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「時間がない」という部下への処方箋|失敗しない人材育成術②

あなたの「時間が無くて●●できない」。
それ、真に受けたら、絶対にダメです。

絶対に●●はできますって。

私は、外資系企業でアジア地域の人事責任者をしながら、難関資格の勉強をし、個人事業もしています。月に数冊の本を読み、SNSの運用も行っています。

今日は、私自身の体験をベースに、世の中に溢れる「時間が取れない」の罠について深堀りし、対策を述べていきます。

あなた自身の時間マネジメントの見直しや、部下育成にも必ず使えるのでぜひ読んでください。


1. 「来月から本腰を入れます」が繰り返される理由

こんなケースをイメージしてみてください。以下のBさんは、マネージャーであるあなたの部下です。

Bさんは、営業ではすごいプレーヤー。ただ、英語が大の苦手です。TOEIC®を受けたら、スコアは300点くらいのイメージ。しかし、英語ができてくれたら、文句無しでキャリアアップしていける人材。しかも、「マネージャーになって、グローバルとのやり取りもできるセールスリーダーになりたい」とBさんは渇望している。そのマイルストーンとして、猛勉強して、1年でTOEIC600点台には上げたい。英会話も始めないといけない状況。

しかしながら、フォローアップをしていくと、こんなセリフが聞こえてくるではありませんか。

あなた 「この1か月で、英語への取り組みはどう?」
Bさん 「いやー、この1か月仕事が忙しくって、なかなかできず。」
あなた 「そうですか、今の仕事が今月で落ち着くので、来月からいけそうかな?」
Bさん 「はい、来月から本腰を入れるつもりです」
            ~そして、1か月後~
あなた 「仕事はいったん落ち着いたと思うけど、英語への取り組みはどう?」
Bさん 「なんとか1日30分、勉強時間が取れるか、取れないくらいですかね。」
あなた「大丈夫かな・・・」

この状況は、我々の日常でもよく遭遇すると思います。

2. 時間の確保、使い方、優先順位の付け方に課題がある

このような状況を例えるなら。スマホです。スマホに新しいアプリを入れて、新しいことを始めたい。しかし、そのスマホに写真や動画、他のアプリが入っていて、空き容量が無ければ、新しいアプリを入れられません。スペース(容量)がないのです。要は、新しいアプリで新しいことなど、全くできないのです。

あるいは、なんとかそのアプリを入れることができても、動作に影響が出るかもしれません。パフォーマンスが安定しないのです。そんな時にあなたはどうしますか?

きっと、スマホの容量を開けるべく、不要なデータを消したり、他の使っていないアプリを削除したりするでしょう。それと同じで、新しい事をするための十分な時間を捻出するために、ムダに使っている時間を削除していくしかありません。さすがに健康保持のため、睡眠時間を削るわけにはいきませんからね。時間の確保も、無理な削り方をしてしまえば本末転倒です。

スマホの場合、「空き容量がありません」と警告を出してくれます。ですが、私達は自分の時間の使用容量や空き容量について、誰も警告を出してくれません。

3. どうやって対策するか?

方法1:自分の時間の使い方を記録して、客観的にみる。

容量が無いなら、自分で気づいて、容量を空けるしかありません。そのために、自分が何に時間を使っているのかを見極める必要があります。

私自身も、性格的にあれこれ手を出してしまう傾向があり、時間の使い方がヒッチャカメッチャカになりがちでした。これではマズい、自分のやりたいことが実現できない、と思った私はどうしたか?

まずは、自分の時間の使い方をaTimeLogger(スマホの無料アプリ)で記録をしてみました。

すると、自分の時間の使い方のクセを知ることができ、こんなことに時間を使っていたのか!と、たくさん発見できました。皆さんも自分の時間の投下先を記録して、傾向を分析してみましょう。理想は1週間。最低でも平日1日、土日どちらか1日でも、記録してみるといいです。

あなたの部下は、自分が1日に何にどれくらいの時間を使っているか、正確に説明できるでしょうか?

方法2:先に、大事なことを始めてしまう。

これは、逆転の発想ですが、大事なことを先にしてしまうのです。

私たちの1日は、気づけば「緊急なこと」で埋め尽くされがちです。上司からの急な依頼、鳴り止まないメール、今日中の資料作成。こうした緊急なことに対応していると、それだけで1日が終わってしまいます。

ここで役立つのが、「重要度」と「緊急度」の2軸でタスクを4つに分類する、いわゆる緊急度・重要度マトリックスという考え方です。『7つの習慣』で知られるスティーブン・コヴィーが広めた概念で、タスクは次の4領域のどこかに位置づけられます。

第1領域(緊急×重要): 今日中の顧客対応、締切間近の資料など。すぐに手をつけざるを得ないタスク
第2領域(緊急ではないが重要):英語の勉強、資格取得、部下育成、将来を見据えた戦略立案など。放っておいても誰にも怒られないが、長期的には最も価値を生むタスク
第3領域(緊急だが重要ではない):突発的な依頼や、重要度の低い会議・電話対応など
第4領域(緊急でも重要でもない):なんとなく見てしまうSNS、目的のない情報収集など

Bさんの「英語の勉強」は、まさにこの第2領域に属するタスクです。緊急度が低いので、日々の業務(第1領域・第3領域)に押し出され、後回しになり続けてしまう。これが、「来月から本腰を入れます」が毎月繰り返される正体です。

つまり、「時間が無い」のではなく、「緊急なことに時間を明け渡し続けている」というのが実態に近いのです。

対策はシンプルです。第2領域のタスクを、緊急なタスクが入り込む前に、先にスケジュールに入れてしまう。例えば、「朝の出社前30分は英語の勉強」と決めて、カレンダーに他の予定と同じように確保してしまう。会議の予定を入れるのと同じ感覚で、自己成長のための時間もブロックしてしまうのです。

私自身、資格取得や副業に取り組んでいた時期は、朝の時間や週末の午前中を「第2領域専用の時間」として先に確保していました。緊急な依頼は、その後の時間で対応する。この順番を意識的に入れ替えるだけで、大事なことが後回しにされ続ける状態から抜け出せます。

部下育成の観点で言えば、上司であるあなた自身が、部下の「第2領域」の時間をカレンダー上で守ってあげる、という関わり方も有効です。例えば、1on1の中で、「来週のこの時間、企画案の作成用に確保しておこうか」と一緒にスケジュールを組んでしまう。本人の意志力だけに頼らせない、という支援の仕方です。

方法3:もう一つ注目すべき観点は、スキマ時間

スキマ時間は、予定と予定の間や、行動と行動の間に生まれる短時間の空き時間のことです。通勤中の電車内、待ち合わせの時間、仕事の合間、家事の合間など、1日に無数に存在します。さて、皆さんに質問です。

皆さんのスキマ時間はどこに存在しますか?
皆さんのスキマ時間の有効活用度は、100点中、何点でしょうか?

スキマ時間は、5分、10分、なんなら30分の塊など、様々な形で存在します。これを活用すれば、自己成長のために当てることができます。私の場合、5分あれば30回のスクワットをしていますし、30分もあれば、英語の音読をしています。さきほどのBさんの事例であれば、英単語やリスニングの勉強などは、スキマ時間でいくらでもできる、というものです。

心理学の手法で、If-Thenプランニングというものがあります。「もし(If)〇〇の状況になったら、△△(Then)をする」と事前に決めておくことで、目標達成や習慣化を成功させる手法です。

例えば、5分あれば、英単語アプリを開く、15分あれば、英語のニュースを一本聞く、といった具合に。このIf-Thenプランニングは、ニューヨーク大学のゴルヴィツァー教授が提唱した「実行意図」という概念に基づいています。1997年の実験では、実行意図を事前に決めておいた人は、決めていない人に比べて、困難な目標の達成率が22%から62%へと約3倍に跳ね上がったという結果が出ています。2006年に行われた94件の研究を統合したメタ分析でも、目標達成への効果は中〜大程度と評価されており、決して精神論ではなく、裏付けのある手法なのです。

私は、これらの取り組みを実践し、自分の時間の使い方、優先順位を常に見直しました。結果、ハードワークとされる外資系にいながら、副業の成長、社労士や英検1級などの難関資格の取得を成し遂げることができました。

人材育成とは、新しい事に挑戦したり、新しいことを学ぶことで、自己開発を支援していくということです。すなわち、時間資産が絶対に必要になります。そのためにも、「時間の確保と使い方」の見直しを支援していきましょう。

4. まとめ:時間資産の確保を、育成の一部として支援する

今回のポイントを整理すると、

  • 「時間が取れない」は言い訳のようで、実は「時間の確保・使い方・優先順位」という具体的な課題である場合が多い

  • 自分の時間の使い方を1週間でも記録してみると、無自覚な時間の使い方のクセに気づける

  • 緊急度・重要度マトリックスで考えると、自己成長は「緊急ではないが重要」な第2領域に属し、放っておくと日々の緊急対応に押し出され続ける

  • 第2領域のタスクは、緊急な用件が入り込む前に、あらかじめスケジュールに確保してしまうのが有効。部下の場合は、上司が一緒にその時間をカレンダー上で守ってあげるという関わり方もできる

  • スキマ時間(5分、10分、30分)を、自己成長のためのアクションに割り当てる

  • If-Thenプランニングは、目標達成率を約3倍(22%→62%)に高めるという実証研究もある、裏付けのある習慣化テクニック

  • 時間資産の確保そのものを、育成支援の一部として上司が一緒に考えることが大切

「緊急なことに追われて、大事なことが後回しになっていないか」。これは、部下だけでなく、上司自身にも問うべき問いかもしれません。次回記事は、いよいよ最終回。「失敗しない人材育成術③:頑張る人ほどピントがズレる!?」です。

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