見出し画像

京都歴史ミステリー「武田五一のモダン建築」


京都歴史ミステリーシリーズ
謎の白い小石が置いてある家
出町ふたばが人気になったワケ
武田五一のモダン建築
後院通が斜めになっている理由
フランス語と漢文で刻まれた顕彰碑の謎

《目次》


KBS京都テレビで放送されている番組『京都浪漫 悠久の物語』「第174回 京都モダン建築 謎解きの旅 ~建築家・武田五一の足跡を辿る~」を観ました。ナレーターは「風の谷のナウシカ」や「めぞん一刻」でおなじみの島本須美さん。「名探偵コナン」工藤有希子役の声優さんと言ったほうが今は通じるかもしれません。

武田五一は京都検定によく出てくる有名建築家ですが、建築家って作庭家と同じくらい覚えるのが大変でややこしいんですよね。今回は武田五一建築を学びながら謎に迫りたいと思います。



『武田建築の三原則』


  • 三連アーチ

  • バルコニー

  • 水平線の強調



京都大学


総合研究15号室
(旧京都帝国大学工学部建築学教室本館)

・自ら設計・建築した鉄筋コンクリート造
・大きさが等しく色が異なるタイル飾り
 (随所に風車模様)
・武田五一建築の特色であるバルコニーを設置
・武田五一色を全面に押し出さずアーチを封印
・コンクリートだけでどこまでできるかを探求

《特徴》



京都大学百周年時計台記念館
(旧京都帝国大学本部本館)

・吉田キャンパスのどこからでも見れる時計台
・矢車などのタイル飾りをふんだんに取り入れる
・玄関に焼き物のテラコッタがいいアクセントに
・近づくと時計塔が見えなくなる謎

《特徴》

時計が見えなくなる謎について、案内役を務める修復建築家の円満字洋介さんは「高い時計塔は権威主義的で威張り散らしているように見えるから後ろに下げたのでは」と仰っていました。

私は円満寺さんとは別の見方をしていて「時計は建築物の添え物でしかなく主役を引き立たせるためにあえて奥に引っ込ませたのでは」と考えました。時計塔が京都大学吉田キャンパスのシンボルになったのは後世の人たちがそう思ったからであって、建築当時は時計塔が主役になるなんて誰も想定していなかったんじゃないのかなって。今ほどには時間に縛られていなかったでしょうし。



京都市役所


・設計は武田五一の教え子、中野進一
・武田五一は顧問と監修
・武田五一建築の三原則が詰まった建築物
・伊東忠太の影響を受けインド式装飾を多用
 (インド・サラセン様式、尖頭アーチなど)
・2021年の改修工事で竣工当時の姿に復元
・正庁の間には織物があしらわれている
・棒の形をした飾りの謎
 (市役所ということで筆がモデル)

《特徴》

京都市役所の建築に武田五一が関わっていたというのは知っていましたが、インドのサラセン様式がふんだんに取り入れられていたというのはまったく知りませんでした。しかも武田五一の弟子たちが伊東忠太の影響を大きく受けていただなんて。

私はいつも歴史を点でしか見ていないのでよく勘違いをします。有名人同士を結ぶ線を見逃してしまうんです。鳥山明さんや尾田栄一郎さんの画風を多くの漫画家がマネしたように同じ時代に生きる人はそりゃ何かしらの影響を受けるものですよね。ネットではすぐパクリだと大騒ぎしますけれどみんな最初は模倣から始まり少しずつ独自性を見出していきます。天才のモノマネってそんなに悪いことではないと思いますよ。自分だけの世界に閉じこもっていたらあっという間に限界がやってきますから。



先斗町歌舞練場


・木村徳三郎が設計し武田五一が顧問
・格子状にタイルを配置した壁面
・タイルのデザインは宝相華ほうそうげ
・スパニッシュコロニアル様式
・泰山タイルを使用
・舞楽の演目「蘭陵王らんりょうおう」を象った鬼瓦
 (鬼瓦なのに鼓が両脇に添えられている謎)

《特徴》

鬼瓦なのに鼓が両脇に添えられている謎について、円満字洋介さんの説によると「鼓は叩くとポンと音がなる。武田五一はシャレを効かせたくて先斗町と鼓の音をかけたのではないか」と語られていました。

その説が有力だと私も考えます。あと鼓を鳴らして劇場があることをみんなに知らせる役割もあったのでしょうね。落語の寄席でも一番太鼓という寄席太鼓を鳴らす風習があって今でも続けているところがあります。



フォーチュンガーデン京都
(旧島津製作所本社ビル)


・荒川義夫が設計、設計顧問に武田五一
・2012年にリノベーション
・武田五一建築「三連アーチとバルコニー」
・屋上にあずまやがある謎
(天体望遠鏡を収納する場所?)

《特徴》

島津製作所は設立当初から科学機器のパイオニアでしたので屋上に天文観測機器専用の物置を設置したのはすごく合理的だと思いました。当時の京都は今ほどには街が明るくありませんでしたからさぞや星が美しく見えたことでしょう。



1928ビル
(旧大阪毎日新聞社京都支局ビル)


・アールデコ様式
・武田五一が55歳のときに設計
・1999年に1928ビルとしてリニューアル
・星型の窓に毎日新聞社の社章を図案化
・ノンバーバルシアター「ギアーGEARー」専用劇場
(新聞社時代にホールとして使われた3階)
・地下階に泰山タイルを使用
・星型バルコニーの謎

《特徴》

番組を観るまで武田五一建築と「ギアーGEARー」の専用劇場という認識だけを持っていた1928ビル。

星型バルコニーは毎日新聞社の社章になぞらえて作られたものというのがこれまでの定説でした。円満字洋介さんは「祇園祭の山鉾巡行で使われる扇子がモデル」説を唱えました。当時の三条通は山鉾巡行ルートだったんです。山鉾巡行の特等席だったということを考えると社章説より扇子説のほうが納得がいきます。

ただ「星型=社章」説を完全に否定するのはそれはそれでどうかなと。ダブルミーニングのほうがいい感じに武田五一の遊び心を表しているんじゃないでしょうか。



【告知】

随筆やエッセイは全文無料。目次の利用は有料になっています。



結び


有名建築家が作った建造物って似たような形にならないよういろいろと工夫しているイメージがあります。

武田五一は三原則を守りつつ「遊び心」というピリリと辛い香辛料をまぶすことでコンクリート建築に大きな幅をもたせました。子供の頃、遊び心が盛り込まれたゲームにワクワクしたものです。作るものはちゃんと作ってそこにほんの少しのアクセントを加える。どの業界においても遊び心は持つべきだと私は考えます。人はどれだけ歳をとっても童心を忘れることはありませんからね。

『京都浪漫 悠久の物語』は京都の深い話が聞けるので頭を使いますがスゴく勉強になります。今回も武田五一建築をイロハを知ることができて為になりました。TVerでも視聴できますので良かったら番組登録してみてください。以上です。

ご精読ありがとうございました。



追記

2025/08/04

『このデザインが好き』応募作品の中で、スキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!


2025/08/11

『好きなデザイナー』応募作品の中で、スキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!



《了》

いいなと思ったら応援しよう!