限りのない連鎖にふれるように
関係性の中を歩く
集落の中央に建つかつて中学校であった場所は、
今は芸術祭の舞台となる。ここには、芸術家が
数ヶ月、島に滞在し製作した作品が展示される。
出会い、別れを繰り返し、継承されていく物語。

役割を転じた建物は、息を吹き返す

御影石の門柱に大きな格子扉。色を帯びる板塀が
示す時の流れをくぐるように

かつての校舎の空間へと進む

傾き始める日とともに

展示は片付けが始まっていて

出会うことは叶わずも、過去の作品ならと案内頂き

茂る緑を通り過ぎ

褪せた色合いの引き戸をそっと開ける

壁面に描かれた無数の図柄には

人の営み、動物との関わり

植物の多様さが描かれる
かつて中学校の教室であった場所に

やわらかな壁に包まれた空間に

展開されるのは生命の広がり
形は旅の中にふわりと舞い降りるように

ぐるりと円の軌道を描くように現れる
過去から続く長い年月の先にある今の上で

その限りのない連鎖にふれる

壁は立ち上がり洞窟となり

人間の歩んだ道程が、壁面にまばらに

密に、自然とつながりあう様子が描かれる

多様な姿で続く植物の先に輝くのは

海の種。中心からは海の生命が

輝き、喜びをまとい放たれる

表現される生命の終わりと始まり

空間の中央を占めるのは

時を閉じる鯨の姿

土から生命が生まれ、海で命が繰り返される

交差する二人の芸術家の連鎖の物語は

この場所で、円を描くように時をつなぐ
繰り返す旅の中で出会う連なりは
旅の視点を広げ
手掛けられた鯨が放つメッセージは
新たな物語へとつながっていく

いつか中学校であった場所で

芸術家と島の人はつながり、旅人が作品にふれる

かつての場所は新たな場所となる
空間に構築された洞窟。かつて島の生徒が過ごした
場所で、芸術家と島民が紡ぐ物語。描かれたのは、
インドの少数民族であるワルリー族に伝わる壁画。
始まりの場所としての洞窟に刻まれた生命の連鎖。
物語に浮かぶのは、生命を終えた鯨。多くの生物
によって支えられた大きな鯨は、生命を終えて、
また多様な生き物へと還元されていく。つながり、
惹かれ合い、もつれては絡まる生命の繰り返し。
限りのない連鎖にふれる。命あるものは、やがて
時を閉じては、関係性を未来へつなぐ。その途方も
ない連続の上に今がある。旅をして、浮かぶ言葉を
すくい、旅の物語を紡いでは、静かな場所が発する
時を重ねる。世界との関係性を紡いでいくように。
