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「こなすだけ」で成長が止まる部下の共通点|失敗しない人材育成術③

はじめまして、Akiさんです。日系大手人事としてキャリアをスタートし、欧州駐在を経て外資系企業へ。いまは外資系企業でアジア9カ国の人事責任者をしながら、個人事業で全国の中小企業支援、そして、SNSで経営戦略人事のリアルについて発信しています。

前回の記事(失敗しない人材育成術②)では、「時間が取れない症候群」について、その対策とともにお話をしました。本業、副業、難関資格合格を両立させてきた私なりの時間術も書いています。ぜひ読んでみてください。

今回が三部作の最終作になります。今回のテーマは、ずばり、

自己開発のためのアクションを取っている。だけど、その効果があまり出てない。さあどうする?

というような状態です。真面目に頑張っているのに、なぜか成長が実感できない。皆さんの周りにも、あるいはご自身にも、そんな心当たりはありませんか?

このnoteでは、 アクションは取れているのに成長が感じられない、という人材育成のよくある落とし穴と、そこから抜け出すための問いかけについて書いています。

部下や後輩の育成に悩むマネージャー、人事の方に読んでいただきたい内容です。この記事は、失敗しない人材育成術シリーズの最終・第三部です。


1. アクションは取れている。なのに、変わった感じがしない

マネージャーであるあなた。部下の一人で将来を期待しているCさん。Cさんとは、キャリアの方向性、ありたい姿についてよく話をしていています。Cさんがそれを本当に目指している様子が、その表情から見てとれます。

そして、Cさんは、自己成長のための学びにも意欲的で、時間のやりくりも上手です。リスト化した成長のためのアクションを取る時間も十分に確保しています。

例えば、こんな具合に・・・

  • 仕事での経験

    • 業務効率化プロジェクトに参画することで、プロジェクトリーダー経験を積む

  • 人から学ぶ

    • マーケティング部門のX部長にメンターになってもらう。 →マーケティング的観点を学びつつ、X部長のリーダーシップスタイルに触れる

  • 知識などの補強

    • ●協会の「マーケティング基礎研修」「マーケティング応用研修」に参加する

本人に意欲があり、成長のためのアクションアイテムをリストに整理できている。そして、そのための時間を確保して、取り組むことができている。私も、人材育成支援の現場で、こうした人たちを見てきましたが、ここまで来れば立派なものです。

ただ、同時に、アクションをとっても成長の踊り場に留まってしまうケースを見てきました。

例えば、あなた(上司)とCさんとの対話をイメージしてみましょう。

あなた 「いろいろアクションを取っているよね。」
Cさん 「はい、リストの●●はクリアです! 来月はこれに挑戦します」
あなた 「おお、すごいね。」

ただ、あなたの中には、なんとなく違和感が残ります。アクションを取り始めて3か月経つのだが、変わってきた感じがしないからです。あなたの部下にも、こういう「頑張っているはずなのに、なぜか成長曲線が横ばい」な人はいないでしょうか?

2. アクションをクリアすることが目的になっている

一体、なぜだ?Cさんは、確かにアクションを取っている。星取表に書き込むように、いきいきとチェックを入れていく。

「これはできた。よし、◯を入れて、と。」
「あれもできた、と。こっちも◯だ」

ただ、よくよく見ると、アクションをクリアすることが目的になっているように見えます。

  • 業務効率化プロジェクトに参画しました。 → はい、クリア

  • X部長とのメンターセッションを受けました。 → はい、クリア

  • 外部のマーケティング研修を受けました。 → はい、クリア

と、こんな具合です。育成している部下がこんな感じで、アクションを取っている場合、あなたはどんな感想を持ちますか?

あれれ、こなすことが目的になってる!? と思うかもしれません。まるで、算数の計算のプリントを意味も分からず、機械的に解いている。解いたら、ノルマ完了、とでも言わんばかりに。きっと、私達にもこんな経験があるはずです。それと似たような事象がCさんにも発生しているのです。

以前、「たったこれだけ!目標設定の質が劇的にアップするコツ」という記事で、目標を「アクション」ではなく「作りたい状態」で書くべきだと書きましたが、まさに同じ構造がここにもあります。アクション(手段)そのものがいつの間にか目的化してしまっているのです。

3. そもそも、社会人になった我々は何のために学習をするのか

それはきっと「何かができるようになる」ためです。

  • ある専門分野での深い議論をする

  • 年上の部下の人たちとうまくやれるようになる

  • 効果的に価格交渉ができるようになる

などなど、もっといえば、ビジネスで良い結果を出すためです。

  • リストに書いたアクションを起こすのは、何ができるようになるためか?

  • アクションを取ったおかげで、今の自分は何ができるようになったのか?

  • 少なくとも、どんな新しいトライをしているのか? そこからの学びは?

あなた自身は、この3つの問いに、今すぐ答えられるでしょうか?これを考えることで、成長課題の洗い出し → アクション → 着実な成長 というサイクルを回すことができ、効果的な育成ができるようになります。

4. レンガを積む3人の職人

イソップ寓話に基づいたとされる、有名なストーリーがあります。ご存知の方も多いでしょう。ある旅人が、レンガを積んでいる3人の職人に「何をしているのですか?」と尋ねました。

1人目:「見ればわかるだろう。レンガを積んでいるんだよ。」
2人目:「大きな壁を作っているんだ。これで家族を養う金を得るのさ。」
3人目:「後世に残る素晴らしい大聖堂を造っているんだ。ここで多くの人が救われるんだよ。」

3人とも「レンガを積む」というアクションは同じです。1人目は作業が目的。2人目は生活・報酬が目的。3人目の職人は「完成後の人々の幸せ」まで想像しています。その結果、彼はレンガの積み方一つにも妥協せず、最も技術を磨き、最もモチベーション高く取り組むことになります。職人としての成長が速いのも言うまでもありません。

この寓話には、学術的な裏付けもあります。イェール大学のエイミー・レズネスキー教授らの研究では、人が自分の仕事をどう捉えているかを「job(単なる労働)」「career(出世・昇進)」「calling(使命・天職)」の3タイプに分類しています。「calling」として仕事を捉えている人ほど、仕事に意味を見出し、仕事や人生への満足度が高いという結果が示されています。まさに、この3人目の職人の視点です。

人材を育成する際には、ぜひ1on1や対話の中で、問うてあげてください。

宣言通り、アクションが取れているよね。 その学んだことを活かして、今日はどんな新しいことをしたの? 明日はどんなことをしたい? その学びを、チームのみんなにもシェアしてくれない?

と。きっと、学びの消化の速度と実践力が違ってくるはずです。以前、「答えは、いつも相手の中にある」という記事で、コーチングは答えを与えるのではなく本人の中にある答えを引き出す対話だと書きましたが、この3つの問いかけも、本人自身に「何ができるようになったか」を言語化させる、コーチング的なアプローチです。

5. まとめ:「こなす」から「何ができるようになったか」へ

今回のポイントを整理すると、

  • 意欲があり、アクションもきちんと取っているのに、成長が実感できないケースは珍しくない

  • その多くは、アクションを「クリアすること」自体が目的化してしまっている

  • 「何ができるようになるためのアクションか」を問い続けることが、こなすだけの状態から抜け出す鍵になる

  • レンガ積みの寓話が示すように、同じ作業でも「その先に何を見ているか」で、成長速度もモチベーションも変わる

  • 「calling(使命)」として仕事を捉えている人ほど、仕事への満足度が高いという研究結果もある

  • 1on1では、「何ができるようになったか」「明日は何をしたいか」を問い続けることが、学びの消化速度と実践力を左右する

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。過去の記事もあわせてお読みいただければ、私はとっても嬉しいです。

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