【あがり症|美大受験8】だれにも見せなくていいなら、描けるかも。うにが白い世界に線を引いてみた日|ふるえるままに、すすめ28
あがり症でHSP気質のうにが、美大受験、大学中退、そしてその後も続いていく日々の中で、変わりたくても変われない、どうしようもない自分を抱えたまま世界を泳いでいく『うに』のイラスト付き連載エッセイです。うまくいかない日も多いけど、うにはうにのまま、ふるえるままに進んでいきます。
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デッサンは、たま~に上段に乗るようになってきましたが、もうひとつの受験科目、色彩構成はず~~っと難航していました。
万年、下段です。
もちろん、そんな簡単に上段に行けるなんて
露ほども思ってもないけども、
こうも下段が続くとさすがに凹みます。
なつめ「ふうこは色彩構成得意だよねえ」
ふうこ「えへへ。だってさ、色彩構成って自由じゃん?
デッサンより楽しいよお」

なつめ「好きだけど~ふうこみたいに、
たくさんの色を自由自在には使えないなー」
うに「たのしい……?」
うに、色彩構成、楽しくないかも……。
いつも、課題を読んだ後、
白い画面の前で、フリーズしちゃう。
何を描けばいいんだろう?
何が正解なの?
デッサンのほうが、
描くものは初めから決まってるし、
何がどうなれば、うまいのかがわかりやすいし、
こつこつつみあげ型だから、
上達感があるから楽しいけど
色彩構成は……うに、色、苦手かも……。

ふうこ「うには、まじめだからなあ。
色彩構成ってさ、自由に絵を描いていいよ、っていうことじゃん?」
うに「えええ……」
自由に…
うに「自由……とは……?」
ふうこ「んも~~~、考えすぎ~~!」
なつめ「あははは」

色彩構成は、うににとっては本当に難解でした。
色彩構成は、課題によって出題のされ方が様々で、
課題の意図を正確に読み取れたか
課題から要求されている要件に答えられているか
という、「課題の読み取り」が、まずもって難しいんです。
たとえば、わかりやすい例ですと、
ある年の芸大デザイン科色彩構成課題
「世界に存在しない、「あなたが空想する花」を構成要素として色彩構成しなさい」
これは、単に「世界に存在しない花を空想して描く」というだけではなく、
「それを『構成要素』にして、色彩構成しなさい」
という2段階の意味があります。
まず第一段階として
普段から「植物の植物らしさ」を
観察したことがあり、
その生々しい形態の面白さを
目で記憶していること
という素地がないと描けないですよね
「世界に存在しない花」は
「世界に存在している花」を
がっつり描いたことがないと、描けない。
ないものは、あるものをしらないと
想像できないからです。
(しらないまま無理やりやっても、
多分、薄っぺらくなる)
そしてさらに第二段階として
「それを構成要素にして色彩構成する」
のですから、単に描けばいいわけではなくて
自分が空想した存在しない花の、
どこがもっとも魅力的かを考えて
それが最も生きる一瞬を切り取って描こう
という意図なわけなんです……。
課題から何が要求されているのかということを
こんな風に理解しないとならないわけです……。
ね?
ここまで分解すると
受験前に、植物の質感や形態の面白さを
ガッツリ研究しておかねば、ということになります。

想像をはるかに超えた形をしているので
「世界に存在しない」という条件を、
形だけで考えるのは意外と難しいかも
ゆり「わたし、きれい?」
きれいだけど、きもくもある……
あるいは、意外と、生物の授業の知識も役立つかも?
「世界に存在しない花」を描けと言われたとき、
ただ美しい花を空想するのではなく、
「植物とはそもそも何か?」まで戻って考えるとしたら。
植物はどこから栄養を得るのか。
どうやって水を吸い上げるのか。
なぜ葉は光を受ける形をしているのか。
花びらは何のためにあるのか。
種はどう運ばれるのか。
虫や風や光と、どう関係しているのか。
で、そこからさらに、
「じゃあ、その花の一番魅力的な瞬間はどこか?」
を考えて、その一瞬を描く。
それが色彩構成。
つまり、
普段から目の記憶を鍛えてるとか
SF小説を読んで空想してるとか(←これ、うにw)
ちゃんと生物の授業を聞くとか(←これも、うにw)
そうやって、あらゆる経験を思い出して総動員することが、色彩構成の対策になるのかもしれない。
つまり、色彩構成って本当は、
絵の技術 × 観察記憶 × 知識 × 想像力 × 課題読解 × センス(?)
なんです。17年間の記憶の総力戦ですね( ´艸`)
で、「よし! 植物をガッツリ研究したよ!」
とします。
ところが、別の年の芸大デザイン科課題はこちら👇
昨年、旧国立競技場にあった1964年東京五輪を記念した壁画11枚が新国立競技場に移設された。そこであらたに12枚目としてスポーツを題材にした壁画を新国立競技場に設置すると想定し、その原画としての色彩構成をしなさい。
……花。花はどこ行った。
この課題に必要なのは、
何か1種目でいいからスポーツを観察したことがある目の記憶、
もしくは、それが全くないならば、
それに代わる、「見る人が感じるスポーツスピリッツ(もしくはオリンピックスピリッツ)を連想する何か」を表現する腕力。
………。
も~~~~運か?!ってさじを投げたくなる。
でも、運だけでもないともいえる。
目の記憶がないものが出題されたとしても、
それに代わる、「見る人がスポーツスピリッツ(もしくはオリンピックスピリッツ)を連想する何か」を表現する(もはや)腕力
のように、力づくで課題に答えてしまう
イマジネーションと技術力みたいなものがあればいいわけです。
つまり美大受験の色彩構成とは、
「何が出るかわからない運」と、
「何が出ても応答できるだけの目の記憶と技術」
もしくは
「現場のはったり力」(?!)を、
17歳に求めてくる試験なのです。
ふははは。
面白い人には、ごっつう、面白い。

でもうにには、難しすぎる。
はったりなんて、できるわけない。
実直だけが取り柄です、うに。
しかも、果たして課題にまじめに答えれば合格するのか。
それすらも、微妙です。
(今回は課題にかなり答えられた……と思う)
そう思いつつも、
どきどきしながら提出した絵の隣に、
課題をいい意味で、遥か斜め上方に裏切ってくる絵が突如として現れる。
(え? そんなんあり? そんな解釈、ありなの?!)
大森先生「おお!これ、いいねえ~!」
ふうこ「ヘヘッ、あたしも、我ながら好きな感じにできたと思います〜✨」

隣の受験生の才能に吹き飛ばされます。
BOMB!
こういう夜が、ず~~~~~っと続くわけです。
そりゃ~~、もがくわ~~~って感じですよね。

それでも、凹んでばかりいても前進はなし。
うまく描けなかった課題や、
時間内に終わらせられなかった課題、
描き上げたけど納得がいっていない課題などは
休みの日に家で描きなおしてみたり。
でも、他の受験生の絵を見てしまっているし
先生の講評も聞いてしまっているし
大量にメモした先生のコメントを読めば読むほど…
もはや、何が正解なのか、全然わからない……

うには畳の上でゴロゴロ転がりました。
ふと、そういえば、1個だけ、提出できなかった課題があったことを思い出しました。
「好きなものを色彩構成する」

これ。
今更やったところで、提出できるわけじゃないけど……
でも逆に言えば、提出しなくていいんだよね。
誰にも見られないんだ。
それなら、描きたいものを描けるかも。
うには、板に水張りした白い画面に向き合いました。
描きたいもの……とは違うかもだけど。
子供のころから不思議だったことがあって。
それは、線の不思議。
線って、白い紙の上に、黒い線が引かれるでしょ?
書道でも、黒い墨を筆にとって
和紙に染み込ませていくわけです。じわ~っと。
白い紙の上に黒い点や線が現れると、
さっきまでただの白い紙面だったものが
人の意識の中で三次元の空間を持つんです。

それってすごく不思議なことですよね。
ただの、線なのに。
書道と言うのは、そういう不思議がある気がします。
書道で『余白』を意識しようって言われるのは
つまり、
1本の線を書くことで、
『空間』や『次元』みたいなものを
生み出しているからじゃないかと思うんです。

では、その『逆』の世界は?
今こうして目の前に置かれている白い面は、ただの白い面じゃない。
すでに、白い何らかの存在なのだとしたら。
子どものころ見た、軽井沢の朝霧の中から現れる白樺の枝のような。
高校の頃、山登りで後ろから追いかけてきた雲の柱のような。

音のない何かが迫ってくる、侵食してくる感じ。
怖くはなくて、どちらかというと、不思議な何か。
白いキャンバスに筆で黒い液体を落としたら。
白が黒を飲み込んでいくのでしょうか。
白が黒を侵食していくのでしょうか。
だって、もともとその白いキャンバスは、
きっと、白い何らかの存在だったから。

それは、白い世界に異物を落とす行為に近いのかもしれない。
その世界に線をひいたら、線は線ではなくて
その世界に飲み込まれていくものになりそうな気がする。
う~、言葉で全部言い切れなくて
もやもやするけど、つまり、そんな感じ!
そんな絵を描いてみたい。
好きだから、っていうより、謎だから。
うに「白と黒だけじゃ、色彩構成って言われないかもなあ……
まあ、いっか。誰にも見せないんだし」
うには、休みの時間を使って、
少しずつ描いていきました。

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※本作は実体験をもとに再構成した創作エッセイです。
大切なお知らせ
本作は実体験に着想を得たエッセイですが、プライバシー配慮のため登場人物・団体・時系列・場所等に創作・合成・編集を含みます。特定を意図していません。ただし、うにが感じた気持ちと気づきは本物です。

いつでも質問募集中~!

