閉じこめられた時間とつながる時間
旅の時間はまたたく間に過ぎゆくけれど
風景にはゆっくりとした時間が流れている。日常
から抜け出し、非日常の風景の中の日常へ。そこで
積み重なる時間は、形となり姿を見せる。アートは
その時間を閉じ込めるように、つなげるように。

風景にひそむ形は、それぞれに異なる時間軸を持つ

十字架の刻まれた瓦に、かつてそこが宣教の道であった
ことを思い起こさせる。形は風景の中で歴史を語る

何気ない島の風景の中の物語を想像する

豊島を舞台にした芸術祭の旅。使われなくなった民家の

部屋に並べられたガラス瓶。内部には灰が充填される

時が止まった部屋。瓶に灰となって閉じ込められた時間

灰はアボリジニの間違った歴史が記された書籍が
燃やされて残ったもの。物体は姿形を変えて

記憶として閉じ込められ、空間の中に沈殿する

もう使われることのない水屋箪笥。空間とものの記憶に

ふれる旅で、過ぎゆく時を内包するものと
それらが織りなす色との出会いが、記憶に重なる

使われなくなって50年以上が経つという民家で

消えゆく生活の痕跡と、そこにあった時間を指す掛け時計

空間の中に配置された木の葉のような作品で

閉じ込めれられた書籍の記憶は

ひらりひらりと舞い落ちるように

床の間に、床につながる円の形は

急須から滴る雫が水面に広がる波紋のようにして
作品の名は再び言葉に満ちた部屋。アボリジニ
の歴史を問う作品が、人の不在となった空間に、
新たな言葉を満たしていく。豊島のアートは

赤い糸、反転する影、黒い灰、白い葉から
線から波紋を描く円の形へ

様々な記憶をたぐりようせるようにして
アートがつなぐ風景を進む
住まわれることがなくなり、50年以上が経つ古い
民家で繰り広げられる作品は、その空間に溶け込む
ように存在していた。やぶれては形をなくす障子。
止まったままの掛け時計。古びた座卓。時を超えて、
生活の記憶を残すものの中で、作品が刻む時間は
閉じ込められ、ひらひらと宙を舞い、水面に落ちる
波紋のようにつながり広がっていく。沈殿した時間
と浮遊する時間の境界にふれるように先へと進む。
