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【あがり症|美大受験14】この期に及んで未だに、何かをつかめそうで、つかめないまま|ふるえるままに、すすめ34

あがり症でHSP気質のうにが、美大受験、大学中退、そしてその後も続いていく日々の中で、変わりたくても変われない、どうしようもない自分を抱えたまま世界を泳いでいく『うに』のイラスト付き連載エッセイです。うまくいかない日も多いけど、うにはうにのまま、ふるえるままに進んでいきます。

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冬がやってきました。


次の日の早朝。
うには、少し早めに家を出て、予備校へ向かいました。


坂道の階段を上る途中で、晴れた冬の空を見上げ、
しばらくぼけ~っと街を眺めていました。

どんな時も、夜は明けて、朝は来る。
地球って丸いよな。

昨日、『サイズ間違え』というありえないミスをした後、うにのメンタルがどうだったかというと……

これが意外に、落ち込んではいたけれど、どん底と言うほどでもなく
なぞの低空飛行状態でした。


そもそもです。

あ、うに、自分にそんなに期待していないかも

って気が付きました。


(まあ、こんなもんだよ。初めからそつなくできるタイプじゃないもんね、ハハハ……)


振りかえってみても、昔から、要領は悪い方です。
お弁当を食べるのもクラスで一番遅かったし、逆上がりができるようになったのだってクラスで一番最後。

愛嬌のある子みたいに、人間関係うまく立ち回ることもできない。

学校の勉強だって、成績が比較的良かったのは、人並み以上に反復練習をしたり、強制的に訓練せざるをえない環境(大学付属高校ってそういう環境)に身を置いていたからであって、決して生来の優秀さがあったわけじゃない。

(地頭が良くて勘がいい人って、すごいですよね、友人にそういうタイプが多くいました)

でもうには、何度も繰り返して、ようやく人並みにできるようになるタイプなんだもの。

だから、最初はうまくいかないのなんて、うにの人生デフォルトなのよ。



少なくとも、今回の試験のミスで、次は何に気を付ければいいかが分かった。

どうやら、自分で自分が緊張していることに気が付けないくらい緊張しているらしい。

だから次は、「私は何かを見落としているかもしれない」という前提で、試験に挑もう。

スタートする前に、すべての条件をもっともっと見直そう。

あと、周りをよく見よう。
今回は一番前の席だったから、周りの人の様子が目に入ってこなかったのは残念だった。だけど、次もまた一番前の席になるなんて、そうそうないだろうから、きっとそこは大丈夫なはず。

きっと次は、少しは何かが変えられる、と思う。
そう、信じる。


「……うん」

もともと自己肯定感?が基本的に低いから
変なところで意外としぶとい、うに。

今できることは、それしかない。


次の試験はもう今週のうちに3つ入っています。
N大の学科で1日と、実技試験が2日間。
そして来週もまた、M大の学科1日と、実技試験が2日間。
再来週も、T大の学科1日と、実技試験が2日間。

ひとつひとつの試験でのイレギュラーな出来事に振り回されている暇はなく、ただ淡々と試験を受け、試験がない日は予備校に通い、デッサンをしてバグを修正し、また試験に行く日々が続くのです。

知力勝負、体力勝負、そしてメンタル勝負。
それが美大入試。

Z大学に続いた2つの美大の受験については、実はあまりよく覚えていないのです。普通は、多くの受験生が本命にしているのは、こちらの大学だから、こっちをより鮮明に覚えていそうなものなんですけど……それだけ、淡々と受け続けていたからなのかもしれません。

朝から大学にいき
学科を受け
デッサンをし
色彩構成をし
予備校に戻って報告して
結果を待ちながら、また描くだけ。

手応えがあったかと言われると、正直、全然わかりませんでした。

ただ、今振り返って思うことがあります。

失敗には、ラッキーな失敗があるのかもしれない、ということです。

うにが最初のZ大に落ちた理由を、
うに自身は当時、「サイズミスをしたから」と考えていました。

でももしも、本当の理由はそうじゃなかったらどうでしょうか。
たとえば、サイズミスをせず、ちゃんと課題の規定通りの作品を出して、それでも落ちていたとしたら?

そうしたらうには、
(なぜ落ちたのか理由がわからない……)
(自分の作品そのものものがレベルが足りていなかったから落ちたんだ)

と考えて、次の大学の試験に向かわなくてはならなかったと思うのです。

そうなると、次の大学の試験で、どうしたらいいのかわからなくなるかもしれない。もっと落ち込んだかも。

そんな風に、悪循環に陥ってしまって、普段の実力が出せなくなって、受からなかった受験生もいたんじゃないかと思うんです。

幸いなことに、うにには、(サイズをミスった)という、わかりやすい原因があった。

(真実はどうであれ)←ここがポイント。本当のことはだれにもわからないですよね。


でもきっと、それでいいのだ。
現実って、自分の解釈次第(ある程度は)

だから、そこから数週間以上続く美大受験期間中は、無闇にメンタルダウンせず、安定して低空飛行。

(自分はそんなに器用じゃないんだから、淡々と続けるのみ)って考えられた可能性がある気がするのです。

これを、ラッキーな失敗と言わずして、何と言えばいいのでしょう。


それから、数週間後ーーー


予備校の階段を上がりかけたところで、波多野先生が立っていました。

「うに、二つとも合格だって?」

予備校には、まだ進路が決まっていない人もいます。だから、合格した人を大きな声で祝う空気ではありません。それでも波多野先生は、少し声を落として、「おめでとう。やったな」と、うれしそうに言って、ハイタッチをしてくれました。

二月中旬。うには、M大とT大、二つの大学のデザイン系学科に、連続して合格しました。最初の大学で大失敗したのが良かったのか、過度に緊張しすぎず、かと言って諦めたりもせず、ちょうど良い緊張状態で挑めたのかも。結果的に、うには、この時点でどちらの大学を選んでもいい状況に。

面談室で報告すると、大森先生も野田先生も、とても喜んでくれました。

その様子を見て、うにももちろんうれしかったのですが、その反面、心の中にあったのは、

(ミスはしなかった……)
(課題には的確に答えられた……)
(学科が、やっぱり効いていたんだろうな……)
(何はともあれ、結果につながってよかった……)

という、なんとも地味な感想でした。

高揚感があまりなかったのは、まだ、その先にも別の大学の受験がいくつか控えていたからかもしれません。

予備校のデッサン室に来ている人の数は少なくなっていました。あるいは、都内の予備校に行っている人も多かったのかもしれません。

デッサン室には、ふうこも、なつめも、ゆきちゃんの姿もありませんでした。みんなが、今どうしているのか。いくつかの大学には受かっているのか。それとも、まだ結果を待っているのか。
うにには、全然わかりませんでした。もちろん、聞くこともできませんでした。

次の大学の受験課題は、構成デッサンです。これが通れば、次は色彩構成。そして立体構成。共通テストの結果は悪くはありません。だから、現役生といえども、万が一にも、受かる可能性は、あるかも。

落ちても、行ける大学はある。
だから、思う存分やればいいだけ。

受験当日までに描ける枚数は、あとほんの数枚。それでも、実技を浪人生と同じレベルに少しでも近づけたい。

けれど、浪人生と同じ土俵で勝とうとしても、たぶん勝てない。
デッサン力も、経験値も、描いた枚数も違う。
だったら、うにはうにの勝ち方を考えるしかない。

一体どうすれば、戦えるのか。
うには、ぎりぎりまで、そのことをずっと考えていました。

うには誰とも話すことなく、波多野先生が出してくれた構成デッサンの課題を、ひとり黙々と描いていました。

最後の試験本番まであとほんの数日。


この期に及んで未だに、何かをつかめそうで、つかめないまま。

つづく!

※美大受験編、美大編、スピードアップして駆け抜けます!


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※本作は実体験をもとに再構成した創作エッセイです。

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本作は実体験に着想を得たエッセイですが、プライバシー配慮のため登場人物・団体・時系列・場所等に創作・合成・編集を含みます。特定を意図していません。ただし、うにが感じた気持ちと気づきは本物です。

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