく3mm厚の円筒で切り取り、最後に底の面を「除去」で無くします。
この時、「オフセット」で円筒の開始位置を正しく指定して下さい。



この構造は、円筒下部に大穴が空くことで、ペール缶内部への吸い込みから、下に引っ張るような空気の流れを生み、ペール缶内側に沿って円を描くようにゴミが回転します。
ドラム下部からドラム内側に吸い込む流れがありますが、ほとんどのゴミは自重によって下に落ちていきます。
欠点は、粉塵のような軽いゴミが吸い上げられる事、ゴミが溜まって円筒下部にちかずくと、ゴミを吸い上げる可能性があることです。
ハニカム構造で側面に沢山の穴を開けるパターン
ハニカム構造は、構造的に強いと言われますが、円筒の側面に開ける場合、バヨネット機構での取り外しでねじる力が加わる際には、ちょっと期待できません。
それでもハニカム構造にしたのは、円形より穴の面積が大きくなる事と、縦の六角形を3Dプリンタで造形するほうが、円形よりも綺麗になる事が理由です。
FDM方式の3Dプリンタはどうしても、円の上部のような水平に近いオーバーハング部分の造形が苦手です。縦の六角形なら、斜め30°の直線になるので、オーバーハングの造形が比較的楽になります。
まずは、直径170mm、0.6mm厚の側面にハニカム構造を作成します。
円筒に穴を開けるには、以下の2種類の方法があるようです。
1. エンボスを使う
2. シートメタルを使う
今回は、慣れているエンボスにしました。

まず、ハニカム構造を作る円筒は、0.6mm厚の薄い円筒になります。
まず、「外接ポリゴン」で、辺までの距離が2.5mmの六角形と、2.0mmの六角形を作ります。
外側は、ハニカム構造をくっつけてコピーするためと、ハニカム構造の柱にする為。内側は、穴を空けるためのものです。
ポリゴンの辺に、「水平・垂直」の拘束を付けると、縦の六角形になります。それを二つ、中心点を「一致」拘束で重ねます。この2つの六角形を1組として、どんどん複製します。


「移動・コピー」で、1組2個の六角形を選択します。
座標指定に「点から点」を使って、外側の六角形の頂点を、右下の点にコピーすると、半分ずれてコピーされます。
「点から点」で、半分ズレたハニカム構造のコピーを作る様子は、下記リンク、2本目の動画、1:00分あたりを見てください。
上記動画ではボディを一個ずつ複製していますが、スケッチなら倍々でコピーできます。
複製された2組のポリゴンをまとめて選択し、また「点から点」で、今度は縦にコピーすると、4組のポリゴンに。
またコピーして8組、16組、32組と縦に伸ばします。




あらかじめ、ポリゴンの縦の並びは120mmと決めていたので、120mmの線を基準にトリミングします。
トリミング線を越えて下にも多く複製されているので、そちらはまとめて削除します。

「エンボス(デボス)」で円筒表面にハニカム構造の穴を開けます。
2組の六角形の内側だけ、全部選択してください。
穴を空けてみたところ、開始位置のZ座標をミスっていました。
一番上と、二番目の六角形の一部が、3.0mm厚の部分に掛かったので、「エンボス」を修正し、一番上はスケッチから除外。「位置合わせ」で、下に2.0mmずらしました。

そして、「円形状パターン」で大量複製します。
「フィーチャー」で一個選択すれば、縦一列が選択されました。
それを円周上に100個配置すると、微妙に足りないため、110個配置すると丁度良くなりました。
途中、計算量が多すぎて警告が出たので、「計算タイプ」を「最適化」に変更しました。最適化してもかなり時間が掛かりました。


ハニカム構造が出来ましたが、0.6mm厚では強度的に脆いので、縦の柱を4本、中間のリングを1本作成します。
「押し出し」「新規ボディ」で作ってから「円形状パターン」で4つ複製します。「新規ボディ」にしないと、円筒にくっつくので、後から円形状パターンに複製出来なくなります。


3Dモデルとして出力する前に、結合します。
ちなみに、ハニカム構造のモデルサイズは、0.97MBでした。下部に穴をあけたほうは更に小さく、90KBでした。
穴を細かく空けた方が約16MBのサイズになったのは、作り方が下手だったのだとおもいます。
負圧でゴミ袋を固定する
忘れていたパーツを作る為の、材料選択とネジ試作
「準備編」で、負圧によってゴミ袋をペール缶内部に貼り付けようと計画していましたが、「設計編2」で縦筒を作っていたときにすっかり忘れていました。今回はそれを作ります。
準備編で紹介した動画です。
必要なのは、上部と下部のパーツと、それを繋ぐパイプです。
昨年、水耕栽培を始めたのですが、上記チューブはその時の余り物です。
透明な8mm内径、10mm外径、2mのチューブ
8mm外径の管用継手
9mmの汎用ホースバンド
以上のパーツが余っているので、流用することにします。
ホースと継手はそのまま繋がるので、継手とペール缶内部のパーツ、継手と掃除機取り付け部分(縦筒)の2種類が必要です。
まずは、継手を差し込むパーツを作る前に、ネジ穴のサイズとピッチ(隣り合うネジ山の距離)を確認します。
過去、この継手パーツのネジピッチにあうナットをホームセンターで探しましたが、見つからず、結局ホットボンドで固定した経緯があります。
ネジピッチが分からないと、正しい雌ネジが作れません。
「6.4 mm Gオスねじ」で調べたり、「管用ネジ 規格」で調べたり、あるいはノギスで実際にサイズを測ったりしましたが、いまいち正解にたどり着きません。
どうやら、「管用ネジ」の規格があるようですが、表記が複数あって、どれが正しいのか分かりませんでした。
結局諦めて、実際にfusion360で作成してみることにしました。
ネジ部分の外径(山の頂点で直径を測ったサイズ)は、12.8mmでした。
fusion360で12.8mmの円筒を作り、ネジを作成します。
「BSP 管用ネジ」と「GB 管用ネジ」が、調べた規格の中に出ていたので、両方試してみました。BSPはイギリスの管用規格らしいです。ってことは、GBはドイツでしょうか?


雌ネジは、上記雄ネジに対して、「修正」「尺度」で、「不均衡」を指定し、XYのみ1.05(5%拡大)した雄ネジコピーを作成し、くり抜いて作っています。
実際に印刷してみたところ、どちらもネジピッチは合っていました。
あれ?BSPもGBも、表記が違うだけで一緒・・・???

どちらでもいけそうなので、ここからパーツを作っていきます。
ペール缶内部用のパーツを作る
ペール缶下部、ゴミ袋の底に位置する部分に、継手を差し込んで内部から雌ネジで締め込みます。その後、周囲をシリコンシーリングやボンド等で埋めて気密を確保します。
内側パーツは、ペール缶とゴミ袋の間の空間にある空気を吸い込んで、ゴミ袋を缶の内側に吸い付けます。
穴が一つしか無い場合、すぐゴミ袋が吸い付いて穴が塞がります。掃除機でゴミ袋を吸ってしまったような状態になります。
そこで、周囲に沢山穴の空いたパイプ形状にします。
六角ナット状になった雌ネジをベースに、その上にネジを塞ぐ板と、穴を空けるパイプを押し出します。


パイプの横に穴を空けるため、パイプをまず輪切りにします。
次に、輪切りになったパーツを繋ぐ支えを作ります。




想定する円柱内部の穴と、円柱外径の間に柱を作り、それを四方に複製します。

柱を作った内側の円を押し出して穴を作り、雌ネジも合わせて「結合」で一つにまとめてから、良い感じに面取りやフィレットを施します。


これでペール缶内部用のパーツは完成です。
縦筒の横から空気穴を空ける
「設計編2」では、これを忘れていました。
まあ、おかげで、ホース継手の在庫があったことを思い出す時間ができたのですが。
必要なのは、90°真横に突き出して、ホース継手がネジ込めるパーツです。
直接、縦筒に横穴を結合すると、ペール缶に空けた穴径がギリギリなので、縦筒を差し込むことができませんし、固定用の雌ネジも入りません。よって、この中継パーツもさらにネジで固定することになります。
また、ホースを使わない時の為に、穴を塞ぐパーツも用意してみました。
先ほどの雌ネジと雄ネジをベースに、コピーを作り、長さを調整して以下のようなパーツにします。
雄ネジ部分の長さは、縦筒の厚みが4mmなので、それにあわせて4mmとしました。雌ネジの高さは10mmで、雄ネジと繋がる部分が4mm、残り6mmが継手と繋がる部分です。

これに穴が空けば、そのまま中継用に。
上を塞げば、蓋のパーツになります。
※ ちょっとナット部分の外径を「プレス・プル」で小さくしています。


基本パーツが出来上がったので、これを使って縦筒にネジ穴を空けます。

モデルを取り込んだら、回転+移動を行ないます。
ナットの面がすこし縦筒に食い込んで、ネジ部分が円筒内部にちょっと出るくらいの位置に配置します。
次に、ナット裏面を基準に、縦筒の側面を平らに削ります。これは、ナットを回転させるスペースの確保と、平らに密着させる部分です。


重要なのは、縦筒を削りすぎないように、厚みを残す事です。薄すぎると、ネジ部分が作れません。
これは最初にパーツを取り込んだ時、断面解析やパイプ上部からのぞき込む、等の作業で、位置合わせを行ないます。

縦筒に雌ネジを切るため、雄ネジのコピーをX-Y垂直面に対して5%拡大して、「結合」「切り取り」でネジを切ります。


以上で、負圧管のパーツは完成です。
継手があったおかげで、予定より楽に完成しました。
継手が無い場合、「DIY母ちゃん」さんの動画のように、パイプ外周にあわせて10mm穴があいたパーツにして、チューブを差し込む方法もあります。PLAで作る場合は強度の不安もあるので、そっちのほうが安心な気がします。

印刷とチェック
ドラムの蓋を印刷する
蓋を印刷し、虫ゴムと磁石を取り付けてみました。


前述したように、ちょっと虫ゴムがはみ出しすぎている気がします。
もう一度作り直すか、ちょっと悩みますね。
ハニカム構造ドラムを印刷する
印刷完了まで、9時間10分かかりました。
さすがにハニカム部分は時間が掛かるし、糸も引いています。



完成品をみて、反省がいくつかあります。
ハニカム構造部分の板厚が薄すぎて、指で押すと壊れる
補強リングなど、下部が90°のオーバーハングになって印刷が乱れた
最下部、指で掴んで回そうとすると、ハニカム部分が押されて切れる
まず板厚です。なんとなく初期バージョンの穴開けにあわせて0.6mmにしましたが、薄すぎました。簡単に壊れます。
次に何ヶ所か、下向きに90°水平になっている部分で、印刷が乱れました。ここは「面取り」で勾配にすべきでした。サポートも無いためうまく造形できず、太い糸をひきました。
最後に、バヨネット機構で蓋をはめるときの問題です。
回すとき、底部の円周に指を掛けるのですが、強く持つとハニカム構造の下部を指先で押してしまって、そこから切れてしまいます。
底部側面を10mm上げて、掴める範囲を広げました。


円筒をぐるっと囲うように、リング状の補強が上中下の3箇所ありますが、上・中は下部に45°の面取りを追加しました。
下は、底部から10mmの側面をつくり、内部はフィレットをつけて、指で掴む部分の幅と強度を確保しました。
ハニカム構造部分は1.0mm厚にしています。それで足りるか、不明ですが。
修正は事前に行ないましたが、そもそもハニカム構造が採用されるか不明なので、GWのテストは印刷済の修正前のパーツで行なう予定です。
下部解放型ドラムを印刷する
こちらは、一度印刷に失敗しました。
3時間経過したころに、プリンタ後部に置いたフィラメントケースが倒れ、後ろからY軸を押してしまいました。PEIプレートが印刷物ごと、10mmずれました。
幸い、Y軸の可動パーツに損傷はなかったのですが、危うくA1 miniが動かなくなる所でした。


ハニカム構造ドラムの失敗から事前にフィードバックできていたので、オーバーハング部分を面取りして、綺麗に印刷できました。
負圧管用パーツを印刷する
印刷開始後に気づきましたが、横穴用の中継パーツと蓋パーツは、上下ひっくり返すべきでしたね。


どうしてもオーバーハング部分が出るため、サポートは必須です。
付けなくても印刷はできますが、印刷が乱れると思いますので付けました。


雌ネジと延長筒は、修正していないので、SUNLUの緑色のままです。
おかしな色の組合せですが、まあ、個人用途だし。

中継パーツと継手を繋いでみました。
中継パーツのネジ穴は深さが6mmで、継手も6mm位なのですが、微妙に足りませんね。
しかも、作ってから気がついたのですが、中継パーツの雄ネジのサイズがパイプ継手と同じなので、中継パーツの意味がありませんでした。


一人で設計していると、こういうミスに気づくのが遅れますね。

最後に、ペール缶内部に付けるパーツですが、サポート材をはずそうとして苦戦した挙げ句、折れました。

面取りを追加したりしても、穴の中にサポートができるのを防げないので、最後は諦めて、サポート無しで印刷しました。
オーバーハング部分が、例によって印刷がおかしくなりましたが、ギリギリ、使えそうです。


ホース継手は、ペンチで挟んで回すと、根元まで入りました。
ここは気密を確保する部分なので、奥まで入って良かったです。
改善するとしたら、内部の柱部分を外にせり出して、より折れにくくするくらいでしょうか。
どうにも、横から見ると、根本付近の強度に不安があります。
印刷後のテスト予定
とりあえず、改良編はこれで一区切りです。
設計編3で触れましたが、作成したパーツの組込みはゴールデンウィーク後半に行なう予定です。
まず、パーツを輸送しないといけませんね。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
