旅の調べに心を寄せて
街の気配に耳をすませる
芸術祭が浮かび上がらせる土地の音。静かに響く
日常の風景が旅人をつなぐ。祝祭に誘われて、この
地を訪れ、歴史が語る記憶を受け取り旅のモチーフ
を積み重ねては、その連続の先へと旅を続ける。

宇多津の街に海の色の幟が立ち

祝祭が歴史の上に
ほんのひととき輝いては

旅人をこの地に誘い

人と場所を重ね合わせる

山門の先には、時を告げる鐘楼がそびえ

細やかな装飾が織りなす本堂の頂部には

波がさざめくように描かれた棟飾り

足元の鮮やかな色のつながりは
海岸に打ち寄せられた欠片が集められたもの

点々と棟を飾る鬼瓦の意匠に

表される波の形を掬いとる

本堂で奥行きを深める木彫に

コツコツと木を削り出すノミの音が
刻まれては、木彫刻の街へと思いをはせる

朱色の建物が、その場のリズムを転調させて

線が縦横に入り混じる

江戸時代末期に建造された御座船は

船屋型の茶室として今に至る

ゆらりとゆれた開口部の先に見えるのは

勢いを盛んにする蘇鉄の緑

境内の静かで動的な調べを後に、また山門をくぐる

ふと目にとまる木彫の家紋は

下がり藤に結び雁金
家紋に込められた物語を旅に思い

瓦に刻まれた紋をたどり
日本建築の調べを感じる旅をする

蘇鉄の緑は勢いよく
旅の風景を躍動させる

四半の調子に合わせるように
日本建築のモチーフをたどり
宇多津の街にたたずむ寺院を後にして
ふわりと宙を舞うシャボン玉に引き寄せられては、
がっしりとした山門の境界をまたぐ。活気が溢れる
境内で、船屋形茶室と運良く出会う。旅をすれば、
風景は層をなして、時と場所を越えてつながれる。
その静かな連続は、旅の中に心地よく響くように。
