レポ|RADWIMPS 20th ANIVERSARY LIVE TOUR 広島公演(Day1)
私の音楽人生において、RADWIMPSは欠かせない存在です。高校生の頃、初めて聴いた「有心論」の衝撃は今でも鮮明に覚えています。RADWIMPSは、私が邦ロックを聴き始めったきっかけでもありました。
しかし、コロナ禍以降、少しずつ彼らの音楽から遠ざかってしまっていました。RADWIMPSが生み出す音楽と、自分の好みが、段々と合わなくなってたのです。いつしか、RADWIMPSの音楽を聴く機会は減っていきました。
そんな中、私の熱を再び強烈に呼び覚ましたのが「賜物」でした。その懐かしさと新しさが同居する響きに胸を打たれました。
また、20周年記念企画として、毎週土曜日に過去のライブ映像をYouTubeで配信するという企画が行われました。昔のライブ映像を観ていると、RADWIMPSに熱中していた頃の気持ちを思い出しました。そして、RADWIMPSの20周年ツツアーの開催が発表されました。
当時、私は重いうつ病を患っており、日常生活を送るのも精一杯の状態でした。ツアーの開催は少し先とはいえ、健康状態に不安はありました。しかし、地を這ってでもライブに行こう、と決心しました。
結果として、この決断は正解でした。あの場所で受け取ったエネルギーは何物にも代えがたい「希望」となりました。
私は参加したのは、広島公演一日目です。ツアーの初回公演です。各楽曲の感想を綴ります。
1. ふたりごと
ライブの幕開け、一曲目のイントロが流れた瞬間に全身の鳥肌が立ちました。まさかの「ふたりごと」。一曲目を「命題」と予想していましたが、大きく外れました(「命題」は一曲目どころか、セトリにも入らず...…)。
20周年という節目で、彼らが最初に選んだのがこの曲だったことに、強烈なメッセージを感じずにはいられませんでした。
新アルバム『あにゅー』に収録されている「筆舌」では、かつての彼らが多用していた「ずっと」「絶対」「一緒」といった言葉を使わない決意のようなものが歌われていました。
「ずっと」とか「絶対」とか「一生」とかないのはもうわかったから
思えば、メンバーの休養や脱退、震災、およびパンデミック。この20年で彼ら、そして野田洋次郎が経験してきた「別れ」や「喪失」の重みが、その歌詞には滲んでいます。
▼「筆舌」について語った記事はこちら。
しかし、その彼らがツアーの初日に、あえて「ずっと」や「絶対」を歌うこの曲をぶつけてきた。これは過去の否定ではなく、あの日信じた煌めきを抱えたまま、絶望を経た今だからこそ歌える「愛」の宣言のように聞こえました。
手と手を合わせてたら血も繋がって一生離れなくなったりして
2. まーふぁか
「ふたりごと」の余韻を切り裂くように始まったのが、攻撃的なリフが印象的な「まーふぁか」。
このギャップこそがRADWIMPSの真骨頂です。英語の歌詞をまくし立てる、あのヒリヒリとした攻撃性は、どこか「ハイパーベンチレーション」や「ソクラティックラブ」を彷彿とさせ、古参ファンとしての血が騒ぎました。
It's always easier to start, but why's it so damn difficult
To finish all these brilliant stories at where it's supposed to
I'm standing stunned, carrying a whole bunch of half-written memories
It's too hard to give it away, 'cause they're still a bit lukewarm
近年のRADWIMPSの楽曲は、壮大なバラードや、ヒップホップを感じさせる曲が目立っていましたが、こうした「初期衝動」を感じさせる鋭利な楽曲を今このクオリティで鳴らせることに、バンドとしての底力を感じます。
演出もどこかおどろおどろしく、内面から湧き上がる衝動を視覚化しているようでした。
3. One man live
「One man live」は、個人的にお気に入りの曲です。ライブで聴けるとは思っていなかったので、イントロが鳴った瞬間、驚きと嬉しさがこみ上げてきました。
思い返せば、私が初めてRADWIMPSのライブに行った2014年のツアーでも、この曲がセットリストに入っていました。当時も、この曲がセトリに入っているとは想定していなかったので、驚きと嬉しさに満ち溢れていたのを覚えています。
10年の時を超えて、同じような体験をする。ただの偶然とは思いつつも、この現象の意味を考えてしまいます。
このまんまるい地球を客席に
君は君自身をそのステージに
そこで掻き鳴らされるその音に
鳴りやむことない拍手が響く
4. ます。
ここで「ます。」の登場。初っ端からお腹いっぱいです。
しかし、休憩している暇はありません。この曲はコールアンドレスポンスを楽しんでナンボの曲です。叫ばなければなりません。
会場全体で「迷わずYOU!!!!!」の大合唱。圧巻でした。この時点で、今回のツアーのセトリはとんでもないと思っていました。新アルバムを引っ提げるかと思いきや、過去曲をふんだんに盛り込んでいる。その後のセトリに期待が膨らみます。
あなた一人と 他全人類
どちらか一つ 救うとしたら
どっちだろかな?
迷わずYOU!!!!!
5. ワールドエンドガールフレンド
ここで新アルバム『あにゅー』の風が吹き込みました。
これまでのRADWIMPSにはなかった、シティポップの香りがする一曲。鬱々とした気分を吹き飛ばすような、軽やかでいて深いサウンドスケープ。
ステージを軽やかに動き回りながら歌う洋次郎の姿が印象的でした。
恋と星と歌はいつか滅ぶらしい
だからなに?そんなことちっぽけに思える君の唇
6. Tummy
これもまた久々の曲です。一瞬「何の曲だっけ?」と考えてしまいました。
どうやら国内のライブでは、2015年以来10年以上ぶりの披露だったみたいです(海外公演では演奏されていた)。
洋次郎独特の「愛ゆえの狂気」を体現した曲だと思っています。生まれてくる自分の子供に対して嫉妬するのは、流石に少し怖い。
今から宣戦布告 二人の子供にきっと僕 嫉妬すんだよ
きっとそうだよ あぁ もう想像つく
君と血が繋がっているなんて なんて羨ましいやつだって
洋次郎はかつてエッセイで子供への憧れを綴っていましたが、今の彼がこの曲を歌うことに、また別の感慨がありました。この曲を作った当時は、将来自分の子どもを持つと想像していたことでしょう。
「筆舌」では、独りで死んでいく将来を歌いながらも、どこかで家族という繋がりに憧れを抱き続けている。その人間臭い矛盾が、愛おしくてたまりませんでした。
このペースで時が過ぎるなら一人ぼっちで死ぬ可能性が現実味を帯びて
人知れずぽつんと死ぬなら夏場は嫌だななんて思ったり
7. me me she
「ふたりごと」と並ぶ、RADWIMPSのラブソングの代表曲。当時20代の若者が書いたとは思えない、あまりに完成された別れの詩。
今までほんとにありがとう
今までにほんとにごめんね
今度は僕が待つ番だよ
君が生きていようとなかろうと
だってはじめて笑って言えた約束なんだもん
ラスサビでは、会場全体が合唱していました。MCでは、初めてRADWIMPSのライブに来たという人が思ったより多かったのですが、そんなことを感じさせない大合唱でした。古くからのファンだけでなく、最近RADWIMPSを好きになった人にも聴かれている曲なのだと思います。
8. 賜物
私を今回のライブへ連れ戻してくれた、運命の一曲。ステージにカーテン状の幕が降り、MVの世界観が再現される演出には目を見張りました。
最近の彼らから少し距離を置いていた私に、「おかえり」と言ってくれているような気がしました。これまでの実験的なサウンドと、かつてのRADらしい叙情性が完璧なバランスで共存している。
インタビューで「アルバム二枚分の労力を費やして作った」と語っていました。音の厚み、一つ一つの音符に込められた執念のような熱量に圧倒されました。
時が来ればお返しする命
この借り物を我が物顔で僕ら
愛でてみたり
諦めてみだりに思い出無造作に詰め込んだり
逃げ込んだり
せっかくだから唯一で無二の詰め合わせにして返すとしよう
9. 棒人間
ピアノの旋律が美しく、そして切なく響き渡りました。
この曲は、どこか世間との「ズレ」を抱えている人達に刺さる曲ではないでしょうか。社会に適応しようとしてもどうしてもズレてしまう自分、うまく立ち回れない自分への、悲痛な叫びです。
僕は人間じゃないんです ほんとにごめんなさい
そっくりにできてるもんで バッタもんのわりにですが
何度も諦めたつもりでも 人間でありたいのです
洋次郎の歌声は、その疎外感を優しく掬い取り、そのままの自分でいていいのだと許してくれたように感じました。
▼以下の記事で「棒人間」について語っています。
10. なんていう
新アルバムからのミドルチューン。
洋次郎にしか紡げないフレーズ。こうした言葉のセンスが衰えるどころか、より研ぎ澄まされていることに驚きます。
ねぇなんて顔で僕を見るの
70000ピースのパズルの最後の一個を口に咥えたような笑顔で
うつ状態で、あらゆる言葉が色褪せて見えていた私にとって、彼の紡ぐ新しい比喩や表現は、世界に色を取り戻してくれる魔法のようでした。
11. カイコ
会場の中心に設置されたステージがせり上がり、洋次郎と武田が高い位置に現れました。
洋次郎はこの曲を披露する前に「ライブで初めて演奏する曲です」と告げていました。「何の曲だろう?」と、一瞬考えました。すぐに洋次郎の口から「カイコ」の言葉が出てきたとき、非常に驚きました。
後で知りましたが、この曲が演奏されたのは全ツアーの中でも広島と仙台などの数公演だけだったとのこと。初日に参加できた幸運を噛み締めました。
この曲は、東日本大震災を契機として制作された楽曲のひとつです。世界に対する絶望と、それでも生きていこうとする人間の強さが、綴られています。
世界は疲れたって
僕にはもう無理だって
宇宙の寂しさを一人で背負い
創りあげてはみたが
12. おしゃかしゃま
桑原が脱退して、サポートギターとして純さんがバンドに加わっています。何と、まだ20代だそうです。
20代にして、RADWIMPSのステージに立つとは、凄いものです。しかも、「おしゃかしゃま」のライブ演奏は、途中で各パートのソロ演奏を披露するのが定番の流れ。純さんは、緊張している様子を微塵も感じさせず、堂々と演奏していました。カッコ良すぎました。
来世があったって仮に無くたって
だから何だって言うんだ
13. ギミギミック
そこから間髪入れずに「ギミギミック」への流れ。バラードをじっくり聴くのも良いですが、アップテンポでかき鳴らされる楽器の音に合わせて身体を動かすのも、ライブの醍醐味です。
昔はライブの定番曲でしたが、最近はあまり演奏されていなかったように思います。これも、20周年ツアーならではの選曲だと思っていたのですが、どうやらこの曲が演奏されたのは、ツアー初日だけだったようです。何故?
あの時の声は僕の産声は
喜んでたのか悲しんでたのかは
まだ…
14. DASAI DAZAI
これもまたRADWIMPSらしい、ユーモアとシニカルさが入り混じった一曲。
2番の歌詞が、絶妙にキモくて好きです(褒めてます)。
例えば
君のベロと僕のベロが天文学的確率で
触れ合うなんてことがもしも起こったとしたなら
ご先祖から末代まで皆総立ちになり歓喜
この気持ちをトキメキと呼ばず何と呼ぶんでしょう?
大好きなあの子とのディープキスを妄想して、先祖や末代を引っ張りだしてくる。面白すぎるでしょ。
本当に、洋次郎は音楽の引き出しが豊富だと思います。
15.スパークル
『君の名は。』は、RADWIMPSにとって特別な映画でしょう。
『君の名は。』公開直前のRADWIMPSは、バンドとして危機に直面していました。ドラムの智史が無期限活動休止を発表し、CDのセールスも下降気味。明らかに勢いを失っていました。
そこに弾みをつけたのは『君の名は。』のタイアップでした。この映画のヒットと共に、RADWIMPSの知名度も爆発的に上がりました。かつては「知る人ぞ知るバンド」であったRADWIMPSは、一気にお茶の間に知れ渡りました。
『君の名は。』前後で、RADWIMPSが奏でる音楽の雰囲気が変わったことは否めませんが、バンドの勢いを復活させる契機であったことは自明でしょう。
このような背景もありつつ、曲そのものの完成度も高く、美しい。
この曲の演奏中、洋次郎の呼びかけにより、会場がスマートフォンのライトで照らされました。星空の中にいるような、幻想的な光景。
運命だとか未来とかって言葉がどれだけ手を
伸ばそうと届かない 場所で僕ら恋をする
16. グランドエスケープ
『君の名は。』から『天気の子』へのバトンタッチ。
「グランドエスケープ」は、ラスサビに向かう盛り上がりが、本当に大好きです。曲の雰囲気が一変する転調に、曲に華を添える拍手。
鳥肌が止まらず、音楽という表現が持つ力の極致を見た気がしました。
夢に僕らで帆を張って
来たるべき日のために夜を越え
いざ期待だけ満タンで
あとはどうにかなるさと肩を組んだ
17. トアルハルノヒ
ロックバンドなんてもんをやっていてよかった
この楽曲は絶対セトリに入っていると思いました。案の定セトリに入ってたわけですが、それでも歌い出しを聴いた瞬間、心が歓喜の感情で震えました。
メンバーの脱退という、バンドにとって最大の苦境を経て、それでもなお「ロックバンドで良かった」と歌い切る。その強さと、音楽への無上の愛。
いやはや、この曲は、やっぱり大好きです。一番好きなアルバム「人間開花」の収録曲です。当時のRADWIMPSの楽曲を聴くと、当時のことを色々と思い出して、複雑な感情になります。
この楽曲では、スクリーンに歌詞が表示される演出でした。歌詞をじっくりと味わいながら、聴くことができました。
18. 筆舌
新アルバムのタイトルチューン。
かつて信じた「絶対」が壊れてしまった後の、それでも続く人生。言葉にできない想いを、音に託して叩きつけるような演奏。20年のキャリアを積み上げた今の彼らだからこそ鳴らせる、重みのある一曲でした。
▼「筆舌」については、下記の記事で詳しく紹介。
19. 25コ目の染色体
「ラストの曲です」という言葉に応えて演奏されたのは、彼らのメジャーデビュー曲でした。洋次郎が「デビュー曲をやります」と言った瞬間、「もしも」を期待しましたが。
思えば、ロックバンドのメジャーデビュー曲がバラードとは、かなり異色ですよね。しかし、この曲こそ、洋次郎の言葉遊びと、愛に対する考えが詰まった曲だと思います。この楽曲が世に生まれて20年が経った今でも、全く色褪せていない曲だと思います。
あなたが死ぬそのまさに一日前に
僕の息を止めてください これが一生のお願い
アンコール1. そっけない
アンコール。まずは「そっけない」。
MVのイメージが強く、色気のある楽曲ですが、ライブで聴くとそのメロディの美しさがより際立ちます。
これも後で知りましたが、この曲も「ギミギミック」と同じく、初日でのみ披露された曲でした。
「いいよ」って君が言うまで
君と今日はキスをするまで
ここから動かないから
アンコール2. いいんですか?
そして、もはやお祭りのような「いいんですか?」。
会場に鳴り響く手拍子。明るく照らされた会場は、観客の笑顔で溢れていました。
アンコール3. 君と羊と青
最後は「君と羊と青」。
こちらもライブの定番曲ですね。爽快なメロディが、広島の会場を駆け巡りました。
本当にライブ最後の楽曲という寂しさを感じつつも、私の心の中心にあったのは、満ち足りた気持ちでした。
ちなみに、「君と羊と青」のMVに出演している女性は、女優の小松菜奈です。
ライブのその後
ライブへの参加で無理し過ぎたせいか、ライブ直後に風邪を引いてしまいました。そこから、季節の移り変わりと重なって、二週間くらい体調不良が続きました。
それでも、ライブに参加したことは、全く後悔していません(欲を言えば「命題」を聴きたかった)。
あの夜の出来事を一生覚えていたいと思い、このnoteを書きました。完全に自分のための記事ですが、この記事をきっかけに、RADWIMPSの楽曲を聴いてみようと思ってくれたら、非常に嬉しいです。
RADWIMPSの記事
