あの彼に浮気させたのはあなた ~京極派スペース抄~
「心のままに詞の匂ひゆく」ように歌を詠む――鎌倉・南北朝時代の和歌文脈において異色であったこの歌論を、京極派という和歌グループは選択しました。
その京極派について、X(旧Twitter)にて毎週お話しています。
この記事は、そんな京極派スペースの音声を読み物として整えた京極派スペーステキスト版の一部を抜粋したものです。
2026年3月7日放送スペース「伏見院の春歌の変遷」、4月1日テキスト化した「「心のままに」の失敗と成功」より。
政変で挫折する前の伏見院の歌や様子について、漫画『NANA』の初期の小松奈々の振る舞いを引き合いに出して解説しました。
その箇所を、今回テキスト版から抜粋しご紹介します。
全文を読みたい方はこちら(テキスト版)
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あの彼に浮気させたのはあなた ~京極派スペース抄~
数回前、「伏見院がこういう経緯を経て、こんな風に歌が変化したんですよ」という話をした時にも、漫画『NANA』の例を出しました。
小松奈々の初期の彼氏の章司くんが、「奈々は俺のことが好きなんじゃない。『奈々のことが好きな俺』のことが好きなだけだ」というようなことを言っていた、
と二人が別れたあとに親友の淳子と京助が回想していましたね。
まさしくあれなんですよ。
奈々は章司のことが好きであるつもりだったけど、その「好き」はすごく独りよがりで、相手を疲れさせる「好き」だったんですね。
すごく未熟な恋だったと思う。
だからいつも奈々は空回りして、最終的にはその空回りが極まって……たしかに浮気をしたのは章司だけど、浮気をさせたのは奈々、お前だろう、と私は思っています。
「お前がそうじゃなかったら章司は浮気しなかったよ」って。
章司は、奈々があまりにも頼りなくて心配だからと、浪人中に結婚まで考えていたからね。大学進学を諦めて結婚しようかと真剣に考えていた。
そういう性格の男の子を二股、浮気に走らせたのは奈々、あなたでしょ、という気持ちに私はなる。
なぜならば、私も過去に奈々と同じことをやったからですよ。よく分かる。
愛しているようで愛していなかった。ただ、自分中心の世界で自分に都合のいいように相手を見ていただけだった、と。
そして川村幸子みたいな女の子に当時の彼氏を取られたわけです。
まあ、その彼氏は遠藤章司ほどの男ではなかったので、あんな彼氏は取られても良かったかなと今なら思うんですけど、当時はあれが世界の終わりみたいに思っていたから、
それこそ伏見院じゃないけど、そんなひどいことが起こっても淡々と巡る世界、自然、四季みたいなものを呪い散らしていました。
だから、私には本当に、このときの伏見天皇の気持ちの分かる部分がある。
大変自分中心で生きていたということに、自分中心で生きている時、気づけないから。
現実に打ちのめされて、「そういうことじゃないんだ」という視点を手に入れるまでは、自分中心であることに気づけないから。
当たり前ですよね。ほとんどの人間にとっては、気づけないのが前提なので。
なので、「とても整ってはいるし、別に美しくないとは言わないけど、雑な春の歌」を政変前の伏見院が詠んでいた、というのはとても分かるんですよ。
「京極派スペース抄」は以上です。ありがとうございました。
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